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(7)冒険者ギルド〈ストラヴァル〉
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広大なイゴラス大陸の上空を飛び、内陸の帝都アエスまで僅か一時間程度で辿り着くと、〈カージナルグウィバー〉はネガール組合が管理するギルド専用の飛翔場のドックに到着した。
「アラバット、ニックさん。またね」
「アラバット、ルカくん。今度ご飯でも食べに行こうね」
すっかり打ち解けてアチューダリア式の挨拶を交わす二人の様子を眺め、ムゥダルは肩をすくめて口の端を引き上げると、行くぞと声を掛けて先にタラップを降りていく。
「ねえムゥダル、ここからギルドは近いの」
「まあそう離れちゃいないが、少し距離はあるな」
「それなのに、バギー置いてきて良かったの」
ムゥダルがアチューダリアで使っていたスチームバギーは、わざわざ運んで来たというのに〈カージナルグウィバー〉に積んだままだ。
「あれは遠征用だから良いんだ、街中走らせるもんじゃねえし。それに、必要なら誰か取りに来るだろ」
そう言って鼻を鳴らすムゥダルの後に続いて広いドックを抜けると、港町ミヴァネリよりも旧世代的な印象を受ける街並みにリルカは少しだけがっかりする。
「なんか想像と違う」
「ははは。そりゃあっちは工業地帯だし、どこもかしこも機械の街並みってワケじゃない。内陸から西は骸獣の被害も多いから、特殊な建物を容易く造らない方が安全だ」
「骸獣……」
煙毒と呼ばれる瘴気の一種から生み出されると考えられ、リンドルナの各所に不変的に発生する異形の生物の総称。
多くは元々生息していた動物が煙毒を吸い込むことによって、その性質が変化して凶暴化するものだと認識されている。
「なんだ。不安なのか」
「そりゃそうだよ。実戦の経験なんてないからさ」
エイダーガルナはその広大さから、帝国全土にギルドが存在し、その種類も多様性に富んでいるが、リルカの故郷であるアチューダリアにはギルド自体が存在しない。
骸獣を退治するのは国王軍であり、骸獣討伐隊が編成されて主に彼らがその職務に当たっており、国王から保護の打診があった際も、リルカがその討伐隊に入隊することが条件だった。
どの道やることは同じなのかと、リルカは小さな声で独りごちる。
「おい、ボーッとしてんなよ」
ムゥダルに声を掛けられてリルカがハッとして我に返ると、なにかの乗り合い場のような整備された空間に辿り着いたことに気付いて辺りを見渡す。
「ギルドがある中心部まではこれで移動する」
「これは」
「ウノスアルカだ。観光用だが、街中の移動に意外と使えるんだ」
空中を這う軌道に沿って何台もぶら下がったそれは、一つ一つに大人四人がギリギリ乗り込める広さがあり、座って移動するためか座席が設られた乗り物だ。
セレス石を加工したであろう窓が張り巡らされ、頑丈な金属がそれを覆っている。
「こ、これに乗るの。落ちたりしないよね」
「慣れたら便利だぞ。デート気分でテンション上がるだろ」
落ちねえよと可笑しそうに肩を揺らして軽口を叩くムゥダルに言い返す余裕もなく、リルカは恐る恐るウノスアルカに乗り込むと、固い座席に座って手すりのパイプを掴む。
「凄いね、機械が至る所にあるんだ」
「なに、お前もここに住んでりゃすぐに慣れる」
手慣れた様子で扉を施錠すると、ムゥダルが操作盤のレバーを動かすと同時に、ウノスアルカがゆっくりと動き始める。
移動の道中で世間話を織り交ぜて、帝都アエスのどの区画に何があるのか改めてリルカに説明すると、そんなに緊張するなとムゥダルが笑う。
「まあお前の場合は、ギルドの連中に挨拶済ませたら、すぐにクエストを受けた方が早いかもな。お前の腕なら一日もあればCランク程度には上がれるはずだ」
「じゃあ、私はDランクからのスタートするのね」
「おいルカ、私じゃないだろ。それに言葉遣いもだ」
ムゥダルは呆れた様子で溜め息を吐き、厳しい視線をリルカに向けると、気を抜くなと釘を刺して話を続ける。
「たとえ俺と二人きりになっても油断するな。帝国だろうと、常に〈モゼリオ〉の目が光ってると思え。それともお前、無力な女の子として俺に守られて過ごすつもりで着いてきたのか」
「違う、そんなつもりじゃ……ごめんなさい」
「分かったなら良い。それからお前の質問だが、〈ストラヴァル〉でランクが付くのはEからだ。新人は何度か条件付きのクエストをこなして、ようやくEランクになる」
「ちょっと待って。そんな厳しいのに、俺いきなりCランクまで上がれるの」
「上がれるだけの腕はあるってだけだけどな」
その調子だとリルカの頭を撫でると、期待に応えてくれよとムゥダルらしい意地の悪い笑みを浮かべた。
三十分ほど移動すると帝都アエスの中心部に到着し、ムゥダルに言われてリルカがレバーや操作盤を弄って広い降車場に入ると、ようやくウノスアルカから降りて大地を踏み締める。
「あぁああ、やっと帰ってきたぜ」
ムゥダルは深く息を吐き出すように大きな声を出すと、バキバキと音を鳴らして、長旅で疲れた体をほぐすように大きく伸びをして腰を捻る。
「二節の船旅があったもんね」
「最新式の飛翔艇なら、アチューダリアにも直接乗り込めるんだけどな」
「え、そうなの」
「まあその辺りは追い追いな。さあ、ギルドは目の前だ。お前の挨拶回りと行こうか」
「うん」
踏み入れた敷地には、入ってすぐ左にスチームバイクなどが置かれた車庫のような倉庫があり、右手は広場になっていて、演習場として使われているらしい。
ちょっとした人だかりの真ん中では、ブーツが踏み締める大地から土埃が上がり、木製の剣がぶつかり合う、カッ、ガツンッという乾いた剣戟の音が鳴り響く。
ブンッと剣が唸るように空を切る音がした後に鈍く乾いた音がすると、一人の体が宙に浮いて吹っ飛んだ。
そのまま視線を外せずにリルカが様子を見守っていると、吹き飛ばされた男はすぐに受け身を取って起き上り膝を折るが、その首筋に鋒を充てがわれて参ったと両手を挙げた。
「あの人たち強いね」
「飛ばされた方がメネオス。立ってる方がナサニエルだな。両方ともBランクで実力は同じくらいだろうな」
冒険者ギルド〈ストラヴァル〉は、常時二百名ほどの冒険者を抱える歴史あるギルドであり、その門戸は広く、冒険者を夢見て帝国全土から集まってきた志願者を受け入れている。
「おーいお前ら、これ俺の子分。ルカ、挨拶しろ」
「これからお世話になります。ルカです。よろしくお願いします」
ギルド会館の中に入り、主要な冒険者と思われる連中に挨拶して頭を下げながら、リルカは事前に聞かされたことを反復するように思い浮かべていた。
実力主義の体制において、多くの者が現実を突きつけられて、夢破れて他の職に移ることも少なくはない。
つまり限られたギルドメンバーにしか声を掛けないのは、その激戦を勝ち抜き、ランク保持者として現役で活躍することが如何に難しいことであるかを物語っている。
「ムゥダルさん、いよいよ美少年に乗り換えたんですか」
「はあ?んなワケねえだろ。コイツは恩人から預かって面倒見ることになったんだよ」
「ルカ、男だからって油断すんなよ。この人のエロさはもはや病気だから、貞操には充分気をつけろよ」
面白がってムゥダルを揶揄う周りの様子を見ているだけで、彼が周りから信頼されて好かれているのが伝わってきて、リルカも思わず笑顔を浮かべる。
「ようお前ら、随分と楽しそうじゃねえか」
そんな最中、突如姿を覗かせた大男が言葉とは裏腹に渋い顔で目を眇め、リルカとムゥダルを呼び付けるように顎をしゃくる仕草で着いてこいと促した。
「アラバット、ニックさん。またね」
「アラバット、ルカくん。今度ご飯でも食べに行こうね」
すっかり打ち解けてアチューダリア式の挨拶を交わす二人の様子を眺め、ムゥダルは肩をすくめて口の端を引き上げると、行くぞと声を掛けて先にタラップを降りていく。
「ねえムゥダル、ここからギルドは近いの」
「まあそう離れちゃいないが、少し距離はあるな」
「それなのに、バギー置いてきて良かったの」
ムゥダルがアチューダリアで使っていたスチームバギーは、わざわざ運んで来たというのに〈カージナルグウィバー〉に積んだままだ。
「あれは遠征用だから良いんだ、街中走らせるもんじゃねえし。それに、必要なら誰か取りに来るだろ」
そう言って鼻を鳴らすムゥダルの後に続いて広いドックを抜けると、港町ミヴァネリよりも旧世代的な印象を受ける街並みにリルカは少しだけがっかりする。
「なんか想像と違う」
「ははは。そりゃあっちは工業地帯だし、どこもかしこも機械の街並みってワケじゃない。内陸から西は骸獣の被害も多いから、特殊な建物を容易く造らない方が安全だ」
「骸獣……」
煙毒と呼ばれる瘴気の一種から生み出されると考えられ、リンドルナの各所に不変的に発生する異形の生物の総称。
多くは元々生息していた動物が煙毒を吸い込むことによって、その性質が変化して凶暴化するものだと認識されている。
「なんだ。不安なのか」
「そりゃそうだよ。実戦の経験なんてないからさ」
エイダーガルナはその広大さから、帝国全土にギルドが存在し、その種類も多様性に富んでいるが、リルカの故郷であるアチューダリアにはギルド自体が存在しない。
骸獣を退治するのは国王軍であり、骸獣討伐隊が編成されて主に彼らがその職務に当たっており、国王から保護の打診があった際も、リルカがその討伐隊に入隊することが条件だった。
どの道やることは同じなのかと、リルカは小さな声で独りごちる。
「おい、ボーッとしてんなよ」
ムゥダルに声を掛けられてリルカがハッとして我に返ると、なにかの乗り合い場のような整備された空間に辿り着いたことに気付いて辺りを見渡す。
「ギルドがある中心部まではこれで移動する」
「これは」
「ウノスアルカだ。観光用だが、街中の移動に意外と使えるんだ」
空中を這う軌道に沿って何台もぶら下がったそれは、一つ一つに大人四人がギリギリ乗り込める広さがあり、座って移動するためか座席が設られた乗り物だ。
セレス石を加工したであろう窓が張り巡らされ、頑丈な金属がそれを覆っている。
「こ、これに乗るの。落ちたりしないよね」
「慣れたら便利だぞ。デート気分でテンション上がるだろ」
落ちねえよと可笑しそうに肩を揺らして軽口を叩くムゥダルに言い返す余裕もなく、リルカは恐る恐るウノスアルカに乗り込むと、固い座席に座って手すりのパイプを掴む。
「凄いね、機械が至る所にあるんだ」
「なに、お前もここに住んでりゃすぐに慣れる」
手慣れた様子で扉を施錠すると、ムゥダルが操作盤のレバーを動かすと同時に、ウノスアルカがゆっくりと動き始める。
移動の道中で世間話を織り交ぜて、帝都アエスのどの区画に何があるのか改めてリルカに説明すると、そんなに緊張するなとムゥダルが笑う。
「まあお前の場合は、ギルドの連中に挨拶済ませたら、すぐにクエストを受けた方が早いかもな。お前の腕なら一日もあればCランク程度には上がれるはずだ」
「じゃあ、私はDランクからのスタートするのね」
「おいルカ、私じゃないだろ。それに言葉遣いもだ」
ムゥダルは呆れた様子で溜め息を吐き、厳しい視線をリルカに向けると、気を抜くなと釘を刺して話を続ける。
