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ある春の日
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去年の一馬の高校入学式の時は、桜が咲くのが早くて散るのも早かったので、もうすでに桜の木は緑だった。
けれど、今年は違う。
まるで桜が空気を読んだみたく、入学式にジャストタイミングで満開になった。
その一馬の後輩達の入学式から2日後、新学期が始まり、もう一週間経った。
すでに桜は、瞬く間、一気に散ってしまった。
桜の開花であれだけ気分が浮かれていた一馬の周囲は、何も無かったかのように静かになった。
すでに全学年弁当も始まり、6時間授業も始まっている。
夕刻になり、人ももうまばらな校舎。
その横にある大きな室内プールで
、今日も水泳部の部活が賑やかに行われ、部員である一馬も泳いでいた。
一馬は、3歳から水泳を始めて、所属していたスイミングスクールや自宅の近所では、神童と呼ばれるほど泳ぎが速かった。
それに、一馬は、容姿もそこそこ悪くなかったから、そこそこ人気者でもあった。
親もそれに気を良くして、中学からは水泳の強い私学へ入り、そのままエレベーターで高校も同じ系列の今の高校に入った。
しかし、小さい頃から水泳一本。
良く言えば、一馬の全てが水泳で…
悪く言えば、ただの水泳バカだった。
一馬が、もう何回目かのコースを終えて水から上がると、何人かの新入生の見学者がちらほらといた
。
そしてそれぞれが、自由に水泳部を見学していた。
ここの水泳部は、系列中学から上がった優秀な水泳選手か他の水泳強豪中学からの推薦者が多かったが、全く水泳をした事のない生徒も受け入れる。
彼女、彼らを物珍しく一馬が見ていると、壁際で一人見学していた
、一人の背が高く体付きのいい、男前の一年生と目が合った。
一馬は、元々の人見知りの無さと
、性格上深く考えるでも無く、つかつかと後輩に近寄り、にっこりと笑い声をかけた。
「なぁ、もしかして、一年生?すんげぇいい体してんな!制服の上からでもわかる。お前水泳やんの
?」
後輩は、突然の事で一瞬瞠目して
、しばらく一馬の顔をじっと見詰めた。
そして、一馬の競パンのみの体を
、下から上へじっくりと眺め、やっと口を開いた。
「オレが…水泳…ですか?オレ、授業とかでしか、泳ぎってした事なくて…」
「ふ~ん…」
じゃぁ、どうして水泳部の練習をわざわざ見学してるのか?と、一馬は一瞬思いもしたが…
もしかして、泳ぎには多少興味があるのかも知れないと想像した。
「なぁ、なぁ、お前少しは泳げんの?」
一馬は、グイグイと後輩に踏み込む。
後輩は、驚くような、戸惑うような、けれど、はにかむように返事した。
「まっ、まぁ…普通には泳げます…
」
この瞬間、一馬は、ほんの少しの興味本位で言ってしまう。
「じゃぁさぁ~、水泳部入んねぇ
?オレと一緒泳がねぇ?」
何故か、後輩は、又、一馬の体を下から上へ、今度も時間をかけて見詰めた。
そして…
「せっ、先輩が、オレの…面倒見てくれるって…約束してくれるなら…オレ…オレ…やっ…やります!」
後輩は、照れたように伏し目がちに呟いた。
(まだ高1なのに、オレより体ごついし、熊と虎足して2で割った感じの迫力あるのに…なんか…以外とかわいい所あんじゃん!)
一馬は密かに内心そう思い、「面倒見てやる!」と即答した。
後輩は、とても嬉しそうに、まるで太陽のように笑った。
その表情がとても気になって、つい一馬はじっと見詰めてしまった
。
急遽、
後輩の猛(たける)の水泳部入部が決まった日だった。
けれど、今年は違う。
まるで桜が空気を読んだみたく、入学式にジャストタイミングで満開になった。
その一馬の後輩達の入学式から2日後、新学期が始まり、もう一週間経った。
すでに桜は、瞬く間、一気に散ってしまった。
桜の開花であれだけ気分が浮かれていた一馬の周囲は、何も無かったかのように静かになった。
すでに全学年弁当も始まり、6時間授業も始まっている。
夕刻になり、人ももうまばらな校舎。
その横にある大きな室内プールで
、今日も水泳部の部活が賑やかに行われ、部員である一馬も泳いでいた。
一馬は、3歳から水泳を始めて、所属していたスイミングスクールや自宅の近所では、神童と呼ばれるほど泳ぎが速かった。
それに、一馬は、容姿もそこそこ悪くなかったから、そこそこ人気者でもあった。
親もそれに気を良くして、中学からは水泳の強い私学へ入り、そのままエレベーターで高校も同じ系列の今の高校に入った。
しかし、小さい頃から水泳一本。
良く言えば、一馬の全てが水泳で…
悪く言えば、ただの水泳バカだった。
一馬が、もう何回目かのコースを終えて水から上がると、何人かの新入生の見学者がちらほらといた
。
そしてそれぞれが、自由に水泳部を見学していた。
ここの水泳部は、系列中学から上がった優秀な水泳選手か他の水泳強豪中学からの推薦者が多かったが、全く水泳をした事のない生徒も受け入れる。
彼女、彼らを物珍しく一馬が見ていると、壁際で一人見学していた
、一人の背が高く体付きのいい、男前の一年生と目が合った。
一馬は、元々の人見知りの無さと
、性格上深く考えるでも無く、つかつかと後輩に近寄り、にっこりと笑い声をかけた。
「なぁ、もしかして、一年生?すんげぇいい体してんな!制服の上からでもわかる。お前水泳やんの
?」
後輩は、突然の事で一瞬瞠目して
、しばらく一馬の顔をじっと見詰めた。
そして、一馬の競パンのみの体を
、下から上へじっくりと眺め、やっと口を開いた。
「オレが…水泳…ですか?オレ、授業とかでしか、泳ぎってした事なくて…」
「ふ~ん…」
じゃぁ、どうして水泳部の練習をわざわざ見学してるのか?と、一馬は一瞬思いもしたが…
もしかして、泳ぎには多少興味があるのかも知れないと想像した。
「なぁ、なぁ、お前少しは泳げんの?」
一馬は、グイグイと後輩に踏み込む。
後輩は、驚くような、戸惑うような、けれど、はにかむように返事した。
「まっ、まぁ…普通には泳げます…
」
この瞬間、一馬は、ほんの少しの興味本位で言ってしまう。
「じゃぁさぁ~、水泳部入んねぇ
?オレと一緒泳がねぇ?」
何故か、後輩は、又、一馬の体を下から上へ、今度も時間をかけて見詰めた。
そして…
「せっ、先輩が、オレの…面倒見てくれるって…約束してくれるなら…オレ…オレ…やっ…やります!」
後輩は、照れたように伏し目がちに呟いた。
(まだ高1なのに、オレより体ごついし、熊と虎足して2で割った感じの迫力あるのに…なんか…以外とかわいい所あんじゃん!)
一馬は密かに内心そう思い、「面倒見てやる!」と即答した。
後輩は、とても嬉しそうに、まるで太陽のように笑った。
その表情がとても気になって、つい一馬はじっと見詰めてしまった
。
急遽、
後輩の猛(たける)の水泳部入部が決まった日だった。
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