殉剣の焔

みゃー

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献身2

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春陽の美しい体に懊悩しながも朝霧は、なんとか春陽を寝間着の小袖に着替えさせた。

しばらくして…

「み…水…」

春陽が、喉の乾きを訴えた。

朝霧は、さっと自身の口に用意されていた器の中の水を含み、そっと近づき春陽の唇に口付けて春陽の口に流し移す。

春陽はすぐに飲み込み、それでもまだ欲っしているようで、

朝霧は、再度春陽に口移しで水を与えた。

その後…

唇を少し離し様子を見ると、ようやく春陽は落ち着いたようだった。

「ハル…」

朝霧が春陽の顔の近くで、春陽の顔を撫でながら呟いた。

こんな時にと、又自分を叱咤したが…

たまらずに朝霧は、今度はただ口に何も含まずに、春陽の唇に朝霧の唇を優しく重ねた。

ただ…ただ…

春陽への、激しく深い恋情のままに…

だが、障子越しの廊下から、誰かがこちらに向かってくる足音がして、朝霧は、さっと春陽を寝かし自分は正座した。

来たのは老医師だった。

すぐに診察が始まったが、やはり、医師
とはいえ…

春陽の美しい裸体を他の誰かに見せる事に、朝霧はその間ずっと不快そうに眉根を寄せた。

医師は、酷い疲労と低体温に効く漢方をすぐ処方し、春陽に飲ませるよう後を託そうとした。

しかし…

「寒い…寒い…」

春陽が、うわ言で呟いた。

「ハル!ハル!」

朝霧は、春陽の顔を撫でると、又体温が下がっている気がした。

「寒い…寒い…貴…継…貴…継…」

意識の無い春陽の右腕が、朝霧を求める
ように天井に向かい伸びた。

朝霧はすぐにその手を取って、両手で握り締めた。

「貴方様は、この患者様と親しいご関係ですか?」

おもむろに医師が朝霧に問うた。

「ええ…幼馴染です…」

ここでは、春陽への本当の気持ちなど言えなかった。

「そうですか、ならばお願いが御
座います。どうか同じ布団に入ってこの患者様を温めて差し上げてはくださいませぬか?体温が異常に下がってきておりますので。この季節で木炭の行火(あんか)を使っては、返って暑すぎて体の水
が抜け過ぎてしまう…」

「分かりました。では、長と世話
人には、ただ暫くゆっくり休むので、こちらから声をかけるまでは部屋には誰も来ないようにとお伝え下さい」

朝霧は、迷う事無く即答した。

医師は頷き、すぐ部屋を後にし
た。

朝霧は、二つの漢方を二回に分けて水に含ませ口移しで春陽に与えて、意を決して布団の中、春陽の横に入った。

そして…

朝霧は、痛い位勃起し始めた自身の陰茎を我慢し、春陽の体を抱き寄せ、朝霧の体温で温め始めた。

「たか…つぐ…」

意識が無いにも関わらず、待っていたとばかりに、春陽の方も朝霧に抱き付いた。

一瞬、驚きと共に、情け無くも吐精しかけた朝霧だったが、なんとか我慢した。

天国であり、地獄の業火に炙られているかのような刻が始まる。

春陽が自分と一緒だと思うと、胸の鼓動も収まる事が無い。

「俺の体温だけじゃない…俺の全てをお前にならやってもいい…」

そう囁き、朝霧は春陽の額に口付けを落とし…

強く、強く春陽を抱き締めた。

朝霧は、睡魔と勃ち上がった朝霧自身の陰茎と闘いながら、春陽を布団の中で温めながら見守った。

暫くして…

薬のお陰が、朝霧の献身か…

春陽の体温が、やっと戻り始め
た。

朝霧は、春陽の温かい体温を確認すると、ようやく自分も春陽を抱いたまま眠りに着いた。

その同じ時…

優と、生まれ変わりの朝霧も…

さっきまでそれぞれがいた体から抜け出して、違う世界で再会していた。
















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