86 / 177
口付け
しおりを挟む
(しまった!)
優は、目の前の前世の藍に、その青い瞳も知られてしまった。
それにまさか…
優は観月春陽の生まれ変わりで、目の前の前世の藍自身の生まれ変わりに、未来からこの時代に飛ばされて来たとは言える訳が無い。
「くっ!離せ!」
優が逃れようと藻掻くが、藍の優を抱く左腕は驚く程びくともしない。
淫魔として完全覚醒している藍だけに、その腕力は強力だ。
そしてそれ所か急に、又優を強く両腕で抱き締めてきた。
優は頭まで抱き込まれ、藍の、着痩せする小袖越しのたくましい胸板に顔を深く埋められる。
そこから甘い匂いと血生臭さが溢れていて、優は頭がクラクラしだす。
それでも優が暴れると、今度藍は、後ろ向きに優を乱暴に軽々肩に担ぎ上げ歩き出した。
「離せ!離せぇ!」
広大な屋敷に、優の叫びが響く。
「フフッ…」
藍は余裕の、楽し気な笑みを浮かべた。
やがて軽々と優を抱えたまま、藍がとある部屋の襖をバンッと勢い良く開けた。
そこは、紅い壁と紅い襖に囲まれ、広い畳の上に大きな紅い褥が敷いてある。
そしてすでに、部屋の端の二つの背の高い燭台の蝋に、妖しくゆらゆらと火が揺れていて…
頭がおかしくなりそうな甘美な香りが充満していた。
途端に藍は、優をかなり分厚い柔らかい褥の上に乱暴に放り投げた。
優は青ざめ褥から逃れようとしたが…
優は、上半身起きあがれただけ
で、褥の上で膝立ちの藍に背後から抱き締められてしまった。
「くそっ!離せ!離せ!」
尚暴れる優に、藍の抱擁が更に強くなる。
それに優は、手足を封じられ息苦しさを感じ必死に喘ぐ。
「はぁ…」
不意に藍が、後ろから暴れる優の長い黒髪に顔を埋め頬ずりし、何故か深い息を吐いた。
まるで、やっと安住の地に辿り着いた旅人のような…
そして、暴れて乱れた着流しの小袖から見える優の左肩の素肌に、
藍はそっと唇を寄せ…
おぞましい程優しく…口付けた。
優は、目の前の前世の藍に、その青い瞳も知られてしまった。
それにまさか…
優は観月春陽の生まれ変わりで、目の前の前世の藍自身の生まれ変わりに、未来からこの時代に飛ばされて来たとは言える訳が無い。
「くっ!離せ!」
優が逃れようと藻掻くが、藍の優を抱く左腕は驚く程びくともしない。
淫魔として完全覚醒している藍だけに、その腕力は強力だ。
そしてそれ所か急に、又優を強く両腕で抱き締めてきた。
優は頭まで抱き込まれ、藍の、着痩せする小袖越しのたくましい胸板に顔を深く埋められる。
そこから甘い匂いと血生臭さが溢れていて、優は頭がクラクラしだす。
それでも優が暴れると、今度藍は、後ろ向きに優を乱暴に軽々肩に担ぎ上げ歩き出した。
「離せ!離せぇ!」
広大な屋敷に、優の叫びが響く。
「フフッ…」
藍は余裕の、楽し気な笑みを浮かべた。
やがて軽々と優を抱えたまま、藍がとある部屋の襖をバンッと勢い良く開けた。
そこは、紅い壁と紅い襖に囲まれ、広い畳の上に大きな紅い褥が敷いてある。
そしてすでに、部屋の端の二つの背の高い燭台の蝋に、妖しくゆらゆらと火が揺れていて…
頭がおかしくなりそうな甘美な香りが充満していた。
途端に藍は、優をかなり分厚い柔らかい褥の上に乱暴に放り投げた。
優は青ざめ褥から逃れようとしたが…
優は、上半身起きあがれただけ
で、褥の上で膝立ちの藍に背後から抱き締められてしまった。
「くそっ!離せ!離せ!」
尚暴れる優に、藍の抱擁が更に強くなる。
それに優は、手足を封じられ息苦しさを感じ必死に喘ぐ。
「はぁ…」
不意に藍が、後ろから暴れる優の長い黒髪に顔を埋め頬ずりし、何故か深い息を吐いた。
まるで、やっと安住の地に辿り着いた旅人のような…
そして、暴れて乱れた着流しの小袖から見える優の左肩の素肌に、
藍はそっと唇を寄せ…
おぞましい程優しく…口付けた。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ぼくのうた きみのこえ~発情期を抑えるために番になることは許されますか?~
つきよの
BL
「璃玖が発情期を迎える時、必ず璃玖の前に戻ってきて、もう一度告白する。璃玖とデビューして番になるために」
「なに言って……」
「璃玖と番になるのは俺だ」
好きだけでは一緒にいられない。
運命に抗うか、それとも従うことしかできないのか……。
世代の違う二組が運命の番の力に翻弄され、糸は複雑に絡み合う。
発情期抑制剤は発達したが、まだまだΩ差別が残るこの世界。
アイドルデビューを目指そうと約束した璃玖と一樹だったが、璃玖がΩで抑制剤が効かない可能性が……。
それを知った一樹は、璃玖に想いを伝えるが……。
迷う璃玖の前に元人気アイドルの聖が現れ、そっと手を差し出す。
「ねぇ、璃玖君は……変わりたいと思わないの?」
好きな人を運命の相手に奪われてしまった聖が、璃玖に近づいた本当の狙いとは……。
illustration:玖森様
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる