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11.望まない干渉②
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「とにかくね、私は結婚なんて考えてないの。今時三十過ぎたからって結婚しないのは珍しくないし、今の仕事が楽しいの。それに前から、いつかは自分の店を持ちたい話はしてるでしょ」
「結婚しても出来ないことじゃないだろう。相手も相手だ。三十過ぎたお前と結婚する気もないなんて、どうせろくでもない奴なんだろう」
「そんなことないよ」
「だったら挨拶くらい連れてこい」
「だからそれは……」
「それともなにか? 親に会わせられないような理由があるのか。そんな軽薄な人間ならさっさと縁を切れ」
「もう! なんでそんなこと決められないといけないの。私だってもう子どもじゃないんだから、そんなの自分で決める。結婚にしたって、したければ勝手にするから放っておいて」
いつもこんな調子で、頭ごなしに否定されることにうんざりしてしまう。
「なにが子どもじゃないのよ。駄々こねて、子どもそのものじゃない」
「うるさいな。私がどう生きようが勝手でしょ。自分たちの世間体のために、望みもしない結婚させようとしないでよ!」
あまりにも腹が立って、言ってはいけない一線を超えてしまった気がするけど、もう止められない。
「瑞穂……お前そんな風に思ってるのか」
「お願いだから放っておいてって言ってるの。自分たちの考えが、誰にでも当てはまるって思い込みはやめて。それが息苦しくて仕方ないって、どうして分かってくれないの」
「それが子どもだって言うのよ」
「子どもじゃない! 彼はちゃんと理解してくれてるんだから、これは私たちの問題であって、お父さんやお母さんは関係ないことなの」
いるはずもない恋人の理解を得てるからなんて、冷静になったら虚しい嘘だけど、結婚するのが幸せだとか、そういうのを押し付けられるのはもううんざりだ。
「瑞穂、お前、本当にそんな相手がいるのか」
「どういうこと?」
「お前にとって都合が良すぎるからだよ。そんなワガママを受け入れるなんて、相手の男はどうかしてる」
「そうよね。お母さんもそう思う。本当は恋人なんかいないんじゃないの? まあ、いたとしてもろくな人間じゃないわね」
そんな風に吐き捨てられて、このままではなにを言っても平行線で、理解を得ることは出来ないことを再確認する。
きっとこの場にエルバがいたとしても、この二人を言いくるめるのは不可能に近いだろう。
そう思うとエルバを心から心配して、私の親にまで心を向けてくれたエルバのご両親が、どれだけ素晴らしい人たちなのか、羨ましさと情けなさで悔しくなってくる。
「知りもしないくせに、勝手なこと言わないで」
「瑞穂、父さんたちはお前のことを思ってだな」
「なにが私のためなの。誰が、いつ、結婚相手を紹介してくれって頼んだの? 結婚することが幸せかどうかなんて私が決めることでしょ」
「じゃあ一生独りで生きていく覚悟があるの?」
父と私の間に割って入った母の言葉に、そうだと答えれば両親は満足して納得するんだろうか。
これから先、なんの干渉もなく、結婚してれば苦労しなくて済んだのになんて、ありふれた嘲笑のような罵声を聞くこともないんだろうか。
「とにかく、自分のことは自分で決めるから。もう勝手なことしないで」
吐き捨ててバッグを肩にかけると、まだなにか声をかけてくる両親の声を無視して家を飛び出した。
これではなにも解決しない。それは分かってる。
でも、結婚しないことがそんなにダメなことなんだろうか。
好きでもない相手と、義務的にお見合いして家庭を持つことが幸せにつながると、うちの両親は本気で思っているんだろうか。
「なんで分かってくれないのかな」
私の幸せは、私にしか作れない。
どうしてうちの両親は、自分たちの型にはめたがるのだろうか。
好きな仕事をして、夢を持ってそれに向かって努力してることすら否定された気がして、結婚しない程度のことで、私自身の全てを否定されているようで苦しくなる。
(どうして、こうなっちゃうのかな)
