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3.気の重い約束①
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目を覚ますと少し部屋がひんやりしていて、カーテンの向こうで雨粒が窓を叩く音がする。
「あれ、今日雨なのかな」
枕元のスマホを手に取ると既に十時半を過ぎていて、昨夜は明け方にようやく眠ったことと、今日の約束を思い出した。
「洗濯物どうしよう」
ベッドから起き上がると、顔を洗って洗濯機を回し、部屋干し用の物干しをクローゼットから取り出して組み立てる。
そしてそのまま勢いで部屋中にフロアモップをかけ、パンを焼いて簡単に朝食を済ませた。
「洗濯物干したらゲームしようかな」
十日ぶりにもらったせっかくの休みなんだから、モヤモヤしてても仕方ない。
気持ちを切り替えて洗濯物を干すと、乾きやすいようにサーキュレーターを回して風を当てる。
そして改めて机に向かうとパソコンを立ち上げて、遊びたくて仕方なかった〈グラズヘイム〉にユーザーIDとパスワードを打ち込み、決意を込めてエンターキーを叩いた。
デイリークエストの魔物討伐や物資調達を終えると、昨日の続きで新エリアの探索をしながらゲームを進めていく。
新規マップが実装されたことで、メインシナリオも開放されて、今まで受注出来なかったクエストがいくつも発生したのでやり込み要素はかなり増えた。
仕事以外、ほとんどこのゲームに時間を費やしてる私にとって、やっぱり〈グラズヘイム〉をプレイするのは一番楽しい過ごし方だ。
そしてゲームに没頭していると、あっという間に時間が経ったらしく、念の為にセットしていたアラームが鳴って、慌ててベッドの枕元に置いたままだったスマホを手に掴む。
「もう十二時半か」
エルバさんとはゲーム内でやり取りをしたことがないから、フレンド登録をしていない。だから向こうがオンラインでプレイしていても、リストからログイン状況を判断できない。
キリの良いところまでゲームを進めると、ワープポータルを使ってギルドの拠点に引き返し、エルバさんがログインするのを待つことにした。
「どうしよう。錬成でもして時間潰しとこうかな」
具体的に何時と決めなかったことを後悔しつつ、新素材を使って装備や武器を作ることにすると、しばらくしてオープンチャットにメッセージが届いた。
【ロッソだ! おつー】
素材の錬成画面を開いていたので、ギルドの中の様子が分かってなかったけれど、いつの間にかギルドメンバーがゲームにログインして来ていたらしい。
今日が週末だからか、ギルドにはたくさんのメンバーが揃っていて、しばらくの間お互いの近況を話したりして、実装された新エリアの話で盛り上がってしまった。
「うわ、やば。十四時過ぎてる」
すっかりエルバさんとの約束を忘れ、他のメンバーとの会話に夢中になってしまっていた。
だけどギルドの拠点にエルバさんの姿はなく、どこかホッとして錬成の続きをしようと画面を開くと、またオープンチャットにメッセージが来た。
【こんにちは】
メッセージの送り主をよく見るとエルバさんだ。
慌てて錬成画面を閉じてギルドを見回すと、中央の休憩スペースでソファーに座って片手をあげるエルバさんの姿があった。
「私も手を振るアクションしとこうかな」
こんにちはと打ち込み、アバターに手を振らせて近付くと、エルバさんのアバターも立ち上がって頭を下げるアクションをしている。
【タラントに聞きました。先にフレンド登録しますか】
「よろしくお願いします。っと」
メッセージを打ち込んでフレンド申請すると、エルバさんはすぐに承認してくれて、ようやく個別チャットが開けるようになった。
【ボイチャ出来ますか?】
「あれ、今日雨なのかな」
枕元のスマホを手に取ると既に十時半を過ぎていて、昨夜は明け方にようやく眠ったことと、今日の約束を思い出した。
「洗濯物どうしよう」
ベッドから起き上がると、顔を洗って洗濯機を回し、部屋干し用の物干しをクローゼットから取り出して組み立てる。
そしてそのまま勢いで部屋中にフロアモップをかけ、パンを焼いて簡単に朝食を済ませた。
「洗濯物干したらゲームしようかな」
十日ぶりにもらったせっかくの休みなんだから、モヤモヤしてても仕方ない。
気持ちを切り替えて洗濯物を干すと、乾きやすいようにサーキュレーターを回して風を当てる。
そして改めて机に向かうとパソコンを立ち上げて、遊びたくて仕方なかった〈グラズヘイム〉にユーザーIDとパスワードを打ち込み、決意を込めてエンターキーを叩いた。
デイリークエストの魔物討伐や物資調達を終えると、昨日の続きで新エリアの探索をしながらゲームを進めていく。
新規マップが実装されたことで、メインシナリオも開放されて、今まで受注出来なかったクエストがいくつも発生したのでやり込み要素はかなり増えた。
仕事以外、ほとんどこのゲームに時間を費やしてる私にとって、やっぱり〈グラズヘイム〉をプレイするのは一番楽しい過ごし方だ。
そしてゲームに没頭していると、あっという間に時間が経ったらしく、念の為にセットしていたアラームが鳴って、慌ててベッドの枕元に置いたままだったスマホを手に掴む。
「もう十二時半か」
エルバさんとはゲーム内でやり取りをしたことがないから、フレンド登録をしていない。だから向こうがオンラインでプレイしていても、リストからログイン状況を判断できない。
キリの良いところまでゲームを進めると、ワープポータルを使ってギルドの拠点に引き返し、エルバさんがログインするのを待つことにした。
「どうしよう。錬成でもして時間潰しとこうかな」
具体的に何時と決めなかったことを後悔しつつ、新素材を使って装備や武器を作ることにすると、しばらくしてオープンチャットにメッセージが届いた。
【ロッソだ! おつー】
素材の錬成画面を開いていたので、ギルドの中の様子が分かってなかったけれど、いつの間にかギルドメンバーがゲームにログインして来ていたらしい。
今日が週末だからか、ギルドにはたくさんのメンバーが揃っていて、しばらくの間お互いの近況を話したりして、実装された新エリアの話で盛り上がってしまった。
「うわ、やば。十四時過ぎてる」
すっかりエルバさんとの約束を忘れ、他のメンバーとの会話に夢中になってしまっていた。
だけどギルドの拠点にエルバさんの姿はなく、どこかホッとして錬成の続きをしようと画面を開くと、またオープンチャットにメッセージが来た。
【こんにちは】
メッセージの送り主をよく見るとエルバさんだ。
慌てて錬成画面を閉じてギルドを見回すと、中央の休憩スペースでソファーに座って片手をあげるエルバさんの姿があった。
「私も手を振るアクションしとこうかな」
こんにちはと打ち込み、アバターに手を振らせて近付くと、エルバさんのアバターも立ち上がって頭を下げるアクションをしている。
【タラントに聞きました。先にフレンド登録しますか】
「よろしくお願いします。っと」
メッセージを打ち込んでフレンド申請すると、エルバさんはすぐに承認してくれて、ようやく個別チャットが開けるようになった。
【ボイチャ出来ますか?】
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