40 / 87
13.これからの働き方④
しおりを挟む
「東京店の若狭の後任になる、ルサルカ勤務の赤西さんです」
「お疲れ様です。赤西です」
「お疲れ様、草壁です。ルサルカと本社は勝手が違うので、慣れるまで大変かもしれないけど、期待してますので宜しくお願いしますね」
「はい。宜しくお願いいたします」
頭を下げて挨拶し直すと、エルバは手が空かなくて申し訳ないと言いながらキーボードを叩いて、すぐに仕事を再開した。
「では、失礼します」
そう言って頭を下げた里中さんに倣うと、その後を追って私も部屋を出た。
「緊張したかな」
「……はい」
仕事中なのもあるけれど、私が知っているエルバではない気がして、ちょっとだけ不安になった。
彼は本当にこの後、私とまたあの告白について話し合う気があるんだろうか。そう思わざるを得ないくらい、他人行儀でさっぱりしていた気がする。
(いや、凄い知ってる感じで話し掛けられても困るけど)
エルバが他人行儀な方が助かるくせに、少しだけ寂しさを感じてる自分に言い訳をすると、挨拶はこんなものかなと振り返った里中さんの声で我に返った。
「さっきも説明したけど、取り急ぎやって欲しいことは家探しかな」
「はい」
「交通費の出ない範囲で、店に近いところを探すようにしてね。それで家賃が高めになっても融通は利くから」
「分かりました」
「じゃあ、他になにか質問がなければ解散ということで」
「今日はお時間をいただいてありがとうございました」
「いえいえ。これからバタバタするだろうし、困ったことがあったら気軽に声掛けてくれたらいいから」
「はい。ありがとうございます。では、失礼します」
そうしてオフィスを出て玄関フロアまで見送ってもらうと、到着したエレベーターに乗り込み、改めて里中さんに頭を下げると扉が閉まった。
「ふう。緊張した」
腕時計で時間を確認すると、いつの間にそんな時間が経っていたのか、もう十八時半になろうとしている。
エルバは打ち合わせが終わったら、告白の返事を聞くと言っていたけれど、あの様子だとまだ仕事は終わらないだろう。
どこで時間を潰そうかとビルを出ると、ちょうどタイミングよくスマホが震えてメッセージが届いた。
【あと二、三十分かかりそう。ここで待ってて】
さっき挨拶した人と同じ人なんだろうかと疑問に思うほど親しげな文面と、URLが送られてきて早速リンクを開く。
どうやらこの近くにあるカフェのようだ。
「とりあえず行きますか」
マップを頼りに裏路地に入ると、辺りはすっかり暗くなって、どんどん住宅街になっていく道を不安になりながら進んでいく。
そしていよいよ目的地に到着すると、平屋建ての家を改装したお洒落なカフェがあってホッとした。
「お疲れ様です。赤西です」
「お疲れ様、草壁です。ルサルカと本社は勝手が違うので、慣れるまで大変かもしれないけど、期待してますので宜しくお願いしますね」
「はい。宜しくお願いいたします」
頭を下げて挨拶し直すと、エルバは手が空かなくて申し訳ないと言いながらキーボードを叩いて、すぐに仕事を再開した。
「では、失礼します」
そう言って頭を下げた里中さんに倣うと、その後を追って私も部屋を出た。
「緊張したかな」
「……はい」
仕事中なのもあるけれど、私が知っているエルバではない気がして、ちょっとだけ不安になった。
彼は本当にこの後、私とまたあの告白について話し合う気があるんだろうか。そう思わざるを得ないくらい、他人行儀でさっぱりしていた気がする。
(いや、凄い知ってる感じで話し掛けられても困るけど)
エルバが他人行儀な方が助かるくせに、少しだけ寂しさを感じてる自分に言い訳をすると、挨拶はこんなものかなと振り返った里中さんの声で我に返った。
「さっきも説明したけど、取り急ぎやって欲しいことは家探しかな」
「はい」
「交通費の出ない範囲で、店に近いところを探すようにしてね。それで家賃が高めになっても融通は利くから」
「分かりました」
「じゃあ、他になにか質問がなければ解散ということで」
「今日はお時間をいただいてありがとうございました」
「いえいえ。これからバタバタするだろうし、困ったことがあったら気軽に声掛けてくれたらいいから」
「はい。ありがとうございます。では、失礼します」
そうしてオフィスを出て玄関フロアまで見送ってもらうと、到着したエレベーターに乗り込み、改めて里中さんに頭を下げると扉が閉まった。
「ふう。緊張した」
腕時計で時間を確認すると、いつの間にそんな時間が経っていたのか、もう十八時半になろうとしている。
エルバは打ち合わせが終わったら、告白の返事を聞くと言っていたけれど、あの様子だとまだ仕事は終わらないだろう。
どこで時間を潰そうかとビルを出ると、ちょうどタイミングよくスマホが震えてメッセージが届いた。
【あと二、三十分かかりそう。ここで待ってて】
さっき挨拶した人と同じ人なんだろうかと疑問に思うほど親しげな文面と、URLが送られてきて早速リンクを開く。
どうやらこの近くにあるカフェのようだ。
「とりあえず行きますか」
マップを頼りに裏路地に入ると、辺りはすっかり暗くなって、どんどん住宅街になっていく道を不安になりながら進んでいく。
そしていよいよ目的地に到着すると、平屋建ての家を改装したお洒落なカフェがあってホッとした。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【完】あなたから、目が離せない。
ツチノカヲリ
恋愛
入社して3年目、デザイン設計会社で膨大な仕事に追われる金目杏里(かなめあんり)は今日も徹夜で図面を引いていた。共に徹夜で仕事をしていた現場監理の松山一成(まつやまひとなり)は、12歳年上の頼れる男性。直属の上司ではないが金目の入社当時からとても世話になっている。お互い「人として」の好感は持っているものの、あくまで普通の会社の仲間、という間柄だった。ところがある夏、金目の30歳の誕生日をきっかけに、だんだんと二人の距離が縮まってきて、、、。
・全18話、エピソードによってヒーローとヒロインの視点で書かれています。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。
断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。
夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。
パリで出会ったその美人モデル。
女性だと思っていたら――まさかの男!?
酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。
けれど、彼の本当の姿はモデルではなく――
(モデル)御曹司×駆け出しデザイナー
【サクセスシンデレラストーリー!】
清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー
麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル)
初出2021.11.26
改稿2023.10
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる