エターナルウィンター（邪狼神の籠愛）

雪の結晶

今から200年程前…

「ん？…」　

ジークが目覚めると、昼間でも薄暗い何処か深い森の中だった。

そして…

まるで、決して許されない、とんでも無い大罪を犯した罪人の様に…

みすぼらしいボロボロの服を着て、雪の大地の上に一人仰向けで、打ち捨てられたようにただ横たわっていた。

（大罪を犯したのなら…）

（自分は一体どんな事をしたのだろう？）

曇天の空からは、だたハラハラと雪がひっきりなしに降り落ちてくる。

右腕だけ僅かに上げて、それを手で受け止める。

すると、その結晶の儚い美しさがとても誰かに似ていると思ったが…

それが誰かは全く分からない…

ジークは、人狼として初めて目を開け目覚めたこの時から、今そのままの大人の姿だった。

その時、自分が誰で、子供や少年だった過去があるのか、家族がいたのか…

もしかしたら…愛を誓い合った恋人がいたのか何も分からなかった。

やがて色々あり…

外の世界に春が来ようが夏が来ようが、永遠に冬の季節の館とその周囲地域一帯の主になり、

崇められ、或いは恐れられるようになり人狼神となった。

ただ、ジークは、何かは自分でも分からないが、探していた。

この200年、ぽっかりと穴が空いた心をずっと抱え。

その何かを探し、200年の間…

夜な夜な森を徘徊し…

時に海を渡り…

時に砂漠を越えて、様々なあらゆる異国の町々を彷徨ったりもした。

だが、その何かは決して見つから無かった。

ただ虚しく、拷問のような幾夜が変わらず訪れ…

刻だけが…

乾いた砂のようにさらさら、さらさらと流れて逝った。

しかし…

いつものように、森をうろついていたあの時、

突然目の前に現れた青年、ゼインを見た瞬間から、

ジークの、分からない何かを探し徘徊したいという欲求はキレイに消え去った。