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「それは…」

恒輝は、視線を合わせられないまま、誤魔化すように下駄箱の扉に手をかけた。

すると…

その恒輝のその手に、明人が自分の手を重ねて、逃さないと動きをぐっと封じ呟いた。

「ちゃんと答えて…俺と、勉強するの、嫌?」

恒輝は、拒絶する理由は佐々木の事もあったが…

健全なアルファとオメガが二人きりになるという事は、普通、体の関係を持つ流れになってしまう事だった。

そして、普通ならそう言う流れになると分かっていながら簡単に言ってくる明人に、

フェロモン不完全症の自分は、やはりアルファとしてナメられているんでは?と…

自分でも鬱陶しいと思うプライドも、頭をもたげてくる。

すると、明人の隙を突いてその明人の手を、今度は恒輝が下駄箱の扉の上で押さえ込み返す。

明人には、どんな理由があっても他人でも恒輝でも、こんな風に自分の隙を取られ逃げられない自信があったので、一瞬、唖然とした。

例えアルファとオメガであれ、やはり男同士。

明らかに今、明人は恒輝にマウントを取られた。

恒輝は気付いていないようだが…

明人は前から度々、恒輝にはこれから伸びるアルファとしての力があるんでは無いかと思っていたが…

今、それが増々確信めいてきた。

「嫌とかイイとかじゃねぇ…お前…俺が、アルファだって事、忘れてんだろ?俺だって二人きりになりゃ、いつ覚醒してお前を襲って噛みつくかわかんねぇぞ!」

恒輝が、その涼し気な目を眇め
て明人を見詰め、制圧するように静かに呟いた。

それを見て、ブルルっと、明人の下半身が震え熱くなり高揚した。

そして、何かに酔ったみたいに顔が紅潮し囁いた。

「いいよ…それでも、俺はいつ襲われてもいいよ…」

「ザケンな…んな事、軽く言うんじゃねぇ!やっぱお前は、俺の家庭教師は無理だからな!」

恒輝は突っぱねた。

いつもなら、大抵の人間は明人の意のままに動いてくれる。

だが、恒輝相手だとそれが通用せず、明人の顔色が曇った。

恒輝は、今度こそ履き替えようと靴箱に目をやる。

すると、自分のネームプレートの近くに、御崎のそれがあるのに気付いた。

(そうだ…御崎なら、勉強を教えてくれるかも…)

恒輝は、内心密かに家庭教師を即決した。



























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