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15.①
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昨夜凌さんから届いたメッセージは、やっぱり果穂乃さんのことを言っていたんだろうか。
それなのに私と話がしたいなんて、どういうつもりなのか。無神経に人の気持ちを逆撫ですることを言うなんて、彼らしくない気がしてモヤモヤする。
いや、凌さんらしいとかそうじゃないなんて、私はそれが分かるほど彼を知らない。
それに最初に会った時だって、パーティーをめちゃくちゃにしに来たって言ってたし、実際に新婦を罵倒したくらいだ。だから思ってるよりも強気な性格をしているのかも知れない。
「秋菜、朝ごはん出来たよ」
「ありがとう。ごめんね、お任せしちゃって」
「いいのよ別に。それより問題は解決したの?」
「全然。肝心なことが聞けなくて」
「まったく。なにやってんのよ。ほら、貸してみ」
「あ、ちょっと」
美鳥は私からスマホを奪い取ると、勝手にメッセージを打って送信してしまう。
「はい。これで反応がなければ、もう会うのはやめなさい。ろくな男じゃないわよ」
美鳥に手渡されたスマホを見ると、昨夜の電話で名前を呼んでた人はどなたですかと書いた上で、私からはもう連絡はしない方が良さそうですねと送ってしまっている。
「ちょっと美鳥、なんでこんな勝手なこと」
「いいじゃない。こういうことは早いうちにはっきりさせないと、秋菜が傷付くだけなんだから」
「だからってこんなメッセージ、向こうは突然びっくりしちゃうよ」
「じゃあ、友だちが送ったって言い訳すれば?」
「そんなことできる訳ないでしょ」
美鳥が私を心配してくれているのは分かるけど、こんなことをされて、凌さんに変に思われることに頭を抱えてしまう。
体の関係があるとはいえ、私は別に彼の恋人じゃないし、気持ちだってきちんと伝えた訳じゃない。
たかが知り合いでしかない立場なのに、彼のプライベートに踏み入ったことを言えるはずがない。
すると鈴浦さんから立て続けにメッセージが届いて、その文面からは当然のことながら驚いた様子が伝わってくる。
【なんの説明も出来なくてごめん】
【こんな時に申し訳ないけど、今から出掛けないといけないので、また改めて連絡するね】
電話口で凌さんを呼んだ女性のことには触れず、今もやっぱり忙しいのか、メッセージのやり取りを切り上げる返事に溜め息が出た。
「彼、なんだって?」
「今まだ忙しいみたい。また連絡くれるってさ」
「電話の女の人のことは?」
「それも今度話してくれるんじゃないかな」
「煮え切らないわね。また私がメッセージ打とうか」
「もういいよ。ややこしくなったら嫌だから」
「でもね、秋菜」
「分かってる。心配してくれてるんでしょ。でも大丈夫だから」
表情を曇らせる美鳥にそう答えると、そろそろ食べようとテーブルに移動する。
「ねえ秋菜。とりあえずさ、今日は天気も良いみたいだし、一緒にショッピングでも行かない?」
「それは別にいいけど」
「ならそうしよう。買い物してリフレッシュしようよ。悶々としてると良くないし」
「そうだね」
美鳥が言うように、気持ちを少し切り替えた方がいいのかもしれない。
たわいない話をしながら朝食を済ませると、洗濯してもらった洋服に着替えてからメイクを整える。
支度が済んだ美鳥と一緒に玄関へ行くと、昨日の雪でびしょ濡れになってしまったブーツは、美鳥が乾燥機をかけてくれていたおかげで履き心地も悪くない。
「ブーツありがとね」
「大丈夫そう? 私の靴貸そうか」
「平気。ちゃんと乾いてる」
玄関でそんなやり取りをして部屋を出ると、眩しいくらいの日差しに、落ち込んだままではもったいないと気持ちを切り替えてエレベーターのボタンを押した。
