22 / 87
7.模擬デート②
しおりを挟む
【おはよう。寝坊しなかったみたいだね】
昨夜一緒に過ごしたせいか、メッセージは自動的に脳内でエルバの声になって音声再生される。
それをなんだか不思議だなと思いながらも、続いて届いた文面を確認してメッセージを返す。
エルバは部屋まで迎えに来てくれるらしく、勝手にチェックアウトを済ませるなと釘を刺されてしまったので、大人しく言うことを聞くことにする。
ヘアスタイルは散々悩んだけど、ヘアアイロンもないのでハーフアップはやめて、毛先を編み込んでからほぐして、緩やかにシニヨンにしてまとめることにした。
「この服と全然噛み合ってないな」
鏡に映った自分に苦笑すると、今日買うべき洋服をなんとなく想像する。
あまりフォーマルすぎず、かと言ってカジュアルでもない服装となると、ワンピースかオフィスカジュアル寄りの服になるだろうか。
自分で考えてもよく分からないので、スマホの検索を使って『恋人の両親への挨拶、服装、三十代』と入力して画像を色々とチェックする。
「なるほど。ワンピースよりセットアップかな。ブラウスにパンツスタイルでも大丈夫そうだな。あ、靴も買わないとダメだ」
画面をスクロールさせてさまざまなコーデを確認しているうちに、あっという間に時間が経っていたらしい。
再びドアチャイムが鳴ってビクッとすると、今度はドアの向こうにエルバが立っていた。
「はい。今開けます」
「おはよう。ゆっくり眠れた?」
「どうかな。緊張してたのか、寝たの明け方なんだよね」
「そうだったんだ。でもお腹は減ってたみたいだね」
テーブルに載ったままの食器を見て、エルバは楽しげに笑う。
(ちくしょう。朝から眩しいんだよ、その笑顔)
オフホワイトのカットソーにネイビーのジャケットを羽織り、グレーのスラックスと足元の黒い革靴はウイングチップ。
昨日は割とラフな格好だったので、エルバもそれなりにかっちりめのファッションを選んできたということだろうか。
「俺、なんか変?」
「いや。昨日とは違うなと思って」
「今日はデートだからね。オシャレしてきたよ」
「また。すぐそうやってふざける」
ゆうべのこともあるので、うっかりエルバのペースに乗せられないように受け流す。
そして雑談を続けながら、忘れ物がないか確認を済ませると、バッグにスマホを入れて支度を終えた。
「よし。準備出来たよ」
「じゃあ行こうか」
二人で部屋を出ると、エレベーターを待つ間にヘアスタイルの話になる。
「今日は髪をまとめてるんだね」
「うん。後でセットするのも大変だから、これに合わせた服を選ぶ感じかな」
「その格好も可愛いけどね」
「ご挨拶向きじゃないと思うよ」
到着したエレベーターに乗り込んで一階に降りると、エルバは私にロビーで待っていて欲しいと言って、コンシェルジュの所へ向かっていった。
その様子を何気なく見ていると、握手をして楽しげに話しているので、彼がエルバの言っていた伝手ということだろうか。
そしてそのままエルバはコンシェルジュの男性と談笑しながらフロントへ行き、チェックアウトの手続きを済ませているらしかった。
「ここで走っていくのは無粋か。後で精算しないとな」
お詫びだからとホテルの宿泊費に関しては気にしなくていいと言われているけれど、さすがに言葉そのままを受け入れる訳にはいかない。
そしてロビーを見渡して待っていると、いつの間にか全てを終えたエルバが私の元に戻ってきた。
「よし。じゃあ行こうか」
「後で精算するから、ちゃんと払わせてよね」
昨夜一緒に過ごしたせいか、メッセージは自動的に脳内でエルバの声になって音声再生される。
それをなんだか不思議だなと思いながらも、続いて届いた文面を確認してメッセージを返す。
エルバは部屋まで迎えに来てくれるらしく、勝手にチェックアウトを済ませるなと釘を刺されてしまったので、大人しく言うことを聞くことにする。
ヘアスタイルは散々悩んだけど、ヘアアイロンもないのでハーフアップはやめて、毛先を編み込んでからほぐして、緩やかにシニヨンにしてまとめることにした。
「この服と全然噛み合ってないな」
鏡に映った自分に苦笑すると、今日買うべき洋服をなんとなく想像する。
あまりフォーマルすぎず、かと言ってカジュアルでもない服装となると、ワンピースかオフィスカジュアル寄りの服になるだろうか。
自分で考えてもよく分からないので、スマホの検索を使って『恋人の両親への挨拶、服装、三十代』と入力して画像を色々とチェックする。
「なるほど。ワンピースよりセットアップかな。ブラウスにパンツスタイルでも大丈夫そうだな。あ、靴も買わないとダメだ」
画面をスクロールさせてさまざまなコーデを確認しているうちに、あっという間に時間が経っていたらしい。
再びドアチャイムが鳴ってビクッとすると、今度はドアの向こうにエルバが立っていた。
「はい。今開けます」
「おはよう。ゆっくり眠れた?」
「どうかな。緊張してたのか、寝たの明け方なんだよね」
「そうだったんだ。でもお腹は減ってたみたいだね」
テーブルに載ったままの食器を見て、エルバは楽しげに笑う。
(ちくしょう。朝から眩しいんだよ、その笑顔)
オフホワイトのカットソーにネイビーのジャケットを羽織り、グレーのスラックスと足元の黒い革靴はウイングチップ。
昨日は割とラフな格好だったので、エルバもそれなりにかっちりめのファッションを選んできたということだろうか。
「俺、なんか変?」
「いや。昨日とは違うなと思って」
「今日はデートだからね。オシャレしてきたよ」
「また。すぐそうやってふざける」
ゆうべのこともあるので、うっかりエルバのペースに乗せられないように受け流す。
そして雑談を続けながら、忘れ物がないか確認を済ませると、バッグにスマホを入れて支度を終えた。
「よし。準備出来たよ」
「じゃあ行こうか」
二人で部屋を出ると、エレベーターを待つ間にヘアスタイルの話になる。
「今日は髪をまとめてるんだね」
「うん。後でセットするのも大変だから、これに合わせた服を選ぶ感じかな」
「その格好も可愛いけどね」
「ご挨拶向きじゃないと思うよ」
到着したエレベーターに乗り込んで一階に降りると、エルバは私にロビーで待っていて欲しいと言って、コンシェルジュの所へ向かっていった。
その様子を何気なく見ていると、握手をして楽しげに話しているので、彼がエルバの言っていた伝手ということだろうか。
そしてそのままエルバはコンシェルジュの男性と談笑しながらフロントへ行き、チェックアウトの手続きを済ませているらしかった。
「ここで走っていくのは無粋か。後で精算しないとな」
お詫びだからとホテルの宿泊費に関しては気にしなくていいと言われているけれど、さすがに言葉そのままを受け入れる訳にはいかない。
そしてロビーを見渡して待っていると、いつの間にか全てを終えたエルバが私の元に戻ってきた。
「よし。じゃあ行こうか」
「後で精算するから、ちゃんと払わせてよね」
1
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる