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シンクロニシティ
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銀色の狼が、初めてゼインのいた部屋に来てからもう一週間経った。
相変わらず外はずっと大雪。
アレンはゼインを城に引き止め続けて、城の主も体調が悪いと、直接礼を言う事も許されなかった。
その間、ゼインは、
暖かい部屋に暖かい三回の食事
に、おやつや夜食…
風呂にフカフカのベッド…
図書室を使う事も許され、何不自由無く過ごし、一緒に過ごす知り合いも出来た。
それは、銀色の狼だった。
アレンにその名前を聞くと、少し変な間が空いて、
この城の主がペットに名前を付けない主義だと聞かされた。
狼をペットにするなんて…変わった御老人だとは思ったが…
ゼインは、ただ「銀狼」とだけ呼ぶ事にした。
この一週間…
ゼインの脳裏の片隅には…
銀狼とあのグレイの髪の青年が、自分が殺さなければならない獣狼神と何か関係があるのではとの思いがあったが…
銀狼はちょくちょく部屋へやって来ては、食事したり本を読むゼインをじーっと見たり、
ゼインに体を擦り付けたり、撫でてくれと要求してきて、
図書室も、風呂にさえ付いて来て外で待っていたし、
その疑惑の念は、度々浮かんでも長続きしなかった。
そしてゼインもつい気が緩み、昼は銀狼の背中を借りて昼寝して、夜はベッドに一緒に寝たりしていた。
今日もゼインは、暖かい部屋で、目を開けたまま伏せをした銀狼の背中にもたれかかり本を読んでいた。
相変わらず外は風雪が窓を叩き、ふと外を見る。
いつの間にかゼインは、人に喋るようにいつも銀狼に喋りかけるようになっていたので、そのまま冷たい結晶を見ながら呟いた。
そしてどちらかと言えば、人と話すのは苦手なので、こっちの方がよく喋った。
「銀狼…前、お前に言っただろ。俺が赤ん坊の頃、こんな雪の日に捨てられてたって。俺、前世で何か罪を犯したのかもな…だからそんな風に捨てられたのかも。でも、もし罪を犯したのなら、どんな罪を犯したんだろう?」
それを聞いた銀狼は、獣耳をピンと立て、まるで人のように目を大きく見開いた。
銀狼の中の、本当の姿である人狼ジークが激しく反応したのだ。
ジークと過去が似ていたし、何より、ジークが自身について思っている事と酷似ていたからだ。
だが、ゼインは、本に視線を戻した。
読んでいたのは、許されない恋をした二人の人間の物語りだった。
そこで又ふと、ゼインが右手の銀狼の目を見て呟いた。
「銀狼…お前はもう恋をして、番がいるんだろう?」
銀狼は、じーっと、その紫の瞳でゼインを見ているだけで無言だった。
しかしゼインには、なんとなくではあるが、銀狼が人の言葉をかなり理解している感じがしていたので喋り続けた。
「恋って、どんなんだろうな。
俺、まだした事ないけど…でも…でも…ずっと、ずっと、俺、子供の頃から誰かを探してる感じがするんだ…今まで、色々な所へ行ったりしたけど…何処へ行っても、何処へ行っても、その誰かを探してる気がするんだ…可笑しいだろ?」
すると、又、自然とゼインの両目から涙が流れた。
ジークは、又、反応し、獣の姿で立ち上がる。
やはりジークとゼインは、よく思考が似ていたし、なにより、ゼインの涙にじっとしていられなかった。
「あれ…俺…今までこんなに泣くような奴じゃなかったのに、おかしいな…」
ゼインが苦笑いしながら右手でそれを拭うと、まだ流れ落ちてきた。
すると、銀狼がおもむろに立ち上がり、ペロペロペロとゼインの涙を舐め取った。
「銀狼。お前、優しいな…」
そうゼインが笑うと、銀狼は、ふさふさとした尻尾をブンブン振って見せた。
ゼインは、ふと思った。