そして美鳥の家から最寄駅に向かい、四十分ほど電車に揺られて移動すると、初めて足を運んだショッピングモールで買い物したりお店を見て回る。
それなのに私と話がしたいなんて、どういうつもりなのか。無神経に人の気持ちを逆撫ですることを言うなんて、彼らしくない気がしてモヤモヤする。
いや、凌さんらしいとかそうじゃないなんて、私はそれが分かるほど彼を知らない。
それに最初に会った時だって、パーティーをめちゃくちゃにしに来たって言ってたし、実際に新婦を罵倒したくらいだ。だから思ってるよりも強気な性格をしているのかも知れない。
「秋菜、朝ごはん出来たよ」
「ありがとう。ごめんね、お任せしちゃって」
「いいのよ別に。それより問題は解決したの?」
「全然。肝心なことが聞けなくて」
「まったく。なにやってんのよ。ほら、貸してみ」
「あ、ちょっと」
美鳥は私からスマホを奪い取ると、勝手にメッセージを打って送信してしまう。
「はい。これで反応がなければ、もう会うのはやめなさい。ろくな男じゃないわよ」
美鳥に手渡されたスマホを見ると、昨夜の電話で名前を呼んでた人はどなたですかと書いた上で、私からはもう連絡はしない方が良さそうですねと送ってしまっている。
「ちょっと美鳥、なんでこんな勝手なこと」
「いいじゃない。こういうことは早いうちにはっきりさせないと、秋菜が傷付くだけなんだから」
「だからってこんなメッセージ、向こうは突然びっくりしちゃうよ」
「じゃあ、友だちが送ったって言い訳すれば?」
「そんなことできる訳ないでしょ」
美鳥が私を心配してくれているのは分かるけど、こんなことをされて、凌さんに変に思われることに頭を抱えてしまう。
体の関係があるとはいえ、私は別に彼の恋人じゃないし、気持ちだってきちんと伝えた訳じゃない。
たかが知り合いでしかない立場なのに、彼のプライベートに踏み入ったことを言えるはずがない。
すると鈴浦さんから立て続けにメッセージが届いて、その文面からは当然のことながら驚いた様子が伝わってくる。
【なんの説明も出来なくてごめん】
【こんな時に申し訳ないけど、今から出掛けないといけないので、また改めて連絡するね】
電話口で凌さんを呼んだ女性のことには触れず、今もやっぱり忙しいのか、メッセージのやり取りを切り上げる返事に溜め息が出た。
「彼、なんだって?」
「今まだ忙しいみたい。また連絡くれるってさ」
「電話の女の人のことは?」
「それも今度話してくれるんじゃないかな」
「煮え切らないわね。また私がメッセージ打とうか」
「もういいよ。ややこしくなったら嫌だから」
「でもね、秋菜」
「分かってる。心配してくれてるんでしょ。でも大丈夫だから」
表情を曇らせる美鳥にそう答えると、そろそろ食べようとテーブルに移動する。
「ねえ秋菜。とりあえずさ、今日は天気も良いみたいだし、一緒にショッピングでも行かない?」
「それは別にいいけど」
「ならそうしよう。買い物してリフレッシュしようよ。悶々としてると良くないし」
「そうだね」
美鳥が言うように、気持ちを少し切り替えた方がいいのかもしれない。
たわいない話をしながら朝食を済ませると、洗濯してもらった洋服に着替えてからメイクを整える。
支度が済んだ美鳥と一緒に玄関へ行くと、昨日の雪でびしょ濡れになってしまったブーツは、美鳥が乾燥機をかけてくれていたおかげで履き心地も悪くない。
「ブーツありがとね」
「大丈夫そう? 私の靴貸そうか」
「平気。ちゃんと乾いてる」
玄関でそんなやり取りをして部屋を出ると、眩しいくらいの日差しに、落ち込んだままではもったいないと気持ちを切り替えてエレベーターのボタンを押した。
そして美鳥の家から最寄駅に向かい、四十分ほど電車に揺られて移動すると、初めて足を運んだショッピングモールで買い物したりお店を見て回る。
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