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伝令の鳥
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地面に座り込む春陽を、定吉は片膝を着いた状態で抱き締め続けた。
そして定吉は思った。
そうなのだ…
定吉が春陽をここからさらい、強引にでも妻にすればいいのだ…
定吉が春陽をさらった後は春陽を戦の無い平和な場所に隠し、そこで定吉が春陽の体も心も溶けてトロトロになるほど愛おしめば良いのだ。
定吉が一度でも春陽と体を交わらせ肌を重ね妻として抱いたなら、定吉は絶対にもうどんな事があっても春陽を離さない。
淫魔の春陽と定吉が性交渉をすれば、定吉も淫魔に堕ちる。
しかし、定吉はそんな事も怖れてもいない。
定吉は朝霧が刀の腕の立つ武士だと知っているが、例え朝霧と何度刃を戦わせても、絶対に定吉の妻になった春陽を朝霧には渡さない。
そして、春陽と朝霧の間に今はまだ何か特別な感情があっても、定吉はすぐに春陽に朝霧を忘れさせる自信もあった。
(今だ!)
定吉は内心決意し、春陽を気絶させようと定吉のごつい右手を春陽の首に持っていこうとした。
だが、その時…
春陽が定吉に抱き締められたままボソッと呟いた。
「定吉……お前は……本当に優しい男だな…」
「えっ?!」
定吉は、無意識に気の抜けた声を出してしまう。
そして、春陽の首に持っていこうとした定吉の手の動きが止まった。
(春……陽…)
定吉はそう心の中で呟くと、春陽が本気でそう言っているだろう様子から、今はもうそれ以上春陽に手を出せなくなってしまった。
「春陽…」
その代わり定吉はそう呟き、春陽の体を更にぐっと強く抱き締めた。
定吉の全てで抱き締めた。
そして、これから春陽をどうしたら良いのか?定吉は苦悩し始めた。
定吉は今も、春陽を戦と殺戮と謀略の世界に行かせたくないし、春陽を守りたいと思っている。
だがそんな所に、定吉は頭上にとある気配を感じ取った。
大きく丸く円を描き定吉と春陽の頭上を小さな地味な色の鳥が飛んでいた。それは紛れも無く、定吉が各地に置いている配下の忍びからの伝令の鳥。
定吉は出来ればこのまましばらく春陽を抱き締めていたかった。
春陽の体温を感じていたかった。
しかし何か特別な知らせがあれば身の危険すらある。仕方なく定吉は春陽から体を離し、指笛でその鳥を呼び、定吉の肩に止まらせて鳥の足にくくられていた暗号の書かれた伝令書を読んだ。
春陽は、一体何事かとただそれを黙って見ているしかなかった。しかし定吉の顔付きが少し変わると、何か悪い知らせなのだと悟って聞いた。
「どうした?何かあったのか?」
定吉は春陽に問われ、自分は感情が顔に出ない男だと日頃自負していたが、春陽と優が絡むとそれが出来ない自分を心から呪った。
そしてその流れから、今大事な知らせが来たにも関わらず定吉は優の事を思い出した。優の春陽と同じ顔、同じ体付き、同じ青い瞳と同じ清純な心を。
優は、所作や喋り方は春陽と全く違うが、定吉には何故か優と春陽が同一人物にしか思えない不思議な感覚が今もある。
そして同時に、定吉がずっと感じていた、優も淫魔ではないか?定吉の優へのこの感情が何なのか?定吉の春陽への感情と何か違いがあるのか?そんな疑問が頭によぎってしまった。
そして定吉は思った。
そうなのだ…
定吉が春陽をここからさらい、強引にでも妻にすればいいのだ…
定吉が春陽をさらった後は春陽を戦の無い平和な場所に隠し、そこで定吉が春陽の体も心も溶けてトロトロになるほど愛おしめば良いのだ。
定吉が一度でも春陽と体を交わらせ肌を重ね妻として抱いたなら、定吉は絶対にもうどんな事があっても春陽を離さない。
淫魔の春陽と定吉が性交渉をすれば、定吉も淫魔に堕ちる。
しかし、定吉はそんな事も怖れてもいない。
定吉は朝霧が刀の腕の立つ武士だと知っているが、例え朝霧と何度刃を戦わせても、絶対に定吉の妻になった春陽を朝霧には渡さない。
そして、春陽と朝霧の間に今はまだ何か特別な感情があっても、定吉はすぐに春陽に朝霧を忘れさせる自信もあった。
(今だ!)
定吉は内心決意し、春陽を気絶させようと定吉のごつい右手を春陽の首に持っていこうとした。
だが、その時…
春陽が定吉に抱き締められたままボソッと呟いた。
「定吉……お前は……本当に優しい男だな…」
「えっ?!」
定吉は、無意識に気の抜けた声を出してしまう。
そして、春陽の首に持っていこうとした定吉の手の動きが止まった。
(春……陽…)
定吉はそう心の中で呟くと、春陽が本気でそう言っているだろう様子から、今はもうそれ以上春陽に手を出せなくなってしまった。
「春陽…」
その代わり定吉はそう呟き、春陽の体を更にぐっと強く抱き締めた。
定吉の全てで抱き締めた。
そして、これから春陽をどうしたら良いのか?定吉は苦悩し始めた。
定吉は今も、春陽を戦と殺戮と謀略の世界に行かせたくないし、春陽を守りたいと思っている。
だがそんな所に、定吉は頭上にとある気配を感じ取った。
大きく丸く円を描き定吉と春陽の頭上を小さな地味な色の鳥が飛んでいた。それは紛れも無く、定吉が各地に置いている配下の忍びからの伝令の鳥。
定吉は出来ればこのまましばらく春陽を抱き締めていたかった。
春陽の体温を感じていたかった。
しかし何か特別な知らせがあれば身の危険すらある。仕方なく定吉は春陽から体を離し、指笛でその鳥を呼び、定吉の肩に止まらせて鳥の足にくくられていた暗号の書かれた伝令書を読んだ。
春陽は、一体何事かとただそれを黙って見ているしかなかった。しかし定吉の顔付きが少し変わると、何か悪い知らせなのだと悟って聞いた。
「どうした?何かあったのか?」
定吉は春陽に問われ、自分は感情が顔に出ない男だと日頃自負していたが、春陽と優が絡むとそれが出来ない自分を心から呪った。
そしてその流れから、今大事な知らせが来たにも関わらず定吉は優の事を思い出した。優の春陽と同じ顔、同じ体付き、同じ青い瞳と同じ清純な心を。
優は、所作や喋り方は春陽と全く違うが、定吉には何故か優と春陽が同一人物にしか思えない不思議な感覚が今もある。
そして同時に、定吉がずっと感じていた、優も淫魔ではないか?定吉の優へのこの感情が何なのか?定吉の春陽への感情と何か違いがあるのか?そんな疑問が頭によぎってしまった。
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