嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-

文字の大きさ
上 下
11 / 87

4.オフ会②

しおりを挟む
 そうこうしてるうち、電車を乗り換えて車窓の景色が変わっていく度に雨足が強くなり、プレイリストの音楽が一周した頃、ようやく集合場所の最寄駅に到着して電車を降りた。
「めっちゃ降ってる。もはや豪雨」
 駅のホームで荷物を抱え直すと、いつの間にかスマホにメッセージが届いていることに気付いて内容を確認する。
【凄い雨だから駅まで迎えにいく】
 三十分ほど前に届いていたタラントさんからのありがたい申し出に、今気付きましたと慌ててメッセージを返すと、改札を出て駅構内のコンビニでビニール傘を買う。
「今着いたんだけど、大丈夫かな」
 券売機が並ぶ通路の端に立ち止まって、タラントさんに今駅に到着したとメッセージを打つと、既に駅前のロータリーに車を停めて待っているらしい。
 駅のどちら側がロータリーなのか確認すると、早速駅を出てタラントさんに特徴を教えてもらった車を探す。
 買ったばかりのビニール傘が早速役に立ってホッとしながらも、陽が落ちて悪天候の中ロータリーに停車している車は邪魔になるだろうし、水たまりを蹴って足早に進む。
 そんな中、不意にフロントライトでシグナルを出す車を見つけて駆け寄ると、車内のライトをつけたタラントさんが、中から手を振って私を呼んでいるのが見えた。
『後ろの席に乗って』
 ジェスチャーで後部座席に乗るように指示しているのが見えて、ドアに手をかけると傘を畳みながら車に乗り込んだ。
「タラントさん、お久しぶりです。メッセージ気付かなくてすみません。めっちゃ待たせたんじゃないですか」
「おー。ロッソとこうして会うのは久々だね。そんなに待ってないから全然大丈夫だよ。とりあえず車出すね」
 車内のライトを消すと、タラントさんはすぐに車をロータリーから移動させて、今日のオフ会をする場所まで移動すると言う。
「そういえば言い忘れてたけど、今日は店じゃなくてレンタルスペースなんだよ」
「レンタルスペース、ですか」
「うん。なんかエルバの知り合いが新しく始めたらしくて、使い勝手とか遠慮なく教えて欲しいって」
「へえ」
「先に行ってるエルバが料理作って待ってるよ」
「え、そうなんですか」
 初めて会うというのに、そんなことを任せっきりにしてしまって良いんだろうか。
「材料は俺が買っといた。ロッソが好きな肉もね」
「やった! でも至れり尽くせりで、なんだか申し訳ないですね」
「いいのいいの。俺らが好きでやってることだから」
「あれ? でもタラントさん、車の運転あるなら飲めないですよね」
「大丈夫。俺の家の近くだから、ロッソ送ったら一回車置いてくる」
「わざわざありがとうございます」
「いいよ。こんなに雨降ると思ってなかったからさ」
「ですよね。こんなに天気が崩れるとは思ってなかったです」
 そんな会話をしているうちに、今日の会場になるレンタルスペースに到着すると、そこは住宅街にある普通の一軒家でちょっと驚いた。
 一旦ガレージに車を停めて、タラントさんと二人で車を降りると、エルバが待つ家の中に入る。
「エルバ、ロッソ連れて来たぞ」
 タラントさんを追って廊下を抜けると、ドアの向こうは広々としたリビングで、天井が高くて一気に視界が開ける。
「やあ、いらっしゃい」
 にっこり笑う男性は、料理中で手が離せないらしく、小さく手を振ってからソファーに座って待っていろと、挨拶もそこそこに作業に戻ってしまう。
(ここにいるってことは、あの人がエルバなの?)
 キッチンに立つ男性を見てちょっと驚いてしまう。
 一八〇センチ以上ありそうな長身に、短めに整えられた黒髪は癖毛なのか緩く波打っている。
 なによりも驚いたのは、どこかで見た気がするのに、会ったことがあるはずがないと思うほどハッとするほど美しい顔立ち。そして想像より圧倒的に見た目が若い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

純白の檻からの解放~侯爵令嬢アマンダの白い結婚ざまあ

ゆる
恋愛
王太子エドワードの正妃として迎えられながらも、“白い結婚”として冷遇され続けたアマンダ・ルヴェリエ侯爵令嬢。 名ばかりの王太子妃として扱われた彼女だったが、財務管理の才能を活かし、陰ながら王宮の会計を支えてきた。 しかしある日、エドワードは愛人のセレスティーヌを正妃にするため、アマンダに一方的な離縁を言い渡す。 「君とは何もなかったのだから、問題ないだろう?」 さらに、婚儀の前に彼女を完全に葬るべく、王宮は“横領の罪”をでっち上げ、アマンダを逮捕しようと画策する。 ――ふざけないで。 実家に戻ったアマンダは、密かに経営サロンを立ち上げ、貴族令嬢や官吏たちに財務・経営の知識を伝授し始める。 「王太子妃は捨てられた」? いいえ、捨てられたのは無能な王太子の方でした。 そんな中、隣国ダルディエ公国の公爵代理アレクシス・ヴァンシュタインが現れ、彼女に興味を示す。 「あなたの実力は、王宮よりももっと広い世界で評価されるべきだ――」 彼の支援を受けつつ、アマンダは王宮が隠していた財務不正の証拠を公表し、逆転の一手を打つ! 「ざまあみろ、私を舐めないでちょうだい!」

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

処理中です...