殉剣の焔

みゃー

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兄弟

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春頼は、つるべ井戸に着き持っていた洋燈を地面に置き、水を汲み口をゆすぐ。

そして、ペッと口の中のものを地面に吐く。

すると、さっき父に何発か殴られた時の血が混ざっていた。

「春頼…」

その背中に、春陽が小さく呼びかけた。

春頼は、一度は井戸の縁をぐっと握り締め下を向いた。

しかし、たまらないと言う勢いで春陽に向かい走り、春陽の体を抱き締め呟いた。

今や、弟の春頼の方が遥かに逞しくて、春陽はスッポリと弟の体の中に収まってしまっていた。

「兄上…兄上…どうして?どうして?私は兄上と共にいたらいけないのですか?私は、荒清神社の神主の地位もいらない。美しい妻もいらない…ただ、兄上のお側にいたい。私は、ただ、ただそれだけでいいと思っているのに…お側に、ただお側にいる事すらも叶わないのでですか?」

「春頼…」

春陽は、戸惑った。

無論、春陽の中にいた優もだ。

(兄弟って…こんな感じが普通なのかな?)

優は超ガチガチに固まって、自分も春頼の体の温もりを感じていた。

すると…

ポツ…ポツ…ポツ…と、上から…

春頼の涙が春陽の顔に落ちる。

「父上が何と言おうと…私も、私も、兄上と一緒に城に、城に参ります…」

やはり、喧嘩の原因は自分かと…
春陽は顔を更に曇らせた。

「春頼…お前の気持ちは嬉しい…
嬉しいが、頼む、お前はここに残って、神社と父上と母上、村の皆の事を守ってくれ」

春陽は、兄より成長の著しい弟に抱きつくような感じで抱き締めた。

今の春頼の中に、自分より小さかった頃の弟の姿を重ねながら…

「あっ…兄上!」

春頼は叫び、体同士密着させたままで兄の顔を見た。

春陽は自分の手でそっと、弟の両頬の涙を拭いながら諭す。

「これから皆、厳しい道を歩まねばならん…頼む、ここに残り、都倉の城に出仕する私の代わりに皆を守ってくれ…」

それでも…

春頼は、絶望の表情で首を何度も横に振った。

「兄上…嫌です…私は、絶対に嫌です!兄上と共にいられないなら…
私は死んだ方がマシだ!」

春頼は、春陽から離れ暗闇の中に走り消えた。

「春頼!」

その春陽の絶叫を、近くの物影から朝霧が聞いていた。

春陽が都倉の城に召喚された事。

そして…

春頼の気持ちもしっかりと耳に入っていた。

朝霧は何かを思い、ぐっと両手に拳を握った。

















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