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ナニー

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先日18歳になったばかりのアシュは、長い長い廊下を歩いていた。


周囲から、よくカワイイと評される顔を曇らせながら。


回りには、見た事も無い様な立派な絵画や壺、騎士の甲冑、動物の剥製などが飾られ、前にはこの城の極めて冷静そうな一人の役人が無言で歩いて先導している。


さっきまで他の階には沢山の騎士や使用人が居たのに、この部屋数だけでもかなりの5階だけが、恐ろしい位に人が居なくてただただ静かだ。


アシュはこの状況に、やはり来るべきでは無かったと本当に後悔した。


自分如き平民の少年が、いくら病気の実母の為とは言え、先日産まれたばかりのこの国の王子様の乳母になるなんてと…


実は、アシュは、男であるのに、しかも子供も産んでいないのに、
それ所か童貞ですらあるのに、その乳首から乳が出た。


それが始まって慌てて町医者に相談したら、この世界では稀にいるから心配無いと言われ、数日後、アシュの家が生活に困窮していると分かっていた老医師は、アシュにこんな仕事があるがどうかと言ってきて、悩んだが結局受けてしまった。


(やっぱり…恐れ多い…今からでも断るべきだ…こんな所では働けな
い…)


ぐるぐると考えている内に、役人があるドアの前で立ち止まってしまいノックした。


「入れ!」


低く力のある、しかし甘い、若い男の声がした。


アシュは、きっとこれも中にいる
赤ちゃん王子様付きの役人の声だと思った。


「お待たせいたしました…御所望の男、アシュを連れ参りました…」


役人が豪華な金の装飾のドアを開け、アシュに背を向けたまま部屋の声の主に向い深く一礼した。


広い部屋のバルコニーに続く大きな窓の前で、椅子に足をふてぶてしく組んで座る声の主らしい大きな姿がアシュにも見えた。


声の主がこの人かと思いながら
も、強い窓からの逆光で顔が見えない。


「そちはもういい…アシュだけ置いて行け…」


部屋の声の主の一声に役人は又深
々と頭を下げて、だが、アシュには何か言う所か視線すら向けず、ただ淡々とこの場を去った。


その背筋の良い後ろ姿を不安気に見ていると、又部屋の声の主がアシュを呼んだ。


「何をしてる!さっさと入れ、アシュ!」


その声にビクっとしながら、アシュは、恐る恐る部屋に数歩足を踏みいれる。


しかし、やはり逆光で、声の主の顔はハッキリしない。


「さっさと扉を閉めて、もっとこっちへ来い!」


声に少し苛立ちが見え、アシュ
は、仕方無しに男にそっと近づく。


しかし、広い広い豪華な部屋に天蓋付きの大きなベッドが見えた
が、半透明のヴェールは上げられていて赤ちゃんの姿は見えない。


目の前の男は、やはり、自分の乳母としての適性を見定める為の役人なんだと思った瞬間、その彼の顔がアシュにハッキリ見えた。


形の良い引き締まった口元。


すっと通った高い鼻。


そして、いつぞや本で見た、遠い国に居ると言うライオンと言う生き物の絵の様に鋭い黒い双眼。


全てが整って美しい上に、逞しい雄の匂いと、ある種の気品が絶妙に上手く溶け合っている。


「!!!」


アシュの、驚きの声が詰まった。


以前見て、知ってる顔だったか
ら。


「ほぉー…お前、私が誰か知ってる様だな?」


そう言うと肘掛けに左肘を付きその腕の握った拳をこめかみに当てながら、くくっと男は眉を顰めているのに楽しそうに笑った。


アシュは、見間違いでは無いかと目を瞬かせると、やはり間違い無いと唇を震わせた。


「は…い…この国の第一王子…グレン様」


「そうだ…お前、何故知ってる?」


「以前、町の視察をされていた
時、遠くからですがお見掛けしました…」


「そうか…もっと、もっと傍に来い!」


「えっ!」


「もっと、傍へ来いと言ってい
る!」


何か異様な雰囲気を察したが、アシュが戸惑いながらゆっくり近づくと、グレンはカバっと突然立ち上がりアシュの左腕を取り、更に自分に近づけると自分は椅子に又座り言い放った。


「早速、乳を飲ませろ!」


「はっ?!えっ、あの…あの…先日お生まれになった弟君がおられませんが?…」


アシュが動揺して声を上擦らせると、くくっと、又グレンが喉で笑った。


「誰が、お前が弟の乳母だと言った?お前は、私の乳母になるん
だ!」


「はっ?えっ?!」


言われた事が理解出来ず、アシュは固まった。


そこに追い打ちをかけるように、グレンが両手でアシュの白のブラウスを、前ボタンをいちいち外すのが面倒くさいとばかりに一気に左右に引きちぎった。


「やっ!止めてください!」


アシュの叫びは、部屋の静寂に吸い込まれる。


そして、今度は右腕を取られ、座るグレンの膝上に跨らされた。


「あっ、やっ!」


有無を言わさず、グレンの右手が
アシュの左乳首を強く摘んだ。


ピュッと、白い乳が勢い良く飛
び、ビュッとグレンの右頬を濡らした。


余りの出来事にアシュが青ざめるとグレンは、顔を下に流れて行く乳を舌を出してペロリと舐めた。


カタカタと震え出すアシュの怯える瞳に、グレンが満足そうに微笑む顔が映った。












































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