あんなに他人に表情が無い冷めた奴だと言われていた自分が、泣いたり、笑ったりしている…
この城に来てから嘘のようだと。
相変わらず外はずっと大雪。
アレンはゼインを城に引き止め続けて、城の主も体調が悪いと、直接礼を言う事も許されなかった。
その間、ゼインは、
暖かい部屋に暖かい三回の食事
に、おやつや夜食…
風呂にフカフカのベッド…
図書室を使う事も許され、何不自由無く過ごし、一緒に過ごす知り合いも出来た。
それは、銀色の狼だった。
アレンにその名前を聞くと、少し変な間が空いて、
この城の主がペットに名前を付けない主義だと聞かされた。
狼をペットにするなんて…変わった御老人だとは思ったが…
ゼインは、ただ「銀狼」とだけ呼ぶ事にした。
この一週間…
ゼインの脳裏の片隅には…
銀狼とあのグレイの髪の青年が、自分が殺さなければならない獣狼神と何か関係があるのではとの思いがあったが…
銀狼はちょくちょく部屋へやって来ては、食事したり本を読むゼインをじーっと見たり、
ゼインに体を擦り付けたり、撫でてくれと要求してきて、
図書室も、風呂にさえ付いて来て外で待っていたし、
その疑惑の念は、度々浮かんでも長続きしなかった。
そしてゼインもつい気が緩み、昼は銀狼の背中を借りて昼寝して、夜はベッドに一緒に寝たりしていた。
今日もゼインは、暖かい部屋で、目を開けたまま伏せをした銀狼の背中にもたれかかり本を読んでいた。
相変わらず外は風雪が窓を叩き、ふと外を見る。
いつの間にかゼインは、人に喋るようにいつも銀狼に喋りかけるようになっていたので、そのまま冷たい結晶を見ながら呟いた。
そしてどちらかと言えば、人と話すのは苦手なので、こっちの方がよく喋った。
「銀狼…前、お前に言っただろ。俺が赤ん坊の頃、こんな雪の日に捨てられてたって。俺、前世で何か罪を犯したのかもな…だからそんな風に捨てられたのかも。でも、もし罪を犯したのなら、どんな罪を犯したんだろう?」
それを聞いた銀狼は、獣耳をピンと立て、まるで人のように目を大きく見開いた。
銀狼の中の、本当の姿である人狼ジークが激しく反応したのだ。
ジークと過去が似ていたし、何より、ジークが自身について思っている事と酷似ていたからだ。
だが、ゼインは、本に視線を戻した。
読んでいたのは、許されない恋をした二人の人間の物語りだった。
そこで又ふと、ゼインが右手の銀狼の目を見て呟いた。
「銀狼…お前はもう恋をして、番がいるんだろう?」
銀狼は、じーっと、その紫の瞳でゼインを見ているだけで無言だった。
しかしゼインには、なんとなくではあるが、銀狼が人の言葉をかなり理解している感じがしていたので喋り続けた。
「恋って、どんなんだろうな。
俺、まだした事ないけど…でも…でも…ずっと、ずっと、俺、子供の頃から誰かを探してる感じがするんだ…今まで、色々な所へ行ったりしたけど…何処へ行っても、何処へ行っても、その誰かを探してる気がするんだ…可笑しいだろ?」
すると、又、自然とゼインの両目から涙が流れた。
ジークは、又、反応し、獣の姿で立ち上がる。
やはりジークとゼインは、よく思考が似ていたし、なにより、ゼインの涙にじっとしていられなかった。
「あれ…俺…今までこんなに泣くような奴じゃなかったのに、おかしいな…」
ゼインが苦笑いしながら右手でそれを拭うと、まだ流れ落ちてきた。
すると、銀狼がおもむろに立ち上がり、ペロペロペロとゼインの涙を舐め取った。
「銀狼。お前、優しいな…」
そうゼインが笑うと、銀狼は、ふさふさとした尻尾をブンブン振って見せた。
ゼインは、ふと思った。
あんなに他人に表情が無い冷めた奴だと言われていた自分が、泣いたり、笑ったりしている…
この城に来てから嘘のようだと。
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