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4.オフ会①

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 あれから何度かゲーム内で一緒にプレイすることが増えて、エルバと会話することに緊張や抵抗は薄れて来たと思う。
「どうしたの。なんか元気なくない?」
 ランチ終わりの更衣室で帰り支度をしていると、入れ替わりで遅番勤務のために着替えをしている同僚に声をかけられた。
「いや、そんなことないよ」
「そう? ならいいんだけど。今日はオフ会だっけ」
「そうなんだー。めっちゃ楽しみよ。肉だよ、肉!」
「よそで食べる肉は格段に美味しいよね。それにしても凄いよね、なんだっけ? ゲーム仲間だっけ」
「そうそう」
「実際に会うとか、本当コミュ力高いよね」
「そうでもないよ」
 今夜は三人でのオフ会。つまりエルバと直接会う日。
 エルバと最初に会話してから半月ほどが経ち、タラントさんを含めた三人の予定がようやく合う。
 そもそも私がシフト制の勤務なので、会社員で土日が主に休みの二人とは予定が合わせづらいのが原因で、なかなか予定が合わせられなかった。
 そこをなんとか土日で連休を取ることが出来たのは、先日視察に来た本社の方からの反応がよく、私への評価が高かったことも少なからず影響している。
「じゃあ、楽しい週末をね」
「うん。ありがとう」
 同僚が先に更衣室を出ると、私は改めてスマホを手に取ってタラントさんからのメッセージを確認し、少しだけ重たい気持ちのまま溜め息を吐く。
 都内といっても郊外のここからだと、集合場所に到着するまでに二時間近くかかる。
 移動にそこまでの時間がかかることも気が重い理由ではあるけれど、終電に間に合う時間に解散になるのか分からないので、ホテルの手配はしていないのも面倒で不安だったりする。
 最悪の場合、週末とはいえ駅近くのビジネスホテルか、カプセルホテルなら予約はしてないけど一部屋くらいの空きはあるだろうから、どうにかするしかない。
「さて。行きますか」
 ホテルを出て手配していたタクシーに乗り込むと、昼過ぎまで心地好い晴れ間が広がっていたはずなのに、窓から見上げる空模様が曇って来た。
 タラントのさんの希望を叶えるために、何本かワインを見繕って来たので大荷物になってしまったけれど、向こうは雨でも降ってるんだろうか。
 天気予報をチェックし忘れていたことにゲンナリしつつ、スマホで調べてみると集合場所では既に雨が降ってることを知り、折り畳み傘を忘れてしまった自分を呪いたくなった。
(どこかで傘買わないとな)
 久々に仕事以外で人に会うので、今日は少しだけオシャレして、アイボリーのシアーインナーに、黒いVネックのチュニック丈のワンピースを重ね、ボトムはスキニーデニム。
 それだけだと肌寒いので、上着にライダースジャケットを羽織って、足元はエンジニアブーツにした。
 向かう先が雨なので、ブーツを履いて来て正解だったかもしれない。
 駅に到着すると、予定よりも一本早い電車に乗り込んで、ドアに近い席に腰を下ろし、バッグから取り出したイヤホンを着けて読みかけの本を手に取る。
 ソムリエという仕事柄、表現力を試される場面は多く、読書だけじゃなくて映画やドラマ、アニメからでも学ぶことは多い。だから雑食気味に様々なインプットは怠らない。
 まあでも半分は趣味で、実際のところゲストにワインの味を説明する際に、詩的な表現を使うことは私の場合は極端に少ない。
 稀にワインに詳しいお客様がお見えになることはあるけれど、基本的には分かりやすく、オレンジの香りに近い爽やかさだとか、かなり砕いた表現を心がけていたりする。
 だけど本を読んだり、映画やドラマを見たりすることで、会話のテンポだったり間の取り方なんかはバリエーションが増えていると思いたい。
(何が仕事に関連してくるか分からないもんね)
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