殉剣の焔

みゃー

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回生

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そっと、藍が右腕を横に伸ばすと、その手に黒い障気と共に刃光鋭い刀が現れ握られた。


「朝霧。貴様の主は、まだこんな芸当は出来まい?あっ、そうか、剣を呼ぶ所か、間抜けにも盗まれたんだったな」


楽しそうに嫌味を並べる藍に、優もだったが、更に朝霧の方が忌々しそうに目を眇め柄を握り直す。


「ハル。これが最後の通告だ…ここからは、今のお前では絶対出られん。あのバアさんも、助け出すには時間がかかるだろう。その間に過去が変わるか、お前の置いてきた身体がやがて魂が長期に抜けた事で死に至るか、どちらが早いかだ…」


「な…に?」


藍の言葉に、優は言葉を失う。


「私と一緒に来い。そうすれば、お前だけは助かる」


藍のその言葉には、一貫性が無い



優を喰うと言ったり、助けてやると言ってみたり。


だが、さっきからの尊大な態度が嘘の様に、地獄から来た女神の様に微笑む。


その誘惑が終わると、ガキンと刃がぶつかり合う音が部屋に響く。


疾風の様に朝霧が藍に斬りつけ、互いの刀が交差した。


優がア然としている間にも、広い室内で二人は何度も刃を振り、斬りつけ、己の剣で相手の攻撃を受け止める。


目の前の事は現実なのに、あまりにゲームの世界を見ている様で、優にリアル感が湧いてこない。


「ある…じ…早く、タヌキの所へ!



朝霧が藍と刃同士を押し付け合いながら叫んだ。


「朝霧さん!」


やはり何も出来ない自分がくやしくて、優は拳を握りながら叫んだ



「主!早く!」


尚押し合いながら、朝霧の声が呻く。


だが、いつも涼しい顔の藍の方も
、今は余り余裕が無い。


藍も強いが、朝霧も強い。


又刃が離れ、互いに間合いを計る



その時だった。


「何やってんだ!お前等!」


突然、浴衣姿の真矢が顔色を変え
、障子を開けた。


「真矢さん!」


優は、藍の左手が真矢に向けられた瞬間、攻撃されるのを察知した



それは、朝霧も同様だったが、優の方が距離が近い分、朝霧より早く真矢の前に立った。


「ハル!!!」


さっきと同じ、黒い鋭利な物が真矢を庇う優を襲おうとして、朝霧は、咄嗟に藍に体当たりして邪魔をして、再びこの世の終わりの様に絶叫した。


「ハル…ハル…」


ハル…とうわ言の様に名を呼ぶ朝霧の背中を憎らし気に見て、その後藍は優の方を見た。


優は、寸前の所で真矢を押し倒し
、朝霧の機転で攻撃が逸れた事もあり自分も難を逃れていた。


そして、ふらふらと立ち上がると
、今までと少し違う目つきをした



「お前か、ハル…今度こそ、今度こそ、久しぶりだな…」


藍は、酷く満足気な凶悪な笑顔になった。


朝霧も、ほっとしたのも束の間、優の様子が少し違うと違和感を持つ。


「紅慶(べによし)」


突然、優が何かの名を呟き右手を腰まで上げると、激しい風が下から吹き上がり周囲を渦を巻いて旋回する。


そして、平然とその風を受けながら髪を空に美しく舞わせ、右手に突然現れた刀を握った。


「ば、馬鹿な…剣は…剣は…」


藍が眉間に皺を寄せると、優はふっと笑った。


いや、正確に言えば、とうに優では無かったのだが…


身体を乗っ取られたと言うのが正しくて、優の魂は今表に現れている人物に押さえられ、意識はあるが思う事以外は喋る事も出来ず、己の身体なのに動かす事も出来ない。


何だ?これ…


本物の優は頭の中で慌てるが、それは今、表に現れている人物に伝わらないし、乗っ取った人物の思っている事も分からない。


「藍。残念だったな。この空間なら、行方不明のものでも、魂だけ呼ぶ事は出来る。そして、具現化も…お前に、こんな芸当が出来るのか?」


優、いや、日頃同一化している優の魂から突然分離し身体を乗っ取った春陽の声は、日頃の穏やかな優の声色で無くどこか冷静だ。


さっと風が止み、今度は刀を手にした春陽が、朝霧の横を鬼神の如く行き藍に斬りつけた。


いつもの主ののんびりした動きと全く違う。


貴方は…まさか…


朝霧は、瞠目した。








































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