117 / 177
再会
しおりを挟む
ここは、戦国時代。
優は、令和の東京の家、江戸時代の観月屋敷、そのどちらにも本当に帰れない。
定吉が逃してくれて幼い千夏をおんぶして、優は、まだ行く宛も無く山の中を走る。
しかし…
酷く混乱する頭で冷静になろう、なろうとしていて気付いた。
優が千夏が戦国時代に来た夢を見たあの日から、今日千夏に会うまで数日のタイムラグがある。
(もし、あの夢が現実だったら、千夏ちゃんは今までどこにいたんだ?誰か、千夏ちゃんを助けてくれた人がいるのか?)
優はふとそう考えて、足が止まった。
今は、優もその人に助けてもらうしか道はない。
そして、千夏を背中からそっと下ろし、千夏の背の高さに目線を合わせ優の膝を折り聞いた。
「千夏ちゃん。千夏ちゃんって、誰かに助けてもらって、俺以外の誰かと一緒にいる?」
千夏は、いつもの無表情ながらすぐにうなずいた。
「えっ?何処の人?」
千夏は優の右手を取り、日本人形を左腕に大事に抱え、急にくるりと体の向きを変え歩き出した。
千夏は、幼い上にこの時代に縁がないが、優の腕を引っ張り迷う事なくずんずん歩く。
やがて、山中にポツンと一軒、今は人のいなさそうな古びた民家が見えてきた。
すると、その前に…
優が良く知る姿が立っていた。
優は、なんとなく千夏を助けている人物を予想していたが…
やはりその通りだった。
「小寿郎!」
いつもの白い仮面の猫耳獣人の小寿郎の姿に、優は安心感から思わず一人走り出した。
「ハル!えっ?お前、角は?」
驚く小寿郎に、優は抱きつく。
「小寿郎!俺、優だよ。春陽さんじゃ無くて春光の方の優だよ!優!」
優は抱きついたまま小寿郎の顔を見て、一瞬、今の自分の状況を忘れて笑顔で言った。
「えっ?そっちのハル?お前、お前…」
「俺、体もこっちへ来た!」
「エエー!!!」
小寿郎の驚きは当然だろう。
しかし、驚き過ぎて、小寿郎の治りかけの体の傷が傷んだ。
「イたた…」
「ごめん!俺、つい…」
優が慌てて体を引こうとすると、
小寿郎が間髪入れず、優の体をグイッと小寿郎の体に引き寄せた。
そして今度は、小寿郎が優を抱き締めた。
「良かった、ハル…お前が無事で…本当に良かった…」
いつも本当の猫っぽく高飛車な小寿郎の声と、強く優を抱く小寿郎の腕が震えていた。
優も一瞬だが、さっきの朝霧との別れの痛みがやわらぎ、小寿郎と抱き合った。
そして暫く、二人共々動けないでいたが…
やがて小寿郎が、優を強く抱き締めたまま静かに呟いた。
「ハル…お前の体もこっちへ来たんだ。今から…今度こそ…私をお前の式神にしろ!今から契約をするぞ」
「えっ?今っ?今から?…」
優は、小寿郎から体を離し戸惑った。
だが、その優の腕を小寿郎は引っ張り逃さず、怖い位真剣に言った。
「今しないでいつする?私は、お前と一番格の高い式神契約をする。終身契約だ。そして、私が死んでもお前は無事だが、お前が死ねば私も死ぬ契約をする」
「えぇ?!!!」
「ハル。もう逃さんからな…今日こそ、私をお前のモノにしろ!」
小寿郎の白皙の仮面の目の形に空いた二つの穴から…
小寿郎の金色の瞳がキラキラ煌めいて、優を一心に見詰めていた。
優は、令和の東京の家、江戸時代の観月屋敷、そのどちらにも本当に帰れない。
定吉が逃してくれて幼い千夏をおんぶして、優は、まだ行く宛も無く山の中を走る。
しかし…
酷く混乱する頭で冷静になろう、なろうとしていて気付いた。
優が千夏が戦国時代に来た夢を見たあの日から、今日千夏に会うまで数日のタイムラグがある。
(もし、あの夢が現実だったら、千夏ちゃんは今までどこにいたんだ?誰か、千夏ちゃんを助けてくれた人がいるのか?)
