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夜分
しおりを挟む優の耳に、背上から朝霧が唇を近づけて囁やく。
「貴方は、何も気に病む事はありません。こうするのは、私達がただの主従関係だから…私にも近々、家の為に婚約者が決まります。ずっと、ずっと…私は、婚約を拒否してきました。しかし、もう、自分の気持ちを諦める時が来たようです。私は、ただ臣下の義務を果たし、貴方は、ただそれを受けると言うだけの話しです…」
朝霧の脳裏に誰とも知らない、優の想い人だと、朝霧が信じ込んでいる者の存在が浮かんでいた。
しかし、本当に優には、朝霧が考えている様な想い人などいない。
朝霧さんに、婚約者が決まる…
婚約者が…
優は、頭の中が真っ白になる。
だが、それは一瞬で、すぐ苦しい発情の息は戻ってきた。
そして、その双眼から突然、涙が溢れ出す。
頭の中がパニックな上、自分が泣いている理由が分からない事がさらに混乱に追い討ちをかける。
身体を小刻みに震わせながら泣く優を、又朝霧は掛け布団の上からかぶさり抱いた。
「主。発情が、発情が苦しいのでしょう?今、私が出させて差し上げますからね…」
ぐっと、朝霧の手が、まだうつ伏せの優の股に強引に入り込み、優の手ごと肉茎を扱いた。
「あぅっっ!…」
僅か一擦りで、優は右に身体を向
け反りながら又白液を吹いた。
その後、朝霧は、寝ながらハアハアと息を吐く優自身の手を取り、その指から手の平に付いた淫汁を雄の顔でペロペロと舌で全てをキレイに舐め上げ自らの体内に入れた。
舌が優しくかつ卑猥に動く度、優の身体がピクピクと反応した。
やがてクイッと、優の顔だけ天井を向けさせ、上から朝霧は見下ろす。
そして優の顎を持ち、その乱れて顔に掛かった髪をそっと整えると
、今度は顔を近づけようとする。
あっ…キス…される…
優の鼓動が甘く甘く跳ねた。
しかし…
ヒュンっと速い音を立て、黒い何かが二人の頭上スレスレをめがけ飛んて来て、朝霧は優の身体を抱いて避けたが、それは壁に突き刺さり、そこに傷跡だけ残し消えた
。
朝霧は、尚素早く反応し枕元の魔刀を鞘ごと取り抜き、主を庇い前に立つ。
優がボウっとする意識の中、右側を真っ直ぐ見ると少し離れた壁際に藍が立っていた。
髪も短く、黒の薄手のコートと黒いズボンを履いていたが間違いない。
どんな姿でも、見間違える訳が無い…
「あ……い…」
いつから見ていたのか?
優は混乱するが、つい今なら掛け布団のお陰で直接肉茎や射精は見られていないはずだ。
そんな中、優の両目から流れる涙を見て、何を思ったのか藍が一瞬動揺したかの様に目を大きく見開くと、次には眇めた。
そして、優では無く、朝霧と藍が息すら忘れているかの様に静かに
、しかし激しく睨み合う。
「ハル、いい御身分だな。貴様の駄犬三匹はとうに過去にほうり出されて今頃どうなっているかも分からないと言うのに…ご主人様はこんな所で平然と…」
藍は、優に向かって喋っているはずなのに朝霧から一切視線を逸らさず、尚きっと、憎しみしか宿さない目で睨んだ。
「平然?平然な訳無い!」
優が叫ぶと、藍の相好が一気に崩れた。
「くっ、ふふっ、ははははっ…」
藍の声高な笑い声が、部屋に響く
。
「何がおかしい?!」
優が酷く不快そうに強く尋ねると
、藍は今度は優に向かいニィっと笑った。
「だって、可笑しいだろ?ハル!お前程私をイライラさせる奴は他には絶対いないからな!本当にお前は、私をイライラさせる天才だよ!」
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