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睦(むつぶ)
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その朝霧の答えに、安堵したのも束の間。
前世と言うフレーズに、優のボヤける頭が、急にあの惨状を思い出し動揺する。
「さっ!定吉さんが!定吉さん
が!定吉さんは?それに、小寿郎が!」
朝霧もあの時、前世の自分の目を通して、遠くの木に血だらけでもたれていたのが前世の定吉だというのは確認していたし、小寿郎が崖を落ちて行ったのは見た。
しかし、前世の自分の中に閉じ込められたまま、どうする事も出来なかった。
そして、その一瞬の回想後、そっと優を抱く力を更に強めた。
「今、前世の定吉と小寿郎がどうしているのかは…分かりません。前世の私は、春陽様を助けるのに必死で…今は春陽様と二人近くの村にやっと辿りつき保護を受けてます」
「どうしよう!定吉さんが!定吉さんが春陽さんと入れ替わっていた俺を庇ってケガを!それに、小寿郎も前世の俺を庇ってあんな事に!俺がこの時代へ来た所為であんな目に…定吉さんが…小寿郎が…し…死んだり…したら…俺…俺…」
優の体が酷く震えている。
「落ち着いてください…主…主…
貴方の所為ではありません!」
朝霧は、あの銀髪の男の後ろ姿を思い出す。
しかし、優にその名を聞かせると思うだけでも朝霧の腹の底に異様にドロドロとしたモノが渦巻くので言わなかった。
「で…でも!」
「西宮…いや…春頼様が、きっと、きっと定吉を何とかしてくれているはずです…それに…定吉は、そんな簡単にくたばる奴ではありません…小寿郎も、恐らく真矢さんと一緒にこの時代に来たはずです。今は、今は…真矢さんが助けてくれているのを願うしか…」
朝霧が、苦し気に己の唇を噛んだ。
「やっぱり、あの守護武者は、真矢さんなんですね。でも!ここは何処ですか?早く、早く、定吉さんの所に、小寿郎の所にいかなくちゃ!」
優が起き上がろうとしたので、朝霧はそれを止め、優の上から覆いかぶさり布団に両腕を付いた。
「あっ…朝霧さん…」
仰向けの優のすぐ上に朝霧の顔があり、さっきまで抱き合っていたにも関わらず優は赤面して戸惑う。
「ここが何処でもいい。けれど、ここは安全な気がします。だから今は、貴方自身を癒す事が先決です」
「でも…でも…」
「主…」
上から見詰める朝霧の視線が優しいのに否と言えない程に強くて、優は動けない。
「主…顔色がまだ悪い、貴方の疲弊も酷いはずです」
確かに優には、今回の事で分かった事があった。
「朝霧さん…俺、春陽さんが崖から落ちた後、春陽さんと精神が入れ替わってしまって春陽さんになりすまさなくちゃならなくなって…追い詰められて紅慶を召喚したんです。でも、刀を召喚したり妖力を使うと、俺自身も俺の入った体も消耗するんだと思う…でも…きっとすぐ元に戻ると…」
「ダメです!」
朝霧は、優の体を上から抱き締めるとすぐ横抱きにもっていった。
「前世の定吉が小寿郎が、貴方を助けた事を無駄にするつもりですか?」
その体勢のまま、優が顔を上に向けると、朝霧と視線が合った。
「そんな…そんなつもりは…」
「なら今は、元気を取り戻す事を考えて下さい。以前、暗がりの橋で見た時は、前世の定吉があの定吉と別人に見えましたが、やはり変わりは無かったのですね。定吉は貴方と二人きりの時、貴方に決して無体な事はしなかったでしょうね?」
「あっ…えっ…はい…」
優は、思わず返事がたどたどしくなってしまった。
「なっ!何か、何かされたのですか?!」
ガバッと朝霧が上半身を起こし、顔を引き攣らせた。
「いや…本当に、本当に何もされてません。ただ…」
「ただ?!」
朝霧は慌てて、優の顔を覗き込
む。
「ただ、前世の定吉さんは、ちょっと違うって言うか、もっともっと野性っぽいって言うか…でも、俺を庇ってあんなに怪我をして…やっぱり、定吉さんは定吉さんだったんです」
優の両目から、耐え切れず涙が溢れ出た。
朝霧は、それを優しく右の親指で拭くと、そっと、けれど強く優を抱き締めた。
すると、何故か、又優の意識がぐらつき始める。
「どうして?いやだ…又眠くなってきた…いやだ、定吉さんと小寿郎の所へ行きたい!それにそれに…又目が覚めたら生まれ変わりの朝霧さんと離れ離れになるのはイヤだ!このまま朝霧さんと、朝霧さんと一緒にいたい!」
優は、朝霧の胸に顔を埋め、イヤイヤをするように顔を振った。
優が、自分の臣下と離れたく無いと言う意味で、不安だからそう言っているのだと朝霧は思いながらも…
それでも、朝霧の胸の奥が熱くなる。
そして、たまたま優の頭が近くにあったのを好機に、分からないよう優の髪に口付けして甘い低音で囁いた。
「主…私も…貴方と離れたくない…
貴方と、ずっとずっと一緒にいたい…」
突然、朝霧は、さっき自分の前世が、春陽に向かい恋情の告白をしたのを思い出す。
そしてそれを、春陽の生まれ変わりの優も聞いていたか?覚えているか?尋ねたくなった。
しかし、この状況でと…戸惑い、優の長い美しい黒髪を優しく撫でて迷う内に、優は又眠ってしまった。
前世と言うフレーズに、優のボヤける頭が、急にあの惨状を思い出し動揺する。
「さっ!定吉さんが!定吉さん
が!定吉さんは?それに、小寿郎が!」
朝霧もあの時、前世の自分の目を通して、遠くの木に血だらけでもたれていたのが前世の定吉だというのは確認していたし、小寿郎が崖を落ちて行ったのは見た。
しかし、前世の自分の中に閉じ込められたまま、どうする事も出来なかった。
そして、その一瞬の回想後、そっと優を抱く力を更に強めた。
「今、前世の定吉と小寿郎がどうしているのかは…分かりません。前世の私は、春陽様を助けるのに必死で…今は春陽様と二人近くの村にやっと辿りつき保護を受けてます」
「どうしよう!定吉さんが!定吉さんが春陽さんと入れ替わっていた俺を庇ってケガを!それに、小寿郎も前世の俺を庇ってあんな事に!俺がこの時代へ来た所為であんな目に…定吉さんが…小寿郎が…し…死んだり…したら…俺…俺…」
優の体が酷く震えている。
「落ち着いてください…主…主…
貴方の所為ではありません!」
朝霧は、あの銀髪の男の後ろ姿を思い出す。
しかし、優にその名を聞かせると思うだけでも朝霧の腹の底に異様にドロドロとしたモノが渦巻くので言わなかった。
「で…でも!」
「西宮…いや…春頼様が、きっと、きっと定吉を何とかしてくれているはずです…それに…定吉は、そんな簡単にくたばる奴ではありません…小寿郎も、恐らく真矢さんと一緒にこの時代に来たはずです。今は、今は…真矢さんが助けてくれているのを願うしか…」
朝霧が、苦し気に己の唇を噛んだ。
「やっぱり、あの守護武者は、真矢さんなんですね。でも!ここは何処ですか?早く、早く、定吉さんの所に、小寿郎の所にいかなくちゃ!」
優が起き上がろうとしたので、朝霧はそれを止め、優の上から覆いかぶさり布団に両腕を付いた。
「あっ…朝霧さん…」
仰向けの優のすぐ上に朝霧の顔があり、さっきまで抱き合っていたにも関わらず優は赤面して戸惑う。
「ここが何処でもいい。けれど、ここは安全な気がします。だから今は、貴方自身を癒す事が先決です」
「でも…でも…」
「主…」
上から見詰める朝霧の視線が優しいのに否と言えない程に強くて、優は動けない。
「主…顔色がまだ悪い、貴方の疲弊も酷いはずです」
確かに優には、今回の事で分かった事があった。
「朝霧さん…俺、春陽さんが崖から落ちた後、春陽さんと精神が入れ替わってしまって春陽さんになりすまさなくちゃならなくなって…追い詰められて紅慶を召喚したんです。でも、刀を召喚したり妖力を使うと、俺自身も俺の入った体も消耗するんだと思う…でも…きっとすぐ元に戻ると…」
「ダメです!」
朝霧は、優の体を上から抱き締めるとすぐ横抱きにもっていった。
「前世の定吉が小寿郎が、貴方を助けた事を無駄にするつもりですか?」
その体勢のまま、優が顔を上に向けると、朝霧と視線が合った。
「そんな…そんなつもりは…」
「なら今は、元気を取り戻す事を考えて下さい。以前、暗がりの橋で見た時は、前世の定吉があの定吉と別人に見えましたが、やはり変わりは無かったのですね。定吉は貴方と二人きりの時、貴方に決して無体な事はしなかったでしょうね?」
「あっ…えっ…はい…」
優は、思わず返事がたどたどしくなってしまった。
「なっ!何か、何かされたのですか?!」
ガバッと朝霧が上半身を起こし、顔を引き攣らせた。
「いや…本当に、本当に何もされてません。ただ…」
「ただ?!」
朝霧は慌てて、優の顔を覗き込
む。
「ただ、前世の定吉さんは、ちょっと違うって言うか、もっともっと野性っぽいって言うか…でも、俺を庇ってあんなに怪我をして…やっぱり、定吉さんは定吉さんだったんです」
優の両目から、耐え切れず涙が溢れ出た。
朝霧は、それを優しく右の親指で拭くと、そっと、けれど強く優を抱き締めた。
すると、何故か、又優の意識がぐらつき始める。
「どうして?いやだ…又眠くなってきた…いやだ、定吉さんと小寿郎の所へ行きたい!それにそれに…又目が覚めたら生まれ変わりの朝霧さんと離れ離れになるのはイヤだ!このまま朝霧さんと、朝霧さんと一緒にいたい!」
優は、朝霧の胸に顔を埋め、イヤイヤをするように顔を振った。
優が、自分の臣下と離れたく無いと言う意味で、不安だからそう言っているのだと朝霧は思いながらも…
それでも、朝霧の胸の奥が熱くなる。
そして、たまたま優の頭が近くにあったのを好機に、分からないよう優の髪に口付けして甘い低音で囁いた。
「主…私も…貴方と離れたくない…
貴方と、ずっとずっと一緒にいたい…」
突然、朝霧は、さっき自分の前世が、春陽に向かい恋情の告白をしたのを思い出す。
そしてそれを、春陽の生まれ変わりの優も聞いていたか?覚えているか?尋ねたくなった。
しかし、この状況でと…戸惑い、優の長い美しい黒髪を優しく撫でて迷う内に、優は又眠ってしまった。
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