「たとえ俺と二人きりになっても油断するな。帝国だろうと、常に〈モゼリオ〉の目が光ってると思え。それともお前、無力な女の子として俺に守られて過ごすつもりで着いてきたのか」
「違う、そんなつもりじゃ……ごめんなさい」
「分かったなら良い。それからお前の質問だが、〈ストラヴァル〉でランクが付くのはEからだ。新人は何度か条件付きのクエストをこなして、ようやくEランクになる」
「ちょっと待って。そんな厳しいのに、俺いきなりCランクまで上がれるの」
「上がれるだけの腕はあるってだけだけどな」
その調子だとリルカの頭を撫でると、期待に応えてくれよとムゥダルらしい意地の悪い笑みを浮かべた。
三十分ほど移動すると帝都アエスの中心部に到着し、ムゥダルに言われてリルカがレバーや操作盤を弄って広い降車場に入ると、ようやくウノスアルカから降りて大地を踏み締める。
「あぁああ、やっと帰ってきたぜ」
ムゥダルは深く息を吐き出すように大きな声を出すと、バキバキと音を鳴らして、長旅で疲れた体をほぐすように大きく伸びをして腰を捻る。
「二節の船旅があったもんね」
「最新式の飛翔艇なら、アチューダリアにも直接乗り込めるんだけどな」
「え、そうなの」
「まあその辺りは追い追いな。さあ、ギルドは目の前だ。お前の挨拶回りと行こうか」
「うん」
踏み入れた敷地には、入ってすぐ左にスチームバイクなどが置かれた車庫のような倉庫があり、右手は広場になっていて、演習場として使われているらしい。
ちょっとした人だかりの真ん中では、ブーツが踏み締める大地から土埃が上がり、木製の剣がぶつかり合う、カッ、ガツンッという乾いた剣戟の音が鳴り響く。
ブンッと剣が唸るように空を切る音がした後に鈍く乾いた音がすると、一人の体が宙に浮いて吹っ飛んだ。
そのまま視線を外せずにリルカが様子を見守っていると、吹き飛ばされた男はすぐに受け身を取って起き上り膝を折るが、その首筋に鋒を充てがわれて参ったと両手を挙げた。
「あの人たち強いね」
「飛ばされた方がメネオス。立ってる方がナサニエルだな。両方ともBランクで実力は同じくらいだろうな」
冒険者ギルド〈ストラヴァル〉は、常時二百名ほどの冒険者を抱える歴史あるギルドであり、その門戸は広く、冒険者を夢見て帝国全土から集まってきた志願者を受け入れている。
「おーいお前ら、これ俺の子分。ルカ、挨拶しろ」
「これからお世話になります。ルカです。よろしくお願いします」
ギルド会館の中に入り、主要な冒険者と思われる連中に挨拶して頭を下げながら、リルカは事前に聞かされたことを反復するように思い浮かべていた。
実力主義の体制において、多くの者が現実を突きつけられて、夢破れて他の職に移ることも少なくはない。
つまり限られたギルドメンバーにしか声を掛けないのは、その激戦を勝ち抜き、ランク保持者として現役で活躍することが如何に難しいことであるかを物語っている。
「ムゥダルさん、いよいよ美少年に乗り換えたんですか」
「はあ?んなワケねえだろ。コイツは恩人から預かって面倒見ることになったんだよ」
「ルカ、男だからって油断すんなよ。この人のエロさはもはや病気だから、貞操には充分気をつけろよ」
面白がってムゥダルを揶揄う周りの様子を見ているだけで、彼が周りから信頼されて好かれているのが伝わってきて、リルカも思わず笑顔を浮かべる。
「ようお前ら、随分と楽しそうじゃねえか」
そんな最中、突如姿を覗かせた大男が言葉とは裏腹に渋い顔で目を眇め、リルカとムゥダルを呼び付けるように顎をしゃくる仕草で着いてこいと促した。
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