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4.オフ会②
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そうこうしてるうち、電車を乗り換えて車窓の景色が変わっていく度に雨足が強くなり、プレイリストの音楽が一周した頃、ようやく集合場所の最寄駅に到着して電車を降りた。
「めっちゃ降ってる。もはや豪雨」
駅のホームで荷物を抱え直すと、いつの間にかスマホにメッセージが届いていることに気付いて内容を確認する。
【凄い雨だから駅まで迎えにいく】
三十分ほど前に届いていたタラントさんからのありがたい申し出に、今気付きましたと慌ててメッセージを返すと、改札を出て駅構内のコンビニでビニール傘を買う。
「今着いたんだけど、大丈夫かな」
券売機が並ぶ通路の端に立ち止まって、タラントさんに今駅に到着したとメッセージを打つと、既に駅前のロータリーに車を停めて待っているらしい。
駅のどちら側がロータリーなのか確認すると、早速駅を出てタラントさんに特徴を教えてもらった車を探す。
買ったばかりのビニール傘が早速役に立ってホッとしながらも、陽が落ちて悪天候の中ロータリーに停車している車は邪魔になるだろうし、水たまりを蹴って足早に進む。
そんな中、不意にフロントライトでシグナルを出す車を見つけて駆け寄ると、車内のライトをつけたタラントさんが、中から手を振って私を呼んでいるのが見えた。
『後ろの席に乗って』
ジェスチャーで後部座席に乗るように指示しているのが見えて、ドアに手をかけると傘を畳みながら車に乗り込んだ。
「タラントさん、お久しぶりです。メッセージ気付かなくてすみません。めっちゃ待たせたんじゃないですか」
「おー。ロッソとこうして会うのは久々だね。そんなに待ってないから全然大丈夫だよ。とりあえず車出すね」
車内のライトを消すと、タラントさんはすぐに車をロータリーから移動させて、今日のオフ会をする場所まで移動すると言う。
「そういえば言い忘れてたけど、今日は店じゃなくてレンタルスペースなんだよ」
「レンタルスペース、ですか」
「うん。なんかエルバの知り合いが新しく始めたらしくて、使い勝手とか遠慮なく教えて欲しいって」
「へえ」
「先に行ってるエルバが料理作って待ってるよ」
「え、そうなんですか」
初めて会うというのに、そんなことを任せっきりにしてしまって良いんだろうか。
「材料は俺が買っといた。ロッソが好きな肉もね」
「やった! でも至れり尽くせりで、なんだか申し訳ないですね」
「いいのいいの。俺らが好きでやってることだから」
「あれ? でもタラントさん、車の運転あるなら飲めないですよね」
「大丈夫。俺の家の近くだから、ロッソ送ったら一回車置いてくる」
「わざわざありがとうございます」
「いいよ。こんなに雨降ると思ってなかったからさ」
「ですよね。こんなに天気が崩れるとは思ってなかったです」
そんな会話をしているうちに、今日の会場になるレンタルスペースに到着すると、そこは住宅街にある普通の一軒家でちょっと驚いた。
一旦ガレージに車を停めて、タラントさんと二人で車を降りると、エルバが待つ家の中に入る。
「エルバ、ロッソ連れて来たぞ」
タラントさんを追って廊下を抜けると、ドアの向こうは広々としたリビングで、天井が高くて一気に視界が開ける。
「やあ、いらっしゃい」
にっこり笑う男性は、料理中で手が離せないらしく、小さく手を振ってからソファーに座って待っていろと、挨拶もそこそこに作業に戻ってしまう。
(ここにいるってことは、あの人がエルバなの?)
キッチンに立つ男性を見てちょっと驚いてしまう。
一八〇センチ以上ありそうな長身に、短めに整えられた黒髪は癖毛なのか緩く波打っている。
なによりも驚いたのは、どこかで見た気がするのに、会ったことがあるはずがないと思うほどハッとするほど美しい顔立ち。そして想像より圧倒的に見た目が若い。
「めっちゃ降ってる。もはや豪雨」
駅のホームで荷物を抱え直すと、いつの間にかスマホにメッセージが届いていることに気付いて内容を確認する。
【凄い雨だから駅まで迎えにいく】
三十分ほど前に届いていたタラントさんからのありがたい申し出に、今気付きましたと慌ててメッセージを返すと、改札を出て駅構内のコンビニでビニール傘を買う。
「今着いたんだけど、大丈夫かな」
券売機が並ぶ通路の端に立ち止まって、タラントさんに今駅に到着したとメッセージを打つと、既に駅前のロータリーに車を停めて待っているらしい。
駅のどちら側がロータリーなのか確認すると、早速駅を出てタラントさんに特徴を教えてもらった車を探す。
買ったばかりのビニール傘が早速役に立ってホッとしながらも、陽が落ちて悪天候の中ロータリーに停車している車は邪魔になるだろうし、水たまりを蹴って足早に進む。
そんな中、不意にフロントライトでシグナルを出す車を見つけて駆け寄ると、車内のライトをつけたタラントさんが、中から手を振って私を呼んでいるのが見えた。
『後ろの席に乗って』
ジェスチャーで後部座席に乗るように指示しているのが見えて、ドアに手をかけると傘を畳みながら車に乗り込んだ。
「タラントさん、お久しぶりです。メッセージ気付かなくてすみません。めっちゃ待たせたんじゃないですか」
「おー。ロッソとこうして会うのは久々だね。そんなに待ってないから全然大丈夫だよ。とりあえず車出すね」
車内のライトを消すと、タラントさんはすぐに車をロータリーから移動させて、今日のオフ会をする場所まで移動すると言う。
「そういえば言い忘れてたけど、今日は店じゃなくてレンタルスペースなんだよ」
「レンタルスペース、ですか」
「うん。なんかエルバの知り合いが新しく始めたらしくて、使い勝手とか遠慮なく教えて欲しいって」
「へえ」
「先に行ってるエルバが料理作って待ってるよ」
「え、そうなんですか」
初めて会うというのに、そんなことを任せっきりにしてしまって良いんだろうか。
「材料は俺が買っといた。ロッソが好きな肉もね」
「やった! でも至れり尽くせりで、なんだか申し訳ないですね」
「いいのいいの。俺らが好きでやってることだから」
「あれ? でもタラントさん、車の運転あるなら飲めないですよね」
「大丈夫。俺の家の近くだから、ロッソ送ったら一回車置いてくる」
「わざわざありがとうございます」
「いいよ。こんなに雨降ると思ってなかったからさ」
「ですよね。こんなに天気が崩れるとは思ってなかったです」
そんな会話をしているうちに、今日の会場になるレンタルスペースに到着すると、そこは住宅街にある普通の一軒家でちょっと驚いた。
一旦ガレージに車を停めて、タラントさんと二人で車を降りると、エルバが待つ家の中に入る。
「エルバ、ロッソ連れて来たぞ」
タラントさんを追って廊下を抜けると、ドアの向こうは広々としたリビングで、天井が高くて一気に視界が開ける。
「やあ、いらっしゃい」
にっこり笑う男性は、料理中で手が離せないらしく、小さく手を振ってからソファーに座って待っていろと、挨拶もそこそこに作業に戻ってしまう。
(ここにいるってことは、あの人がエルバなの?)
キッチンに立つ男性を見てちょっと驚いてしまう。
一八〇センチ以上ありそうな長身に、短めに整えられた黒髪は癖毛なのか緩く波打っている。
なによりも驚いたのは、どこかで見た気がするのに、会ったことがあるはずがないと思うほどハッとするほど美しい顔立ち。そして想像より圧倒的に見た目が若い。
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