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おまけ。

【余談】ある日の夫婦①

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「そうだ、京都に行こう」
「ん? どしたどした」
 ある日の夕飯時、水餃子を頬張りながら突然テーブルから立ち上がった翔璃に、一旦落ち着こうかと椅子に座るように声を掛ける。
「うん。なんなのかな、突然お箸を掲げて立ち上がったら結構びっくりするよ」
「閃いたんだよ」
「うん。やっと翻訳作業が終わって、なんか変なスイッチ入ったんだね」
 生姜の効いた水餃子を頬張りながら、翔璃の様子がおかしいのはいつものことなので、何があったのかと、野菜も食べるように口元に蒸したかぼちゃを差し出す。
「いや、ここのところ俺詰めてたし、全然美都真に構ってやれてなかったし」
 かぼちゃをパクッと頬張って、翔璃は不満げな顔をする。
 だいたい構いたいのは翔璃の勝手なワガママで、私からしてみたら色んな作業の手を止めざるを得ないほど、エッチな邪魔をされるのは日常茶飯事なので、はっきり言ってなにを言ってるのか理解し難い反応に驚いた。
「そんなことなくない? 結構ちょっかい出された気がするけど」
「バカお前、あんなソフトな構い方に満足するなよ」
「うん、バカはどっちだろうね?」
 いいからサッサと食べなさいと、翔璃の話を受け流す。
 とはいえ、確かに翔璃はここ数ヶ月、新作の翻訳作業に取り掛かっていて、慣れない初めての出版社とのやり取りだったこともあったからか、行き詰まる様子がなかった訳でもない。
 それに加えて私もライセンス契約のための出張が何件か入って、家を空けることは確かにあった。
「俺はね、しっぽりした旅館でね、美都真をでろでろのとろんとろんにしたいの」
「もはやそれ、人間相手に使う擬音じゃないね」
「なんでだよ。ここをとろっとろにして、俺の咥え込んで離せない身体にしてやりたいんだよ」
 テーブルの下で器用に伸ばされた翔璃の足が、私の太腿を押し広げると、狭間を厭らしくつま先で突いてグッと押し込んでくる。
「バカ! 今食べてるでしょ」
 不埒な足を叩いて払うと、油断も隙もあったもんじゃないと頬を膨らませながらも、私を知り尽くしたつま先の動きに身体が熱を持つ。
「そんな顔しちゃって。欲しくなったんだろ」
「うるさいバカ! 食べないなら片付けるよ」
「分かった分かった。ちゃんと食べるよ。美都真もね」
 意味深に笑って翔璃が大人しく水餃子を頬張る口元を見ていると、そんなつもりはなかったのにはしたなく身体が疼き始めて、自分自身が情けなくなった。
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