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高校生編
26 春の海で(4)
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お風呂場を出た僕は鏡に映る自分の体に驚いた。
胸元だけじゃないおへそのところや、太もも、首筋にもたくさんのキスマークがついていた。
途中から訳がわからなくなっちゃって色々言った気もする。
訳は分からなくなったけど、残念…でもないけど…記憶はちゃんとある。
僕が鏡を見ながら顔を真っ赤にしていると、大翔は笑って僕の頬にキスをした。
最後まではされてないけど、もうそれに近いことはしている。
それに最中、大翔のを舐めてる時に入れて欲しいって思っちゃったんだよね…。後ろの方が疼くようにキュンとしていた。
最後までしないって言われたのは僕のことを大事にしてくれてるってわかってるし、大翔が我慢してるってわかる。
僕がそれを崩すのはどうかと思うけど、でも最後までして欲しい…。
こ、この旅行で…誘惑してみようかな…。
最後までしてくれるかな…。
ちょっと頑張ってみても良いかな…?
****
夕食のため本棟に向かった。
現地の料理人さん達が来てくれてるらしいから、沖縄料理出るのかな…。
僕は日本に帰国した時も関東圏からほぼ出ないから郷土料理みたいなのを食べた事がない。
沖縄料理はちょっと変わってるものが多いって聞いた事があるぐらいで、実はどんなものがあるか知らないんだよね。
お昼も普通にステーキだったし。
本棟の食堂に入るとすでにみんな揃っていて、料理もテーブルの上に並んでいた。
食堂は二つあって琉球畳の敷かれた掘り炬燵の和室と、洋風のダイニング。今日は和室の方に通された。
テーブルの上には見たことのない料理が並んでいる。
厨房から恰幅のいいお母さんと、男性二人、あと六浦家でもお世話になってるシェフさんが出てきてくれた。
今日の晩ご飯は
海ブドウが乗ったシークァーサードレッシングのサラダ
ゴーヤチャンプルー(ニガウリとランチョンミートの炒め物)
ラフテー(豚の角煮)
もずくの天ぷら
ジーマミー豆腐(ピーナッツの豆腐)
ソーキ汁(骨つきの豚肉と野菜のスープ)
ジューシー(炊き込みご飯)
なかなか盛り沢山だし、聞いたことない名前がいっぱいあった。
話を聞いたら普通に家庭料理らしい。
海ぶどうも初めてみた、確かに葡萄みたい…海藻なんだよね。味は…塩味?プチプチしてる。シークァーサーって真っ青なミカンみたいな、サイズ的にはライムとかカボスとかに近いけど、酸味が強くて独特の風味がある。
このドレッシングは美味しいから作ってみたいな。
ゴーヤチャンプルーはゴーヤの苦味がある。僕にはちょっと早い…かな。
角煮は沖縄だと皮付きなんだって、プルプルとしてて泡盛ってお酒と黒糖を使うらしい。
天ぷらもちょっと変わってる。味がついてて、衣は厚くてフリットに似てるかも。
ジーマミー豆腐はピーナッツの香りがして美味しい。お出汁の効いた醤油ダレがかかってる。
これも手作りできるらしいから聞いて帰ろう。
ソーキ汁は大きな骨つきのソーキってお肉が乗ってて大根やにんじんとかお野菜と昆布が入ってる。
スープは鰹だしでさっぱりしてて美味しい。
ジューシーは豚のお出汁と昆布出汁を合わせて乾燥の椎茸なんかも入ってるらしい。
これもすごく美味しいからレシピ教わろう!お弁当にしてもいいかも!
天ぷらとかラフテーもお弁当に使えそうだなー。大翔好きそうだし。
炒め物のことをチャンプルーって言うらしいから、ゴーヤじゃないやつにすれば僕も食べれそう。
一つ一つ説明を受けて味わって食べていたら隣に座ってる大翔が笑顔でこっちをみていた。
「え、あ、どうしたの?」
「いや、楽しそうに食べてるなと思って。」
「あ…また顔に出てた?」
「ああ。」
また出ちゃってたかー。
でも料理のことに考えてる時は本当に楽しいんだ。
どうやったらこの味になるとかもそうだけど、今はこれは大翔が好きそうだなーとか、こうやったらお弁当に持っていけるなーとか…そう言うのばっかり考えちゃう。
「これ作ったらお弁当に持ってけるなーって考えてたんだ。大翔好きそうだし。」
「ふふ、俺のこと考えてたんだ。」
「う、うん。」
改めて言われるとすごく恥ずかしいんだけど、最近大翔のために料理を作ることが増えたからかどうしても大翔が好きかどうかを考えちゃうんだよね。
美味しいって言ってもらいたいし。
「じゃあ帰ったらいっぱい作って。」
「うん!」
「はぁ~ラブラブねー。」
「あらぁ、未亜はいい人いないの?」
「まぁ、その、そのうちね…。」
未亜さんは飛び火してきた火の粉をスルーしてご飯をパクパクと食べている。
「ふふ、それにしても凛ちゃんと大翔はほーんと仲良いわねー。」
「ほんと、凛もヒロくんも相思相愛って感じで見てる僕が恥ずかしくなるよ。」
「礼央くんだって颯斗さんといつもラブラブしてるじゃん!」
「まぁねー。」
「でも、ほんと怪我はしたけど大事には至らなくてほんと良かったよ。」
「颯斗さん…パパさんも有り難うございました。」
「いや、私たちの仕事上の問題に巻き込んでしまってすまなかったね。」
確かに影森のことは大変だった。
だけど、皆んなが僕を助けてくれたのには変わりない。
僕は隣にいる大翔の手をぎゅっと握る。
大翔がこのことを後悔しているのをずっと感じてるから、なんど大丈夫だって言ってみても…大翔は自分自身のことを許さない。
「確かに、怪我もしたし怖い思いもしたんですけど…この事件のおかげ…っていうとおかしいですけど、大翔と同じ寮に住めることになって…大翔と番になって一生一緒にいたいってより思ったんです。」
「凛…。」
「大翔が…今回のことで自分を責めてるけど、僕だってあの時大翔と一緒にいれば良かったしクラスのみんなについてきて貰えば良かったんだ…だから、大翔のせいだけじゃないんだよ。僕だって…オメガ寮で絡まれた事があったのに、すっかり忘れて一人になったんだもん…。」
僕がそう言い終わると大翔は僕の肩をぎゅっと抱き寄せて旋毛に頬を寄せる。
大翔だけが後悔してるわけじゃなくて、僕だってもっとしっかりするべきだったんだ。
「悪いのはもちろん…影森の人たちだし、それに加担してた人達なんだもん…大翔が悪いわけじゃない。」
僕が大翔の目を見て言うと、大翔は僕の頭を撫でてありがとうって言って小さく頷いた。
そのあと僕らは夕食を食べ終わって本棟のリビングスペースにやってきた。
もうお腹はち切れそうなほど食べた。
多分ちょっとお腹ぽっこりしてそう。
僕が自分のお腹を撫でてたら、大翔が微笑みつつもちょっと照れたように僕を見ていた。
「え、大翔どうしたの?」
「あ、いや…なんでもない。」
なんでもない顔してないんだけど…?
「ふふ、私は分かるわ…大翔が今何を思ったか…。」
「え、未亜さんわかるんですか?」
「私だけじゃなく、颯斗もお父さんもわかってるんじゃない?」
パパさんも颯斗さんもわかってるの?
みんなの顔を交互に見ると、なんだかみんなバツの悪そうな顔をしてる。
「え、なになに?大翔…どういうこと?」
「あ、やー、まあ…あの。」
いつもの大翔だったらハッキリ言うのになんだか口籠ってる…なになに?なんのこと?
「ふふ、良いじゃない言っちゃいなさいよー。」
「…いや、うん。そうだな…。」
「なに!隠されると気になるんだけど。」
「いや、今…凛がお腹さすってるの見て、妊娠したら…こんな感じなのかな、って…ちょっと…。」
にんしん?
にんしんって妊娠?
…僕が…妊娠って…大翔の…子供を…!?!?
一気に僕の顔が真っ赤になったのが分かった。顔がめちゃくちゃ熱い!
僕が自分の頬を両手で扇いでなんとか熱を下げようとするも全然下がってない。むしろどんどん恥ずかしくなっていく。
「ふふ、初々しいわねー。」
「そうだな。」
なんかパパさんとママさんは達観しちゃってますけど??
礼央くん達もなんか微笑ましそうに見てるし、だめだ!全然恥ずかしいのが治らない!
僕は口をパクパクさせて何か言おうと思うんだけど、うまく言葉にならずやっと出てきた言葉は…
「う、はずかしい…。」
だった。
「だから、言いたくなかったんだ…。」
大翔も珍しく耳まで赤くしてる。
そうか、番になって、結婚して…僕もいつかは大翔の子供欲しいなって思ってたけど…そうか…大翔もそうだよね。
まだ番にもなってないのに気が早いのは分かってるけど、朝から新婚だとか部屋に入って新居の妄想してまさか妊娠の妄想までするとは思わなかった…。
そういえば番の話、六浦家のみなさんにはもう話してて全然いつでもOKみたいな反応だったけど、うちの家に挨拶に行くんだよね…。
顔の熱もなんとか治ってきたし、気を取り直して聞いてみるかな…?
「あ、ねぇ大翔…?」
「ん?」
「夏休み…カナダに行きませんか…?」
「夏休み?」
「うん、この前夏休みには遊びに戻っておいでって言われてたんだ。それで、その…あ、挨拶…的な?僕も大翔の事…紹介したいし。」
「息子さんを下さいだ!」
「未亜は一旦黙ってて。」
「あ、はい。」
「いいよ。夏休み行こう。」
「芦屋さんのところかー、私も行こうかな。」
「パパさんも?」
「ああ、大翔が子供の頃会ってから連絡は取っているけど、長らくあってないからね。」
ん?連絡は取ってる?
「パパさん…大翔と僕が昔会ったことあるの覚えてたんですか?」
「?覚えていたよ。初めて会った時にあの時の子だってすぐ分かったよ。」
ええ!!!じゃあ僕らより先に気付いてたの?
気付いてなかったの僕たちだけ?
礼央くんをちらっと見ると目線を外された…。
「礼央くんも…気付いての…?」
「あ、あーーーまぁ、そうだね…。最初から…。」
「最初から!!なんで言ってくれないの!?」
「いやーだって二人とも記憶なくしてるから、言うタイミング難しかったし?」
そ、そうかもしんないけど!!!
教えてくれたらもっと早く思い出せたかもしれないのに!!
「私たちは大翔から話を聞いて二人が『運命の番』であることは確かに分かっていた。バース性も分からない幼少期の頃からそこまで強く惹かれて、まだ他人には分かる筈の無いフェロモンの匂いに反応していたんだ。」
確かに、2~3歳の頃に大翔も僕も互いの匂いを認識していた。
普通であればそれだけ小さい頃に惹かれ合うことはごく稀で、『運命の番』である可能性が高くなる。
パパさんと僕の父親はそれに気付いてその後も何かとやりとりをしていたらしい。
勿論ビジネスの話もしてたみたいだけど。
「二人がたまたま、ほんと偶然記憶を無くす事件があって…もしこのまま思い出さなければ…違う形で出会わせる予定だった。でも二人とも偶然…空港で再会した。」
「そう、しかもその日大翔は疲れからかうまくコントロールができず、いつもより強く香っていた。凛くんはヒートこそ起こさなかったけど、その場にいた誰よりも強くフェロモンに当たり倒れそうになった。翌日は大翔に意識的に少しフェロモンを強めに出してもらった。」
「じゃあ二度目に倒れたのって意図的に大翔の香りに当てられたってこと?」
「うん、本当に『運命の番』か確認する方法は少ない。だから…ね。ごめんね。」
「ううん!それは全然平気、大翔が抱えてくれたし。それにそれで『運命の番』だって分かったわけだし。」
驚いたし、あの時の大翔のことは苦手だったけど…でも今となってはあの時の試してくれたおかげで僕と大翔が『運命の番』ってわかったんだもん。
全然気にして無い、むしろ良かった…。
僕は目一杯大翔に向かって笑いかけると、大翔も僕に微笑んだ。
「じゃあ夏休みはみんなでカナダだな!」
「僕たちも行こうかな、ねぇ颯斗。」
「休み取れるように調整してみるよ。」
「私…合宿があるから日にち合えば行きたいなぁ。」
夏休みはみんなでカナダの僕の家に行くことに決まった!
みんなに連絡しておこう!
楽しみだなぁ…。
僕はまた知らないうちに顔が笑ってたんだろうな…大翔が僕の頭を撫でるので僕はそっと寄り添った。
カナダに行くことも決まったし、あとは今回の旅行で!!大翔を誘惑する!!
最後までして欲しい!
「凛…どうしたの?」
「え!な、、なんで?」
「急にやる気出したみたいだから。」
あ、また顔に出てたか…。
気をつけなくちゃ!
「カナダに行ったら、ど、どこに行こうかなって!考えてただけ!」
「……ふーん。」
あー、全然信用してない顔してる。
パパさん達が忙しいので、夏の旅行に関しては日程を決めてもらうことにした。
話もひと段落したので、僕たちはヴィラに戻ることにした。
外はもう真っ暗だ、上を見上げると星がよく見える。
「凛、ちょっと浜辺に行こうか星がよく見えるよ。」
「ほんと!?行きたい!」
大翔と手を繋いで木材でできた散歩道のようなアプローチを歩いていく。
足元には柔らかい光のフットライトが付いていてすごく幻想的。
少し歩いて出た先には小さな浜辺があって、街灯がそこで途切れている。
サンダルで砂浜に足を踏み入れればふかふかとしていて、きめの細かい砂浜だとわかる。
大翔は僕の手を引いて、砂浜の中央ぐらいまでやってくる。
そこにはレジャーシートと二人用のハンモックが用意されてランタンが灯っていた。
胸元だけじゃないおへそのところや、太もも、首筋にもたくさんのキスマークがついていた。
途中から訳がわからなくなっちゃって色々言った気もする。
訳は分からなくなったけど、残念…でもないけど…記憶はちゃんとある。
僕が鏡を見ながら顔を真っ赤にしていると、大翔は笑って僕の頬にキスをした。
最後まではされてないけど、もうそれに近いことはしている。
それに最中、大翔のを舐めてる時に入れて欲しいって思っちゃったんだよね…。後ろの方が疼くようにキュンとしていた。
最後までしないって言われたのは僕のことを大事にしてくれてるってわかってるし、大翔が我慢してるってわかる。
僕がそれを崩すのはどうかと思うけど、でも最後までして欲しい…。
こ、この旅行で…誘惑してみようかな…。
最後までしてくれるかな…。
ちょっと頑張ってみても良いかな…?
****
夕食のため本棟に向かった。
現地の料理人さん達が来てくれてるらしいから、沖縄料理出るのかな…。
僕は日本に帰国した時も関東圏からほぼ出ないから郷土料理みたいなのを食べた事がない。
沖縄料理はちょっと変わってるものが多いって聞いた事があるぐらいで、実はどんなものがあるか知らないんだよね。
お昼も普通にステーキだったし。
本棟の食堂に入るとすでにみんな揃っていて、料理もテーブルの上に並んでいた。
食堂は二つあって琉球畳の敷かれた掘り炬燵の和室と、洋風のダイニング。今日は和室の方に通された。
テーブルの上には見たことのない料理が並んでいる。
厨房から恰幅のいいお母さんと、男性二人、あと六浦家でもお世話になってるシェフさんが出てきてくれた。
今日の晩ご飯は
海ブドウが乗ったシークァーサードレッシングのサラダ
ゴーヤチャンプルー(ニガウリとランチョンミートの炒め物)
ラフテー(豚の角煮)
もずくの天ぷら
ジーマミー豆腐(ピーナッツの豆腐)
ソーキ汁(骨つきの豚肉と野菜のスープ)
ジューシー(炊き込みご飯)
なかなか盛り沢山だし、聞いたことない名前がいっぱいあった。
話を聞いたら普通に家庭料理らしい。
海ぶどうも初めてみた、確かに葡萄みたい…海藻なんだよね。味は…塩味?プチプチしてる。シークァーサーって真っ青なミカンみたいな、サイズ的にはライムとかカボスとかに近いけど、酸味が強くて独特の風味がある。
このドレッシングは美味しいから作ってみたいな。
ゴーヤチャンプルーはゴーヤの苦味がある。僕にはちょっと早い…かな。
角煮は沖縄だと皮付きなんだって、プルプルとしてて泡盛ってお酒と黒糖を使うらしい。
天ぷらもちょっと変わってる。味がついてて、衣は厚くてフリットに似てるかも。
ジーマミー豆腐はピーナッツの香りがして美味しい。お出汁の効いた醤油ダレがかかってる。
これも手作りできるらしいから聞いて帰ろう。
ソーキ汁は大きな骨つきのソーキってお肉が乗ってて大根やにんじんとかお野菜と昆布が入ってる。
スープは鰹だしでさっぱりしてて美味しい。
ジューシーは豚のお出汁と昆布出汁を合わせて乾燥の椎茸なんかも入ってるらしい。
これもすごく美味しいからレシピ教わろう!お弁当にしてもいいかも!
天ぷらとかラフテーもお弁当に使えそうだなー。大翔好きそうだし。
炒め物のことをチャンプルーって言うらしいから、ゴーヤじゃないやつにすれば僕も食べれそう。
一つ一つ説明を受けて味わって食べていたら隣に座ってる大翔が笑顔でこっちをみていた。
「え、あ、どうしたの?」
「いや、楽しそうに食べてるなと思って。」
「あ…また顔に出てた?」
「ああ。」
また出ちゃってたかー。
でも料理のことに考えてる時は本当に楽しいんだ。
どうやったらこの味になるとかもそうだけど、今はこれは大翔が好きそうだなーとか、こうやったらお弁当に持っていけるなーとか…そう言うのばっかり考えちゃう。
「これ作ったらお弁当に持ってけるなーって考えてたんだ。大翔好きそうだし。」
「ふふ、俺のこと考えてたんだ。」
「う、うん。」
改めて言われるとすごく恥ずかしいんだけど、最近大翔のために料理を作ることが増えたからかどうしても大翔が好きかどうかを考えちゃうんだよね。
美味しいって言ってもらいたいし。
「じゃあ帰ったらいっぱい作って。」
「うん!」
「はぁ~ラブラブねー。」
「あらぁ、未亜はいい人いないの?」
「まぁ、その、そのうちね…。」
未亜さんは飛び火してきた火の粉をスルーしてご飯をパクパクと食べている。
「ふふ、それにしても凛ちゃんと大翔はほーんと仲良いわねー。」
「ほんと、凛もヒロくんも相思相愛って感じで見てる僕が恥ずかしくなるよ。」
「礼央くんだって颯斗さんといつもラブラブしてるじゃん!」
「まぁねー。」
「でも、ほんと怪我はしたけど大事には至らなくてほんと良かったよ。」
「颯斗さん…パパさんも有り難うございました。」
「いや、私たちの仕事上の問題に巻き込んでしまってすまなかったね。」
確かに影森のことは大変だった。
だけど、皆んなが僕を助けてくれたのには変わりない。
僕は隣にいる大翔の手をぎゅっと握る。
大翔がこのことを後悔しているのをずっと感じてるから、なんど大丈夫だって言ってみても…大翔は自分自身のことを許さない。
「確かに、怪我もしたし怖い思いもしたんですけど…この事件のおかげ…っていうとおかしいですけど、大翔と同じ寮に住めることになって…大翔と番になって一生一緒にいたいってより思ったんです。」
「凛…。」
「大翔が…今回のことで自分を責めてるけど、僕だってあの時大翔と一緒にいれば良かったしクラスのみんなについてきて貰えば良かったんだ…だから、大翔のせいだけじゃないんだよ。僕だって…オメガ寮で絡まれた事があったのに、すっかり忘れて一人になったんだもん…。」
僕がそう言い終わると大翔は僕の肩をぎゅっと抱き寄せて旋毛に頬を寄せる。
大翔だけが後悔してるわけじゃなくて、僕だってもっとしっかりするべきだったんだ。
「悪いのはもちろん…影森の人たちだし、それに加担してた人達なんだもん…大翔が悪いわけじゃない。」
僕が大翔の目を見て言うと、大翔は僕の頭を撫でてありがとうって言って小さく頷いた。
そのあと僕らは夕食を食べ終わって本棟のリビングスペースにやってきた。
もうお腹はち切れそうなほど食べた。
多分ちょっとお腹ぽっこりしてそう。
僕が自分のお腹を撫でてたら、大翔が微笑みつつもちょっと照れたように僕を見ていた。
「え、大翔どうしたの?」
「あ、いや…なんでもない。」
なんでもない顔してないんだけど…?
「ふふ、私は分かるわ…大翔が今何を思ったか…。」
「え、未亜さんわかるんですか?」
「私だけじゃなく、颯斗もお父さんもわかってるんじゃない?」
パパさんも颯斗さんもわかってるの?
みんなの顔を交互に見ると、なんだかみんなバツの悪そうな顔をしてる。
「え、なになに?大翔…どういうこと?」
「あ、やー、まあ…あの。」
いつもの大翔だったらハッキリ言うのになんだか口籠ってる…なになに?なんのこと?
「ふふ、良いじゃない言っちゃいなさいよー。」
「…いや、うん。そうだな…。」
「なに!隠されると気になるんだけど。」
「いや、今…凛がお腹さすってるの見て、妊娠したら…こんな感じなのかな、って…ちょっと…。」
にんしん?
にんしんって妊娠?
…僕が…妊娠って…大翔の…子供を…!?!?
一気に僕の顔が真っ赤になったのが分かった。顔がめちゃくちゃ熱い!
僕が自分の頬を両手で扇いでなんとか熱を下げようとするも全然下がってない。むしろどんどん恥ずかしくなっていく。
「ふふ、初々しいわねー。」
「そうだな。」
なんかパパさんとママさんは達観しちゃってますけど??
礼央くん達もなんか微笑ましそうに見てるし、だめだ!全然恥ずかしいのが治らない!
僕は口をパクパクさせて何か言おうと思うんだけど、うまく言葉にならずやっと出てきた言葉は…
「う、はずかしい…。」
だった。
「だから、言いたくなかったんだ…。」
大翔も珍しく耳まで赤くしてる。
そうか、番になって、結婚して…僕もいつかは大翔の子供欲しいなって思ってたけど…そうか…大翔もそうだよね。
まだ番にもなってないのに気が早いのは分かってるけど、朝から新婚だとか部屋に入って新居の妄想してまさか妊娠の妄想までするとは思わなかった…。
そういえば番の話、六浦家のみなさんにはもう話してて全然いつでもOKみたいな反応だったけど、うちの家に挨拶に行くんだよね…。
顔の熱もなんとか治ってきたし、気を取り直して聞いてみるかな…?
「あ、ねぇ大翔…?」
「ん?」
「夏休み…カナダに行きませんか…?」
「夏休み?」
「うん、この前夏休みには遊びに戻っておいでって言われてたんだ。それで、その…あ、挨拶…的な?僕も大翔の事…紹介したいし。」
「息子さんを下さいだ!」
「未亜は一旦黙ってて。」
「あ、はい。」
「いいよ。夏休み行こう。」
「芦屋さんのところかー、私も行こうかな。」
「パパさんも?」
「ああ、大翔が子供の頃会ってから連絡は取っているけど、長らくあってないからね。」
ん?連絡は取ってる?
「パパさん…大翔と僕が昔会ったことあるの覚えてたんですか?」
「?覚えていたよ。初めて会った時にあの時の子だってすぐ分かったよ。」
ええ!!!じゃあ僕らより先に気付いてたの?
気付いてなかったの僕たちだけ?
礼央くんをちらっと見ると目線を外された…。
「礼央くんも…気付いての…?」
「あ、あーーーまぁ、そうだね…。最初から…。」
「最初から!!なんで言ってくれないの!?」
「いやーだって二人とも記憶なくしてるから、言うタイミング難しかったし?」
そ、そうかもしんないけど!!!
教えてくれたらもっと早く思い出せたかもしれないのに!!
「私たちは大翔から話を聞いて二人が『運命の番』であることは確かに分かっていた。バース性も分からない幼少期の頃からそこまで強く惹かれて、まだ他人には分かる筈の無いフェロモンの匂いに反応していたんだ。」
確かに、2~3歳の頃に大翔も僕も互いの匂いを認識していた。
普通であればそれだけ小さい頃に惹かれ合うことはごく稀で、『運命の番』である可能性が高くなる。
パパさんと僕の父親はそれに気付いてその後も何かとやりとりをしていたらしい。
勿論ビジネスの話もしてたみたいだけど。
「二人がたまたま、ほんと偶然記憶を無くす事件があって…もしこのまま思い出さなければ…違う形で出会わせる予定だった。でも二人とも偶然…空港で再会した。」
「そう、しかもその日大翔は疲れからかうまくコントロールができず、いつもより強く香っていた。凛くんはヒートこそ起こさなかったけど、その場にいた誰よりも強くフェロモンに当たり倒れそうになった。翌日は大翔に意識的に少しフェロモンを強めに出してもらった。」
「じゃあ二度目に倒れたのって意図的に大翔の香りに当てられたってこと?」
「うん、本当に『運命の番』か確認する方法は少ない。だから…ね。ごめんね。」
「ううん!それは全然平気、大翔が抱えてくれたし。それにそれで『運命の番』だって分かったわけだし。」
驚いたし、あの時の大翔のことは苦手だったけど…でも今となってはあの時の試してくれたおかげで僕と大翔が『運命の番』ってわかったんだもん。
全然気にして無い、むしろ良かった…。
僕は目一杯大翔に向かって笑いかけると、大翔も僕に微笑んだ。
「じゃあ夏休みはみんなでカナダだな!」
「僕たちも行こうかな、ねぇ颯斗。」
「休み取れるように調整してみるよ。」
「私…合宿があるから日にち合えば行きたいなぁ。」
夏休みはみんなでカナダの僕の家に行くことに決まった!
みんなに連絡しておこう!
楽しみだなぁ…。
僕はまた知らないうちに顔が笑ってたんだろうな…大翔が僕の頭を撫でるので僕はそっと寄り添った。
カナダに行くことも決まったし、あとは今回の旅行で!!大翔を誘惑する!!
最後までして欲しい!
「凛…どうしたの?」
「え!な、、なんで?」
「急にやる気出したみたいだから。」
あ、また顔に出てたか…。
気をつけなくちゃ!
「カナダに行ったら、ど、どこに行こうかなって!考えてただけ!」
「……ふーん。」
あー、全然信用してない顔してる。
パパさん達が忙しいので、夏の旅行に関しては日程を決めてもらうことにした。
話もひと段落したので、僕たちはヴィラに戻ることにした。
外はもう真っ暗だ、上を見上げると星がよく見える。
「凛、ちょっと浜辺に行こうか星がよく見えるよ。」
「ほんと!?行きたい!」
大翔と手を繋いで木材でできた散歩道のようなアプローチを歩いていく。
足元には柔らかい光のフットライトが付いていてすごく幻想的。
少し歩いて出た先には小さな浜辺があって、街灯がそこで途切れている。
サンダルで砂浜に足を踏み入れればふかふかとしていて、きめの細かい砂浜だとわかる。
大翔は僕の手を引いて、砂浜の中央ぐらいまでやってくる。
そこにはレジャーシートと二人用のハンモックが用意されてランタンが灯っていた。
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