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山寺
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優は今、優自身の前世である春陽の幼馴染である前世の朝霧と共にいる。
優は前世の朝霧の馬に乗り、その手綱を前世の朝霧が握りなだらかな山道を歩いて引いた。
優は、例え人影の無い山道でも人に偶然会う事を考え、青い瞳が周囲にバレないよう、朝霧の笠を借りて目深にかぶっていた。
そして朝霧は、歩きながら絶えず無言で何度も馬上の優を見上げてきた。
朝霧は、普段は鋭利で沈着冷静な武士そのものだが、今、優を見てくる朝霧は、その落ち着き払った中に優を深く心配するような雰囲気があった。
優はそんな朝霧と視線が何度も何度も合ったが、その度に優は視線を泳がせた。
兎に角、優は前世の朝霧といると安心感を感じる反面、色々な事情がある事や優自身も何かよく分からない感情が湧いてきてソワソワソワソワ落ち着かない感覚があった。
そしてそうかと思えば、朝霧とこうしている事で自分が摩耶優である事を忘れてしまう事への強い懸念と、何より、歴史を変えてしまっている恐怖に苛まれた。
程なくして、朝霧の知り合いの僧のいる、山中にある寺の門前に着く。
陽は更に傾いたが、灯がなくてもまだ充分歩ける位だった。
優は馬から降りようと思った。
だが、やはりつい先日までただ普通の高校生活を送ってた優だけに馬に慣れてなくて、どう上手く着地するか座ったまま戸惑う。
そこに地上の朝霧が、馬から降りる優を抱き止めて降ろしてやるとばかりに無言で逞しい腕を広げた。
「あっ……ええっと…」
優は呟くと、恥ずかし気に視線だけを空に向け戸惑う。
そして、思った。
(俺、戦国のお姫様じゃあるまいし。剣術より先に自分で馬に自由に乗り降り出来るようにならないとヤバいよな……)
しかし、朝霧は腕を広げだまま、クールだった表情を少し緩めて優の顔を見ながら言った。
「大丈夫、俺しか見てない。そなたを受け止めてやる」
優は、まだ少し戸惑いがあったがいつまでも馬に乗ってる訳にもいかず、優も腕を広げて朝霧の前上半身に向かい伸ばした。
すると、優を落とさないようにする為だろうか?
朝霧は、優を受け止めると一度強く抱き締めた。
「えっ?!」
優は、びっくりして声を出すと、朝霧の腕の中で自分から体を捩り地面に足を着け、それから慌てて朝霧から体を離した。
「す、すまない……落とさないようにと思ったら、つい……力が入り過ぎた…」
朝霧が珍しい程に動揺して慌てて弁解すると、気まずそうに優から視線をそらし、この場が変な雰囲気になる。
「あっ……そっ……そうですか…」
優も動揺しながら、この空気感を早くなんとかしようと無理矢理に微笑んだ。
優は前世の朝霧の馬に乗り、その手綱を前世の朝霧が握りなだらかな山道を歩いて引いた。
優は、例え人影の無い山道でも人に偶然会う事を考え、青い瞳が周囲にバレないよう、朝霧の笠を借りて目深にかぶっていた。
そして朝霧は、歩きながら絶えず無言で何度も馬上の優を見上げてきた。
朝霧は、普段は鋭利で沈着冷静な武士そのものだが、今、優を見てくる朝霧は、その落ち着き払った中に優を深く心配するような雰囲気があった。
優はそんな朝霧と視線が何度も何度も合ったが、その度に優は視線を泳がせた。
兎に角、優は前世の朝霧といると安心感を感じる反面、色々な事情がある事や優自身も何かよく分からない感情が湧いてきてソワソワソワソワ落ち着かない感覚があった。
そしてそうかと思えば、朝霧とこうしている事で自分が摩耶優である事を忘れてしまう事への強い懸念と、何より、歴史を変えてしまっている恐怖に苛まれた。
程なくして、朝霧の知り合いの僧のいる、山中にある寺の門前に着く。
陽は更に傾いたが、灯がなくてもまだ充分歩ける位だった。
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だが、やはりつい先日までただ普通の高校生活を送ってた優だけに馬に慣れてなくて、どう上手く着地するか座ったまま戸惑う。
そこに地上の朝霧が、馬から降りる優を抱き止めて降ろしてやるとばかりに無言で逞しい腕を広げた。
「あっ……ええっと…」
優は呟くと、恥ずかし気に視線だけを空に向け戸惑う。
そして、思った。
(俺、戦国のお姫様じゃあるまいし。剣術より先に自分で馬に自由に乗り降り出来るようにならないとヤバいよな……)
しかし、朝霧は腕を広げだまま、クールだった表情を少し緩めて優の顔を見ながら言った。
「大丈夫、俺しか見てない。そなたを受け止めてやる」
優は、まだ少し戸惑いがあったがいつまでも馬に乗ってる訳にもいかず、優も腕を広げて朝霧の前上半身に向かい伸ばした。
すると、優を落とさないようにする為だろうか?
朝霧は、優を受け止めると一度強く抱き締めた。
「えっ?!」
優は、びっくりして声を出すと、朝霧の腕の中で自分から体を捩り地面に足を着け、それから慌てて朝霧から体を離した。
「す、すまない……落とさないようにと思ったら、つい……力が入り過ぎた…」
朝霧が珍しい程に動揺して慌てて弁解すると、気まずそうに優から視線をそらし、この場が変な雰囲気になる。
「あっ……そっ……そうですか…」
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