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目覚め
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春陽は、旧知の村で安全に丸一日眠り続け、ようやく目覚めた。
その間優にどんな事があったなど知らぬままに。
そして優も、春陽の体に帰り又憑依し同時に目覚めた。
春陽の横たわるすぐ傍には前世の朝霧が座っていた。
春陽と前世の朝霧の視線が合った。
「貴…継…お前が、お前が私を助けてくれたんだな…」
春陽は、朝霧に対する贖罪や様々な複雑な感情でそれ以上言葉を出せず、泣きそうになるのを堪えどんな表情をしていいか戸惑う。
それを、一度目を見開き凝視した朝霧だったが…
「ああ…」
町にいた時からのギクシャクが嘘のように春陽に柔らかく微笑んでくれた。
しかしやはり、優と生まれ変わりの朝霧とは、又離れ離れになってしまった。
その絶望が優を襲うが…
優は春陽の目を通し、必ず、必ず、この前世の朝霧の中には、生まれ変わりの朝霧がいるはずだという事を頼りに、不安を打ち消す。
「兄上!」
同時に春頼が叫び、寝たままの春陽の上布団から出ている小袖越しの上半身に抱き着いた。
「春頼…すまない、心配掛けた…」
春陽が右手を弟の頭にやると、春頼がまだ春陽の胸に顔を埋めたまま、およそ武者とは思えない頼りな気な声を出した。
「兄上…兄上…兄上…」
「春頼…春頼…」
春陽は、そのすがりついてくる自分より体の大きな弟がどんなに兄を心配していたか思い知る。
そして、春頼の髪を優しく何度も撫でてやる。
朝霧は、それを見て我慢するように眉根を寄せ、呆れた様な小さい溜め息を付いた。
朝霧が、春陽兄弟の仲睦まじい様を横でこれでもかと見せつけられるのは今だけでなく、小さな頃からいつもの事だったが…
だが、そうしている内、春陽の腹がギュ~と空腹を訴えた。
「兄上!すぐ、すぐ、何かお持ちしますから!」
春頼は、薄っすら涙を貯めていた目元を緩ませて、急ぎ部屋を出
た。
「あっ!それは私が!」
同時に横から、そう叫んだ男がいた。
春陽の横にもう一人、男がいた。
それは、春陽には前に一度見た程度の男だったが、優には馴染み深い真矢だった。
優は春陽の中から、真矢を嬉しい気持ちで見詰めた。
真矢は立ち上がりかけたものの再び正座し、いつもの人タラシの笑顔を春陽に向ける。
そしてこの後の朝霧の話しで、真矢が無事雪菜を村に送り届けた事、春陽が川に流された後の事が分かった。
一つ目の化け物と対峙していた春頼だったが、そこに大勢の援助の武者を連れて真矢が来た。
劣勢が分かったのか、化け物はそそくさと逃げ、その後、定吉は助けられたと言う。
定吉が助かった事に、優は心の底から安堵した。
「あの男!あの男の具合は?今何処にいる?!」
春陽がガバッと起き上がると、取り乱したように朝霧に尋ねた。
優に体を乗っとられていた間も春陽にもちゃんと意識があり、定吉と二人きりで過ごした事も春陽は記憶している。
「大丈夫だ。今、同じこの屋敷で…寝ている…」
朝霧が、春陽が定吉の事を言った途端、さっきあんなに優し気だったのが嘘のように言葉の端々が冷たくなった。
それが不安で、春陽は次の言葉が
喉から出てこなくなり、座敷に嫌な沈黙が訪れた。
それをじっと見ていた真矢は、春陽と朝霧に分からないように溜息を付いてしまう。
そして…
「私も、春頼様のお手伝いに行って参ります…」
春陽と朝霧の恋愛関係がこの世界でもこじれている事を察した真矢は、ここは2人きりにした方がいいとさっと障子を開け座敷を出ようとした。
その間優にどんな事があったなど知らぬままに。
そして優も、春陽の体に帰り又憑依し同時に目覚めた。
春陽の横たわるすぐ傍には前世の朝霧が座っていた。
春陽と前世の朝霧の視線が合った。
「貴…継…お前が、お前が私を助けてくれたんだな…」
春陽は、朝霧に対する贖罪や様々な複雑な感情でそれ以上言葉を出せず、泣きそうになるのを堪えどんな表情をしていいか戸惑う。
それを、一度目を見開き凝視した朝霧だったが…
「ああ…」
町にいた時からのギクシャクが嘘のように春陽に柔らかく微笑んでくれた。
しかしやはり、優と生まれ変わりの朝霧とは、又離れ離れになってしまった。
その絶望が優を襲うが…
優は春陽の目を通し、必ず、必ず、この前世の朝霧の中には、生まれ変わりの朝霧がいるはずだという事を頼りに、不安を打ち消す。
「兄上!」
同時に春頼が叫び、寝たままの春陽の上布団から出ている小袖越しの上半身に抱き着いた。
「春頼…すまない、心配掛けた…」
春陽が右手を弟の頭にやると、春頼がまだ春陽の胸に顔を埋めたまま、およそ武者とは思えない頼りな気な声を出した。
「兄上…兄上…兄上…」
「春頼…春頼…」
春陽は、そのすがりついてくる自分より体の大きな弟がどんなに兄を心配していたか思い知る。
そして、春頼の髪を優しく何度も撫でてやる。
朝霧は、それを見て我慢するように眉根を寄せ、呆れた様な小さい溜め息を付いた。
朝霧が、春陽兄弟の仲睦まじい様を横でこれでもかと見せつけられるのは今だけでなく、小さな頃からいつもの事だったが…
だが、そうしている内、春陽の腹がギュ~と空腹を訴えた。
「兄上!すぐ、すぐ、何かお持ちしますから!」
春頼は、薄っすら涙を貯めていた目元を緩ませて、急ぎ部屋を出
た。
「あっ!それは私が!」
同時に横から、そう叫んだ男がいた。
春陽の横にもう一人、男がいた。
それは、春陽には前に一度見た程度の男だったが、優には馴染み深い真矢だった。
優は春陽の中から、真矢を嬉しい気持ちで見詰めた。
真矢は立ち上がりかけたものの再び正座し、いつもの人タラシの笑顔を春陽に向ける。
そしてこの後の朝霧の話しで、真矢が無事雪菜を村に送り届けた事、春陽が川に流された後の事が分かった。
一つ目の化け物と対峙していた春頼だったが、そこに大勢の援助の武者を連れて真矢が来た。
劣勢が分かったのか、化け物はそそくさと逃げ、その後、定吉は助けられたと言う。
定吉が助かった事に、優は心の底から安堵した。
「あの男!あの男の具合は?今何処にいる?!」
春陽がガバッと起き上がると、取り乱したように朝霧に尋ねた。
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「大丈夫だ。今、同じこの屋敷で…寝ている…」
朝霧が、春陽が定吉の事を言った途端、さっきあんなに優し気だったのが嘘のように言葉の端々が冷たくなった。
それが不安で、春陽は次の言葉が
喉から出てこなくなり、座敷に嫌な沈黙が訪れた。
それをじっと見ていた真矢は、春陽と朝霧に分からないように溜息を付いてしまう。
そして…
「私も、春頼様のお手伝いに行って参ります…」
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