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20.③
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「ああ、これなんかはまともな顔してる」
婚約指輪が写り込むように撮られたツーショット写真は、幸せを詰め込んだように柔らかい笑顔の二人が並んでいる。
「へえ。侑さん、こういうタイプなんだ」
笑顔も凄く素敵で爽やかな好青年といった感じだけど、凌さんと兄弟というには顔立ちがかなり違う。
「優男って感じでしょ。私のキツい顔が目立つんだよね」
「そうは言ってないよ。でも本当に優しそう。凄く素敵な写真じゃない」
「侑はいつも変な顔するから、まともな写真がほとんどないんだよね」
美鳥はそう言うと、また変顔をしてる侑さんの写真を見せて、くだらないでしょと困ったように笑う。
彼女の口から侑さんの話題が出る度、愛されてるのはそっちの方だろうとツッコミを入れたくなるけれど、今でもしょっちゅうケンカをする話を聞いて、驚いてしまう。
「私たちの場合、理由はともかく一回は別れてるからさ。お互いに記憶が美化されちゃってて、変な行き違いがよく起こる」
「そうなんだ。なんか意外」
「実はそうなんだよ。たまに指輪突き返そうかと思ったりするもん」
「やだなに。物騒な話やめてよ」
「思うだけだってば」
カラッと笑う美鳥が少し羨ましくもある。
私の場合は凌さんと歳が離れてることもあって、基本的にケンカになるほどヒートアップすることがない。
多分そもそも私が、揉めるほど意見が合わない人と、気を遣いながら付き合えるタイプじゃないからかも知れない。
それに凌さんはよっぽどのことがない限り、そうそう苛立ったり腹を立てるタイプじゃないんだと思う。
(どっかの新婦にはキレてたけど)
くだらないことを思い出して苦笑していると、不意に美鳥が私の肩をバンバンと叩く。
「ちょ、なに。痛いって」
「あれモデルとかかな。次元が違うヤバい人居る」
騒ぐ美鳥に言われて店の入り口の方を振り返ると、もしかしてと思ったけれど、やっぱりそこには凌さんが立っていた。
「ヤダ、なんかこっちに手振ってない?」
「そりゃそうでしょ。あれ凌さんだもん」
「は⁉︎」
ギョッとする美鳥に苦笑すると、呼び寄せた凌さんがテーブルにやってきて、当たり前のように私の隣に腰を下ろした。
「楽しい女子会を邪魔しに来たよ」
凌さんはニッと笑って白い歯を見せると、驚いて固まる美鳥にやっと気付いたのか、どうしたんだと怪訝な顔をする。
「凌さん、美鳥の前でそういう格好したことなかったの」
「え? ああ……どうだろう。なに、美鳥ちゃんそれでそんなに驚いてるの?」
話を振られた美鳥は、無言のままコクコクと頷いている。
「ほら、驚きすぎて声出ないみたいだもん」
「えー。そんなに驚く?」
凌さんはドリンクを頼むと、そんなにこの格好は変だろうかと斜め上のことを言い始めた。
婚約指輪が写り込むように撮られたツーショット写真は、幸せを詰め込んだように柔らかい笑顔の二人が並んでいる。
「へえ。侑さん、こういうタイプなんだ」
笑顔も凄く素敵で爽やかな好青年といった感じだけど、凌さんと兄弟というには顔立ちがかなり違う。
「優男って感じでしょ。私のキツい顔が目立つんだよね」
「そうは言ってないよ。でも本当に優しそう。凄く素敵な写真じゃない」
「侑はいつも変な顔するから、まともな写真がほとんどないんだよね」
美鳥はそう言うと、また変顔をしてる侑さんの写真を見せて、くだらないでしょと困ったように笑う。
彼女の口から侑さんの話題が出る度、愛されてるのはそっちの方だろうとツッコミを入れたくなるけれど、今でもしょっちゅうケンカをする話を聞いて、驚いてしまう。
「私たちの場合、理由はともかく一回は別れてるからさ。お互いに記憶が美化されちゃってて、変な行き違いがよく起こる」
「そうなんだ。なんか意外」
「実はそうなんだよ。たまに指輪突き返そうかと思ったりするもん」
「やだなに。物騒な話やめてよ」
「思うだけだってば」
カラッと笑う美鳥が少し羨ましくもある。
私の場合は凌さんと歳が離れてることもあって、基本的にケンカになるほどヒートアップすることがない。
多分そもそも私が、揉めるほど意見が合わない人と、気を遣いながら付き合えるタイプじゃないからかも知れない。
それに凌さんはよっぽどのことがない限り、そうそう苛立ったり腹を立てるタイプじゃないんだと思う。
(どっかの新婦にはキレてたけど)
くだらないことを思い出して苦笑していると、不意に美鳥が私の肩をバンバンと叩く。
「ちょ、なに。痛いって」
「あれモデルとかかな。次元が違うヤバい人居る」
騒ぐ美鳥に言われて店の入り口の方を振り返ると、もしかしてと思ったけれど、やっぱりそこには凌さんが立っていた。
「ヤダ、なんかこっちに手振ってない?」
「そりゃそうでしょ。あれ凌さんだもん」
「は⁉︎」
ギョッとする美鳥に苦笑すると、呼び寄せた凌さんがテーブルにやってきて、当たり前のように私の隣に腰を下ろした。
「楽しい女子会を邪魔しに来たよ」
凌さんはニッと笑って白い歯を見せると、驚いて固まる美鳥にやっと気付いたのか、どうしたんだと怪訝な顔をする。
「凌さん、美鳥の前でそういう格好したことなかったの」
「え? ああ……どうだろう。なに、美鳥ちゃんそれでそんなに驚いてるの?」
話を振られた美鳥は、無言のままコクコクと頷いている。
「ほら、驚きすぎて声出ないみたいだもん」
「えー。そんなに驚く?」
凌さんはドリンクを頼むと、そんなにこの格好は変だろうかと斜め上のことを言い始めた。
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