憂鬱な気持ちのまま電車に揺られ、ようやく自宅に着いた頃には、両親から届いたメッセージを読む気にもなれず、すぐに着替えてベッドに潜り込んだ。
「結婚しても出来ないことじゃないだろう。相手も相手だ。三十過ぎたお前と結婚する気もないなんて、どうせろくでもない奴なんだろう」
「そんなことないよ」
「だったら挨拶くらい連れてこい」
「だからそれは……」
「それともなにか? 親に会わせられないような理由があるのか。そんな軽薄な人間ならさっさと縁を切れ」
「もう! なんでそんなこと決められないといけないの。私だってもう子どもじゃないんだから、そんなの自分で決める。結婚にしたって、したければ勝手にするから放っておいて」
いつもこんな調子で、頭ごなしに否定されることにうんざりしてしまう。
「なにが子どもじゃないのよ。駄々こねて、子どもそのものじゃない」
「うるさいな。私がどう生きようが勝手でしょ。自分たちの世間体のために、望みもしない結婚させようとしないでよ!」
あまりにも腹が立って、言ってはいけない一線を超えてしまった気がするけど、もう止められない。
「瑞穂……お前そんな風に思ってるのか」
「お願いだから放っておいてって言ってるの。自分たちの考えが、誰にでも当てはまるって思い込みはやめて。それが息苦しくて仕方ないって、どうして分かってくれないの」
「それが子どもだって言うのよ」
「子どもじゃない! 彼はちゃんと理解してくれてるんだから、これは私たちの問題であって、お父さんやお母さんは関係ないことなの」
いるはずもない恋人の理解を得てるからなんて、冷静になったら虚しい嘘だけど、結婚するのが幸せだとか、そういうのを押し付けられるのはもううんざりだ。
「瑞穂、お前、本当にそんな相手がいるのか」
「どういうこと?」
「お前にとって都合が良すぎるからだよ。そんなワガママを受け入れるなんて、相手の男はどうかしてる」
「そうよね。お母さんもそう思う。本当は恋人なんかいないんじゃないの? まあ、いたとしてもろくな人間じゃないわね」
そんな風に吐き捨てられて、このままではなにを言っても平行線で、理解を得ることは出来ないことを再確認する。
きっとこの場にエルバがいたとしても、この二人を言いくるめるのは不可能に近いだろう。
そう思うとエルバを心から心配して、私の親にまで心を向けてくれたエルバのご両親が、どれだけ素晴らしい人たちなのか、羨ましさと情けなさで悔しくなってくる。
「知りもしないくせに、勝手なこと言わないで」
「瑞穂、父さんたちはお前のことを思ってだな」
「なにが私のためなの。誰が、いつ、結婚相手を紹介してくれって頼んだの? 結婚することが幸せかどうかなんて私が決めることでしょ」
「じゃあ一生独りで生きていく覚悟があるの?」
父と私の間に割って入った母の言葉に、そうだと答えれば両親は満足して納得するんだろうか。
これから先、なんの干渉もなく、結婚してれば苦労しなくて済んだのになんて、ありふれた嘲笑のような罵声を聞くこともないんだろうか。
「とにかく、自分のことは自分で決めるから。もう勝手なことしないで」
吐き捨ててバッグを肩にかけると、まだなにか声をかけてくる両親の声を無視して家を飛び出した。
これではなにも解決しない。それは分かってる。
でも、結婚しないことがそんなにダメなことなんだろうか。
好きでもない相手と、義務的にお見合いして家庭を持つことが幸せにつながると、うちの両親は本気で思っているんだろうか。
「なんで分かってくれないのかな」
私の幸せは、私にしか作れない。
どうしてうちの両親は、自分たちの型にはめたがるのだろうか。
好きな仕事をして、夢を持ってそれに向かって努力してることすら否定された気がして、結婚しない程度のことで、私自身の全てを否定されているようで苦しくなる。
(どうして、こうなっちゃうのかな)
憂鬱な気持ちのまま電車に揺られ、ようやく自宅に着いた頃には、両親から届いたメッセージを読む気にもなれず、すぐに着替えてベッドに潜り込んだ。
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