30 / 178
夜分
しおりを挟む優の耳に、背上から朝霧が唇を近づけて囁やく。
「貴方は、何も気に病む事はありません。こうするのは、私達がただの主従関係だから…私にも近々、家の為に婚約者が決まります。ずっと、ずっと…私は、婚約を拒否してきました。しかし、もう、自分の気持ちを諦める時が来たようです。私は、ただ臣下の義務を果たし、貴方は、ただそれを受けると言うだけの話しです…」
朝霧の脳裏に誰とも知らない、優の想い人だと、朝霧が信じ込んでいる者の存在が浮かんでいた。
しかし、本当に優には、朝霧が考えている様な想い人などいない。
朝霧さんに、婚約者が決まる…
婚約者が…
優は、頭の中が真っ白になる。
だが、それは一瞬で、すぐ苦しい発情の息は戻ってきた。
そして、その双眼から突然、涙が溢れ出す。
頭の中がパニックな上、自分が泣いている理由が分からない事がさらに混乱に追い討ちをかける。
身体を小刻みに震わせながら泣く優を、又朝霧は掛け布団の上からかぶさり抱いた。
「主。発情が、発情が苦しいのでしょう?今、私が出させて差し上げますからね…」
ぐっと、朝霧の手が、まだうつ伏せの優の股に強引に入り込み、優の手ごと肉茎を扱いた。
「あぅっっ!…」
僅か一擦りで、優は右に身体を向
け反りながら又白液を吹いた。
その後、朝霧は、寝ながらハアハアと息を吐く優自身の手を取り、その指から手の平に付いた淫汁を雄の顔でペロペロと舌で全てをキレイに舐め上げ自らの体内に入れた。
舌が優しくかつ卑猥に動く度、優の身体がピクピクと反応した。
やがてクイッと、優の顔だけ天井を向けさせ、上から朝霧は見下ろす。
そして優の顎を持ち、その乱れて顔に掛かった髪をそっと整えると
、今度は顔を近づけようとする。
あっ…キス…される…
優の鼓動が甘く甘く跳ねた。
しかし…
ヒュンっと速い音を立て、黒い何かが二人の頭上スレスレをめがけ飛んて来て、朝霧は優の身体を抱いて避けたが、それは壁に突き刺さり、そこに傷跡だけ残し消えた
。
朝霧は、尚素早く反応し枕元の魔刀を鞘ごと取り抜き、主を庇い前に立つ。
優がボウっとする意識の中、右側を真っ直ぐ見ると少し離れた壁際に藍が立っていた。
髪も短く、黒の薄手のコートと黒いズボンを履いていたが間違いない。
どんな姿でも、見間違える訳が無い…
「あ……い…」
いつから見ていたのか?
優は混乱するが、つい今なら掛け布団のお陰で直接肉茎や射精は見られていないはずだ。
そんな中、優の両目から流れる涙を見て、何を思ったのか藍が一瞬動揺したかの様に目を大きく見開くと、次には眇めた。
そして、優では無く、朝霧と藍が息すら忘れているかの様に静かに
、しかし激しく睨み合う。
「ハル、いい御身分だな。貴様の駄犬三匹はとうに過去にほうり出されて今頃どうなっているかも分からないと言うのに…ご主人様はこんな所で平然と…」
藍は、優に向かって喋っているはずなのに朝霧から一切視線を逸らさず、尚きっと、憎しみしか宿さない目で睨んだ。
「平然?平然な訳無い!」
優が叫ぶと、藍の相好が一気に崩れた。
「くっ、ふふっ、ははははっ…」
藍の声高な笑い声が、部屋に響く
。
「何がおかしい?!」
優が酷く不快そうに強く尋ねると
、藍は今度は優に向かいニィっと笑った。
「だって、可笑しいだろ?ハル!お前程私をイライラさせる奴は他には絶対いないからな!本当にお前は、私をイライラさせる天才だよ!」
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~
斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている
酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる