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アッシュブラウンの長めの髪をハーフアップにしたヘアスタイルに、細すぎず整えられた眉と、くっきりした二重の大きな目は少し垂れ目でやたら色気がある。
そしてスッと通った鼻梁に、口は大きくて下唇だけバランスよくふっくらしてて、おしゃれな髭まで生やしてる。
イケメンだ。いや、オジサマだからイケオジなんだろうか。とにかくカッコよくて、しかも顔だけじゃない。
すらりと伸びた手足は、コットンのヘンリーネックシャツの袖を肘まで捲り、黒のスキニーパンツはブルーのペイントが入ったオシャレなデザインで、足元は編み上げのレザーサンダル。
床がちょっと油でベタついてて、メニューは全品壁に張り紙してあるような、町のこぢんまりとした中華屋には幾分不釣り合いなスタイリッシュさだ。
それに私、この人を知ってる。
「はいお待たせ。焼き餃子と茄子の山椒揚げね」
「ありがとうござ……んひっ」
「あら、しゃっくり。大丈夫?」
「急にビール飲んだからかな。大丈夫で……んひっ」
女将さんに心配されながら、恥ずかしくもしゃっくりを連発させると、隣の方から再びクスッと笑う声がして顔を覆いたくなる。
こんなことならコンビニでお弁当でも買って、家で一人でご飯を済ませれば良かったかも知れない。
私は小さく咳払いをして仕切り直すと、箸立てから割り箸を抜き取って、小皿にお酢を垂らしてからいただきますと手を合わせた。
「それ、美味しそうだね」
「はい?」
突然声を掛けられて横を見ると、さっき私を見て笑ったお客さんが、席を詰めて私の隣に移動して来た。
なんで真隣に移動したんですかって聞きたいけど、直接問いただす勇気はない。
すると彼は私の方に体を向けると、ちょっと困ってると言って眉尻を下げる。
「俺ね、この店にふらっと入ったから、どれが美味しいのか分からなくて」
「ああ、そうなんですか」
甘くて艶のある低い声で私に囁くように顔を近付けると、彼はすぐにメニューが張り出されている壁を振り返る。
「ほら、メニューがいっぱいあるからさ」
なんてことだ。声までイケメンじゃないか。
そんな彼の手元を見ると、餃子と春巻きをつまみにビールを飲んでいるらしい。
「なんでも美味しいですよ。辛いのが好きなら、麻辣系の炒め物とか。あ、酢豚もお肉がジューシーですし、牡蠣の塩山椒炒めとかも絶品です」
「そうなんだ。ありがとう」
「いえいえ」
そこで話を切り上げて、冷めないうちに餃子にパクつくと、パリッと焼かれた皮の歯応えから、じゅわっと肉汁が溢れ出して程よいニンニクの香りが鼻に抜ける。
「んー。今日も美味しいです大将」
厨房にいる大将に声を掛けると、鍋を振りながらニコッと目尻に皺を寄せた笑顔が返って来て、私も笑顔のまま茄子の山椒揚げを頬張ってビールを飲む。
「凄い美味しそうに食べるね」
するとまた隣から声を掛けられて、不思議に思いながらも愛想笑いで頷くと、彼は追加のメニューを決めたらしく女将さんを呼び止めて、酢豚と牡蠣の塩山椒炒めを注文している。
ちゃんと私が勧めたメニューを頼む辺り、本当に何を食べて良いのか迷っていたらしい。
そんなことを思いつつ、熱々の餃子を頬張ってビールを飲んでいるとまた声を掛けられる。
「あのさ、嫌じゃなければちょっと話さない?」
「え、話ですか」
「そう」
破壊力抜群のイケオジの笑顔に、これはナンパなんだろうかと思いつつも、町の中華屋の気安さも手伝って、気付いたら良いですよと返事していた。
だって、めちゃくちゃカッコいいし、ちょっと話すだけなら問題ないと思ったから。
「構いませんけど、何の話するんですか」
「それはほら、食事をシェアしながら美味しいねとか」
「シェアするんですか」
「そうだよ、一緒に食べようよ。せっかくだし」
「分かりました。良いですよ」
「よし。じゃあビールのおかわりも頼もうか」
そう言って彼は生ビールを二杯頼むと、出されたビールで乾杯しようとジョッキを掲げた。
そしてスッと通った鼻梁に、口は大きくて下唇だけバランスよくふっくらしてて、おしゃれな髭まで生やしてる。
イケメンだ。いや、オジサマだからイケオジなんだろうか。とにかくカッコよくて、しかも顔だけじゃない。
すらりと伸びた手足は、コットンのヘンリーネックシャツの袖を肘まで捲り、黒のスキニーパンツはブルーのペイントが入ったオシャレなデザインで、足元は編み上げのレザーサンダル。
床がちょっと油でベタついてて、メニューは全品壁に張り紙してあるような、町のこぢんまりとした中華屋には幾分不釣り合いなスタイリッシュさだ。
それに私、この人を知ってる。
「はいお待たせ。焼き餃子と茄子の山椒揚げね」
「ありがとうござ……んひっ」
「あら、しゃっくり。大丈夫?」
「急にビール飲んだからかな。大丈夫で……んひっ」
女将さんに心配されながら、恥ずかしくもしゃっくりを連発させると、隣の方から再びクスッと笑う声がして顔を覆いたくなる。
こんなことならコンビニでお弁当でも買って、家で一人でご飯を済ませれば良かったかも知れない。
私は小さく咳払いをして仕切り直すと、箸立てから割り箸を抜き取って、小皿にお酢を垂らしてからいただきますと手を合わせた。
「それ、美味しそうだね」
「はい?」
突然声を掛けられて横を見ると、さっき私を見て笑ったお客さんが、席を詰めて私の隣に移動して来た。
なんで真隣に移動したんですかって聞きたいけど、直接問いただす勇気はない。
すると彼は私の方に体を向けると、ちょっと困ってると言って眉尻を下げる。
「俺ね、この店にふらっと入ったから、どれが美味しいのか分からなくて」
「ああ、そうなんですか」
甘くて艶のある低い声で私に囁くように顔を近付けると、彼はすぐにメニューが張り出されている壁を振り返る。
「ほら、メニューがいっぱいあるからさ」
なんてことだ。声までイケメンじゃないか。
そんな彼の手元を見ると、餃子と春巻きをつまみにビールを飲んでいるらしい。
「なんでも美味しいですよ。辛いのが好きなら、麻辣系の炒め物とか。あ、酢豚もお肉がジューシーですし、牡蠣の塩山椒炒めとかも絶品です」
「そうなんだ。ありがとう」
「いえいえ」
そこで話を切り上げて、冷めないうちに餃子にパクつくと、パリッと焼かれた皮の歯応えから、じゅわっと肉汁が溢れ出して程よいニンニクの香りが鼻に抜ける。
「んー。今日も美味しいです大将」
厨房にいる大将に声を掛けると、鍋を振りながらニコッと目尻に皺を寄せた笑顔が返って来て、私も笑顔のまま茄子の山椒揚げを頬張ってビールを飲む。
「凄い美味しそうに食べるね」
するとまた隣から声を掛けられて、不思議に思いながらも愛想笑いで頷くと、彼は追加のメニューを決めたらしく女将さんを呼び止めて、酢豚と牡蠣の塩山椒炒めを注文している。
ちゃんと私が勧めたメニューを頼む辺り、本当に何を食べて良いのか迷っていたらしい。
そんなことを思いつつ、熱々の餃子を頬張ってビールを飲んでいるとまた声を掛けられる。
「あのさ、嫌じゃなければちょっと話さない?」
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だって、めちゃくちゃカッコいいし、ちょっと話すだけなら問題ないと思ったから。
「構いませんけど、何の話するんですか」
「それはほら、食事をシェアしながら美味しいねとか」
「シェアするんですか」
「そうだよ、一緒に食べようよ。せっかくだし」
「分かりました。良いですよ」
「よし。じゃあビールのおかわりも頼もうか」
そう言って彼は生ビールを二杯頼むと、出されたビールで乾杯しようとジョッキを掲げた。
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