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エピローグ
しおりを挟む逢魔が刻…の深い森。
すでに日は傾きかけ、視界が悪くなっていた。
朝から降り出した雪で、すでに辺り一面真っ白。
それが、人のくるぶしの上まで積もる中、ゼインは、すでに灯りのついたランプだけを片手に必死で前を行く。
遠くで、狼達の遠吠えもする。
他の荷物は何もかも、森のとある洞窟に置いてきた。
が…
そうせざるを得なかったのだ。
どうしてもやらなければならない仕事で一緒に森に入った、19歳のゼインより年上の男二人に、突然出た熱で横になっていた寝込みを襲われたからだ。
金銭的なモノでは無かった。
男同士なのに、ゼインは、その美しさを狙われ、性的に犯されそうになったのだ。
ただでさえ土地勘の無い森。
もう宛も無く逃げて、どれ位時間が経ったのか?
かなりの時間が経ったかもしれないし、あるいは、まだかもしれない。
もう、方向も時間も分からない。
やがて、あんなに遠くに感じていた遠吠えが、突然近くで聞こえ始め、ハッとする。
(人の死の臭いを、もう嗅ぎつけたのか?)
もう熱で頭が回ら無い中、ふと、そんな事が頭をよぎり、自嘲の笑みが浮かぶ。
すると、いつの間にか、巨木が目の前に立っていた。
余りに立派で、黙ってじっと見ていると、その陰から黒い狼達が、
グルグルと威嚇の声を出しながら出てきた。
(逃げなければ!)
と、思ったが、もう、その力は残って無かった。
だが、その時…
その木の上から、魅力的な低い厳しい男の声がした。
「この森が、人の立ち入ってはならぬ禁足地だと知っての所業か!
」
ゼインは、残されたわずかな力で立ったまま、その声の方を見た。
太い枝に、グレイの色の長い髪を雪風に靡かせた、若く逞しい美しい一人の男がいた。
男は、全く無表情だった。
しかし、ゼインを見る目だけは、この回りの景色同様冷たく凍っている。
そして、男の頭上には、まるでその下に蠢く狼達の様な獣耳が生えていた。
ゼインは、驚いた。
だが、その途端ゼインは、頭がクラクラし、やがてバタっと雪上に倒れ込んだ。
その瞬間、ゼインは…一つだけ思った。
あの、獣耳の男は、きっと…この森一帯を支配している、伝説の狼神に違い無いと。
そして、自分が探していた、狼神
…ジークだと…
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