約1277日の傷(両想いだけど片想い)

みゃー

文字の大きさ
上 下
3 / 5

コッペパン

しおりを挟む
「もしかして…あーちゃん?」

…と、普通なら、笑顔で声を掛けるべきなのだろうと、翔太は思うが…

しかし、あーちゃんに無視された過去が、翔太の脳裏に昨日の事のように鮮やかに蘇った。

そんなガキんこの昔の事に拘るなんて、いつもの自分らしく無いとも思う。

別れた過去の彼女達と同じように
、何かいざこざがあっても又普通に接しようとする事が出来るのが自分の良い所なのにと…

けれど…

(きっとあーちゃんは、俺みたいに無視の事なんていつまでも覚えてる訳ないし…第一俺の事自体覚えてる訳ないしな…)

ほんの数分の事だったが、多分、翔太は、固まりながらグルグルグルと100年分位は考えた。

声を掛けるのは止めよう…と…

翔太は、ここはあーちゃんの事を忘れた振りを決め込む事を決意した。

やがて…

ゆっくりと、少年が会計に翔太の元にやって来て、カウンターにパンを載せたトレーを置いた。

(普通に…普通に…落ち着いて…)

少年の顔を見られないままでそう自分に言い聞かせ、心臓をバクバクさせながら翔太はレジを動かそうとした。

「電子マネーで…」

少年が、声変わり済の声で呟くように言った。

今も忘れない、あのあーちゃんの声とはかけ離れた低いイケボに、翔太はかなりがっかりした。

それでも…

「あっ、はい!」

そう返答し、翔太は、やっと間近で少年の顔をチラリと見た。

二重なのにスッキリした目元で、

すっとした高い鼻、キリっとした唇は、やはりどのパーツも女性のように繊細。

やはり、そのどれもが、やはり全てあのあーちゃんに似ていた。

しかし、仮に、今、翔太の目の前にいるのがあーちゃんだとしても
、あの女の子のようにかわいいあーちゃんではなく、

もう、大学生と言ってもいい位の自分より遙かなイケメン。

全く、知らない人の感じもして、
翔太の頭は増々混乱した。

しかし、少年は、自分とは全く別格の人種に翔太には見える。

母親に、「チャラい」だの「そんな事してないで受験勉強しなさい
!」と毎日のように言われながら


髪型や何やら色々努力して、やっと日々中の上を、そして、あわよくば上の下をなんとか目指す翔太とは容姿の次元の違う男に…

それでも、仕事はするので少年に尋ねる。

「あの…レジ袋、ご入用ですか?」

「うん…」

そう返して、少年が翔太を見て、互いに目がバッチリ合った。

そして、上目遣いで、少年が翔太を見詰めた。

(ヤバ!めちゃくちゃイケメン!


翔太は内心そう思いながら、手が震えそうな焦りを必死で隠し、目をさっと挙動不審に逸す。

「すいません…レジ袋、3円、頂きますがよろしいですか?」

「うん…」

翔太は浮ついていて、やっとトレーの商品に目をやる。

そこには、

この店自慢の、スクランブルエッグ入りコッペパンが二つ置いてあった。

翔太は、思わずドキッとした。

このコッペパンには、あーちゃんとの懐かしい思い出が、キラ星の如く沢山あったから。

このスクランブルエッグコッペパンこそ…

あーちゃんと2人で、仲良くよく食べた思い出の味だった。
























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

偽りの僕を愛したのは

ぽんた
BL
自分にはもったいないと思えるほどの人と恋人のレイ。 彼はこの国の騎士団長、しかも侯爵家の三男で。 対して自分は親がいない平民。そしてある事情があって彼に隠し事をしていた。 それがバレたら彼のそばには居られなくなってしまう。 隠し事をする自分が卑しくて憎くて仕方ないけれど、彼を愛したからそれを突き通さなければ。 騎士団長✕訳あり平民

あの日の記憶の隅で、君は笑う。

15
BL
アキラは恋人である公彦の部屋でとある写真を見つけた。 その写真に写っていたのはーーー……俺とそっくりな人。 唐突に始まります。 身代わりの恋大好きか〜と思われるかもしれませんが、大好物です!すみません! 幸せになってくれな!

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

処理中です...