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2.③

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 鈴浦さんは安堵した笑顔を浮かべると、ライトアップされた中庭に視線を移して、これからはクリスマスの時期だねと話題を変えた。
 隣に座ってとりとめのない会話をしながら笑顔を浮かべる鈴浦さんは、一見すると派手で華やかな印象が強いけど、人当たりが良くて下品な感じも全然しない。
 新婦に向かってあんな暴言を吐いた人だから、ちょっと怖い人なのかもと思ったけれど、やっぱりあれには深い事情があるんだろう。
 それにしても鈴浦さんと話をしていると、昔から見知った相手のような安心感があって緊張しないで済む。
 もしかしたらアパレル関係の仕事だと言ってたし、接客で他人との会話に慣れているのかも知れないなと、こっそり分析して一人で納得する。
 不思議な雰囲気の人だと改めて鈴浦さんをチラリと横目で見ると、彼は温かい飲み物でメガネを曇らせていて、その姿が可笑しくて自然と笑ってしまって笑顔になる。
「鈴浦さんのおかげで、美味しいお食事が楽しめました。お礼になるのか分かりませんけど、先程のお話を聞かせてもらっても構いませんか」
「本当に愚痴なんだけど、大丈夫かな」
「構いませんよ」
「林原さんて良い人だね」
「そうでしょうか」
「そうだよ。でもお言葉に甘えさせてもらうね」
「はい。もちろん他言しませんのでご安心ください」
 少し砕けた感じで笑ってみせると、鈴浦さんは釣られたように笑顔を浮かべ、本当にくだらないことなんだけどと話をし始めた。
「そんなに長い付き合いじゃないんだけど、自分の恋人だと思ってた子がさ、今日のパーティーの主役だった訳ですよ」
「え?」
「いわゆる俺はキープだったのか、そもそもそれですらなかったのか。数日前に突然彼女から、結婚することになったからパーティーに招待するわねって言われてさ」
「そんな」
「ね。びっくりだよね」
 鈴浦さんは情けない話だろと苦笑すると、ケーキでも頼もうかなとメニューを開いて一度話をそこでやめた。
(こんなにかっこいい人より、大輔を選んだの?)
 信じられなくて、そんなことを思ってしまう。確かに大輔も不男ぶおとこではないけれど、鈴浦さんほどの色男ではない。
 そんな事情があったなら、今日のパーティーなんて招待されても良い気はしなかっただろう。
 私にとっても、今日のパーティーは楽しいものじゃなかった。
 私は別に大輔と付き合ってた訳じゃない。
 だけど結婚しようなんて、それが冗談混じりの口約束だったとしても、甘い言葉を掛けられていた。急な入籍を素直に祝えない気持ちがあったから、鈴浦さんの気持ちがよく分かる。
 どんな言葉を返すべきか悩む私に、突然変な話をしてごめんねと鈴浦さんは苦笑する。
「パンケーキは好きかな。ちょっと量が多いから、二人でシェアしない?」
「良いですね。私もたくさんは食べられそうにないので」
 抹茶ベースであんこと生クリーム、レアチーズのソースが美味しそうなスフレパンケーキが運ばれてくると、鈴浦さんは用意してもらった小皿に取り分けて、一皿を私の前に置いた。
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