優はふとそう考えて、足が止まった。
今は、優もその人に助けてもらうしか道はない。
そして、千夏を背中からそっと下ろし、千夏の背の高さに目線を合わせ優の膝を折り聞いた。
「千夏ちゃん。千夏ちゃんって、誰かに助けてもらって、俺以外の誰かと一緒にいる?」
千夏は、いつもの無表情ながらすぐにうなずいた。
「えっ?何処の人?」
千夏は優の右手を取り、日本人形を左腕に大事に抱え、急にくるりと体の向きを変え歩き出した。
千夏は、幼い上にこの時代に縁がないが、優の腕を引っ張り迷う事なくずんずん歩く。
やがて、山中にポツンと一軒、今は人のいなさそうな古びた民家が見えてきた。
すると、その前に…
優が良く知る姿が立っていた。
優は、なんとなく千夏を助けている人物を予想していたが…
やはりその通りだった。
「小寿郎!」
いつもの白い仮面の猫耳獣人の小寿郎の姿に、優は安心感から思わず一人走り出した。
「ハル!えっ?お前、角は?」
驚く小寿郎に、優は抱きつく。
「小寿郎!俺、優だよ。春陽さんじゃ無くて春光の方の優だよ!優!」
優は抱きついたまま小寿郎の顔を見て、一瞬、今の自分の状況を忘れて笑顔で言った。
「えっ?そっちのハル?お前、お前…」
「俺、体もこっちへ来た!」
「エエー!!!」
小寿郎の驚きは当然だろう。
しかし、驚き過ぎて、小寿郎の治りかけの体の傷が傷んだ。
「イたた…」
「ごめん!俺、つい…」
優が慌てて体を引こうとすると、
小寿郎が間髪入れず、優の体をグイッと小寿郎の体に引き寄せた。
そして今度は、小寿郎が優を抱き締めた。
「良かった、ハル…お前が無事で…本当に良かった…」
いつも本当の猫っぽく高飛車な小寿郎の声と、強く優を抱く小寿郎の腕が震えていた。
優も一瞬だが、さっきの朝霧との別れの痛みがやわらぎ、小寿郎と抱き合った。
そして暫く、二人共々動けないでいたが…
やがて小寿郎が、優を強く抱き締めたまま静かに呟いた。
「ハル…お前の体もこっちへ来たんだ。今から…今度こそ…私をお前の式神にしろ!今から契約をするぞ」
「えっ?今っ?今から?…」
優は、小寿郎から体を離し戸惑った。
だが、その優の腕を小寿郎は引っ張り逃さず、怖い位真剣に言った。
「今しないでいつする?私は、お前と一番格の高い式神契約をする。終身契約だ。そして、私が死んでもお前は無事だが、お前が死ねば私も死ぬ契約をする」
「えぇ?!!!」
「ハル。もう逃さんからな…今日こそ、私をお前のモノにしろ!」
小寿郎の白皙の仮面の目の形に空いた二つの穴から…
小寿郎の金色の瞳がキラキラ煌めいて、優を一心に見詰めていた。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
ぼくのうた きみのこえ~発情期を抑えるために番になることは許されますか?~
つきよの
BL
「璃玖が発情期を迎える時、必ず璃玖の前に戻ってきて、もう一度告白する。璃玖とデビューして番になるために」
「なに言って……」
「璃玖と番になるのは俺だ」
好きだけでは一緒にいられない。
運命に抗うか、それとも従うことしかできないのか……。
世代の違う二組が運命の番の力に翻弄され、糸は複雑に絡み合う。
発情期抑制剤は発達したが、まだまだΩ差別が残るこの世界。
アイドルデビューを目指そうと約束した璃玖と一樹だったが、璃玖がΩで抑制剤が効かない可能性が……。
それを知った一樹は、璃玖に想いを伝えるが……。
迷う璃玖の前に元人気アイドルの聖が現れ、そっと手を差し出す。
「ねぇ、璃玖君は……変わりたいと思わないの?」
好きな人を運命の相手に奪われてしまった聖が、璃玖に近づいた本当の狙いとは……。
illustration:玖森様
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる