深淵の幼なじみ

みゃー

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月の光(最終回)

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何だか、双子の葵と僚は…

僚は死者で葵は生者なのに…

言動からして逆のように至に見えた。

死しても弟の体にたまに憑依する霊の僚の方が明るくポジティブなのに…

その僚の命と引き換えに今もこの世に生かされている葵の方が、ネガティブだ。

でも、至は、小さな頃から如何に葵が優しい男か知っている。

だからきっと、葵が「二度と至と会わない」と言うのには、必ず理由があると思った。

「葵…どうして?どうして、俺と二度と会いたくないんだ?俺の事…もう嫌いになった?」

不思議だが至は小さな頃から、僚といる時より、葵といると葵に素直に甘える癖があり、喋り方も僚の時と少し違った。

至が昔と変わらない喋り方で甘えるように言うので…

葵はしどろもどろになった。

「えっ…その…あの…それは…」

「葵…俺の事、嫌い?」

「…」

「葵…答えて…」

至は、葵の左手の包帯ごと両手を握った。

「至…俺は…」

「俺は…何?…」

目を逸らす葵に、至が畳みかけるように葵の顔を覗き込んだ。

何故か顔が赤い葵は急に至の方を見て、葵にしては珍しく大声で叫んだ。

「俺と、俺と一緒にいると、至に迷惑がかかる!俺の変な力や、僚の事もあるし、僚の変な力もあるし!至が俺と一緒にいたら、きっとこれから変な事に巻き込まれる事もあるんだよ!」

興奮気味にひとしきり言い終わった葵だったが、その葵を、至はすぐ正面から強く抱き締めた。

背が葵の方が大きいから、なんだか至が抱きついている風にしか見えないが…

「い…至?!はっ、離してくれ!」

葵はビックリしたが、酷く拒絶したり逃げようとしなかった。

至はそれを見て、更に葵を抱く腕に力を込めた。

「離さ無い!もう離さない!葵!葵が俺が嫌いじゃないなら、俺、お前の傍にいる!これから何が起こっても俺、お前の傍にいて、お前を守りたい!」

「至…」

葵は一瞬びっくりしたが、やがて瞳を閉じて、至の言葉を受け入れて至を抱き返した。

「いいのか?俺で本当にいいのか?」

葵が静かに聞いた。

「いいよ。俺、葵と一緒にいたい…」

やっと、やっと、葵と元の関係に戻れたと至は安堵したが…

「テメェ!至!何、葵を守ってやるなんて偉そうな事抜かしてんだよ!」

急に葵の体に僚が戻った。

「いででででっ!僚!止めろ!止めろって!」

僚はその場で、至にプロレス業の卍固めをかけてきた。

「痛い!止めろ!止めろ!僚ぉー!」

至は藻掻いたが、なんだか僚と葵と、懐かしい小学生の頃に戻れたみたいで内心嬉しかった。

結局その後至は、葵でなく僚と山を降りた。

そして、僚は葵にスウィッチし…

至の家で食事をして泊まる事になり、至の両親に葵の正体がバレないよう注意しながら、僚と葵と夜遅くまで代わる代わるで楽しく積もる話しをした。

だが、そんな、至が葵と僚と過ごしていた同時刻の夜遅く…

あの廃別荘に向かう山の獣道を、
何かが這う音がする…

ズ…ズズズ…ズズズ……

やがて、雲にかくれていた丸い月の明るい光が、その這う音の正体を照らす。

それは、あの警官が言っていた、
赤いリュックサックだった。

奇妙な事にこの赤いリュックサックは、ひとりでに獣道をゆっくり這っていた。

そして、リュックの少し空いた上部の物の出し入れ口から、リュックの中にある爛爛と光る2つの目が外を覗き、同じ所から、女性らしき血塗れの腕が一本外に飛び出ていた。

ズ…ズズズ…ズ…ズズズ…

赤いリュックはやがて、あの廃別荘の前へ来て中に入った。

廃別荘の中では、月の光に照らされながら、あの黄色のワンピースの少女の霊が、元の美少女の姿で、あの窓際から月を穏やかに眺めていた。

この廃別荘が壊される日が近いので、こうして、ここから後何回月を眺める事が出来るだろうと思いながら…

だが…

ズ…ズズズ…ズ…ズズズ…

美少女の霊は、何かが廃別荘の中を這って、こちらに来ている事に気付き、振り返った。

やがて少女は、自分のいる部屋に入ってきたリュックサックに驚愕したが…

次の瞬間、そのリュックサックが、美少女に向かって飛びかかって襲いかかって来た。

少女は、床に倒れた。

「きゃー!!!」

夜の廃別荘に、美少女の叫び声が響いた。

どれ位時間が経ったか…

美少女は、やがて何も無かったように立ち上がった。

しかし…

月の光だけの暗闇で、ニヤリと笑った少女の顔は、別人のように凶悪で凶暴になり果てていた。

少女は、赤いリュックサックにいた中身に、体と全てを乗っ取られてしまった。

それから二か月後…

至と葵、僚の耳に、あの廃別荘の取り壊し作業中に事故が多発し、作業員のケガや死亡が続出していると言う…

それにより、廃別荘の取り壊しが中止になったと言う思ってもみなかった噂が耳に入った。

そして…

至と葵、僚が、又とある事情で廃別荘に関わる事になるのは、噂を聞いてすぐの事だった。


END


お時間があれば、この最終回の読み終わり、ドビュッシーの、
「月の光」を頭の中で流していただけるとうれしいです!

一度でも読んでくださった方、
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!

心から感謝いたします!

小説を書き散らかしてるみゃーですが、やっと一本、最終回まで来ました!

どうかこれからも、他の作品もよろしくお願いいたします!
































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