結婚話をキャンセルされたので、ポイ捨てされた美貌の社長とワンナイトすることになりました

濘-NEI-

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10.②☆ 凌視点

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 自分の不甲斐なさで落ち込む俺を気遣って、仕事が忙しいんじゃないかと心配してくれる秋菜ちゃんの真剣な顔を見ると、この人には笑っていて欲しいと思う。
「ちゃんと休んでるよ。だいたい家でゴロゴロしちゃうけど。秋菜ちゃんは休みの日、なにして過ごしてるの」
 そういえば彼女は以前、ほとんど毎日お弁当を作ってるって言ってたし、家事とかパパッと済ませてしまう感じなんだろうか。
「私も結局気付いたらゴロゴロしちゃってます。洗濯とか溜めちゃうので、土曜日に買い物とか家事を片付けて日曜は好きに過ごしてます」
「休みの日は休みたいって感じかな」
「そうですね。目的があると外出することもありますけど、気が付いたら家でボーッとして過ごしちゃいますね。凌さんもそんな感じですか」
「同じようなもんだよ。別に外出が億劫な訳じゃないけど、用事もないのにブラブラするってのが出来ないんだよね」
 それなのに計画を立てるのは苦手だと続けると、秋菜ちゃんは可笑しそうに笑って口元を手で覆う。
 そんな何気ない仕草が可愛く見えて、俺は自分の単純さに嫌気が差す。だって彼女は優しくて良い人だし、別に俺が相手じゃなくてもこんな風に笑うんだろう。
 モヤモヤした気持ちが晴れないまま地下鉄を降りて目的のカフェに向かうと、残念なことに満席ですぐには店に入れそうにない。
「ごめん。来る前にちゃんと調べて予約しておくんだった」
「そんな、大丈夫ですよ」
「せっかく移動してきたのにね。本当にごめん」
「謝らないでください。こんな時になんなんですけど、凌さんさえ良ければ、ちょっと付き合って欲しい場所がありまして」
「ん?」
「ここは素敵なカフェなので良ければまた別の機会にして、ちょっと気になってる行ってみたかったところが近くなので、お店の状況調べてみても構いませんか」
 ニコッと笑うと、頷いた俺に安堵したようにスマホでなにかを調べ始めて電話を掛けている。
 聞き違いじゃなければ、彼女をまた別の機会にこのカフェに誘っても良いんだろうか。
 そう思ったら現金だけど、秋菜ちゃんが行きたいという店に空席があることを祈るしかなかった。
 俺も彼女もそんなにお酒が好きってほどではない。
 だからちょっとそこのバーで一杯って訳にいかないし、尚更希望があるなら叶えてあげたい。
 一生懸命に電話の向こうに頭を下げてる様子が可愛くて、俺はやっぱり秋菜ちゃんに好意以上の気持ちを抱いてる自分を自覚した。
「凌さん、やりました! 予約出来たので今から行きましょう」
「ごめんね、でも助かったよ。ありがとう」
「いえいえ。私が行ってみたかったお店なので、凌さんが楽しめるかどうかは分からないんですけど」
「どんなお店なの」
「それは行ってからのお楽しみということで」
 イタズラっぽく笑う秋菜ちゃんが可愛過ぎて、俺は咄嗟に照れて緩み切った顔を誤魔化すように頭を抱えて溜め息を吐く。
「ごめんなさい。もしかして、そういうのはお嫌いでしたか」
「違う違う。時間が勿体無いから急ごうか」
「はい。あ、こっちです」
 スマホのマップを見ながら、楽しそうに笑顔を浮かべる秋菜ちゃんはやっぱり人が良いと思う。だけどそんな優しくて飾らない彼女だからこそ、可愛いと思うし好きになった気がする。
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