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高校生編
閑話 とあるモブ生徒は「見守る会」の発足を誓う
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今日は入学式、晴れて名門と謳われる「私立 帝明高校」に入学する事ができた。
僕はアルファとして生まれたけど、そこまでランクが高くない所謂普通のアルファだ。
勿論、ベータやオメガに比べると秀でているとは思うが、一旦アルファの中に入れば中の上と言った所。
中学受験で死ぬ程勉強したおかげかクラスは特進のAに入る事ができた。
教室に入ると9割以上がアルファで、数人のオメガが在籍している事を知った。
その中でもダントツに可愛いオメガを見つけた。
サラサラの黒髪に細く頼りなさそうな首筋には高そうなプロテクターを着けている。
家が裕福なんだろうか、肌の色は透明感の溢れる白さなのに頬や口元は桜色に色付き幼い表情ながらも香り立つ色気を放っている。
他のアルファ達も同様の感想なのか、みな横目でチラチラと伺っているが…。
近くに立つアルファがその視線の元を射殺すような目で見てくる。
あれは「六浦ホールディングス」の子息である「六浦 大翔」だ。
中学の頃から弁論大会などで存在は知っていたし、この学校に来ることも分かっていたが…実際の為人は知らなかった。
かく言う僕の父親も六浦ホールディングスの中の企業で働くので、全く関係がないわけではない。
ただ、向こうは社長子息で僕は課長の息子、天井人に違いはない。
あの可愛らしいオメガは「芦屋 凛」と言うらしい。名前すら可愛い。
自己紹介の時に初めて声を聞いたが、鈴が鳴るような可愛らしい声だった。
僕の席はなんと凛ちゃん(心の中ではそう呼ばせてもらう)の真後ろ、特等席だった。
席順が分かった時には周りのその他アルファ達に盛大なブーイングをもらった。
クラスの空気がざわついたのは「影森 亜里沙」が登場してすぐだった。
鼻につくような甘ったるい香りをさせて、顔はまぁまぁと言ったぐらいだったけど性格がヤバそうだし、なによりあの匂いが酷すぎてクラスメイトほぼ全員が顔を顰めた。
オメガのフェロモンはアルファを惑わす誘惑香だと言われているけど、あの匂いに釣られる人がいるとは思えなかった。
なにより抑制剤を飲んでなおあの香りを漂わせてるとしたら、そちらの方に問題がありそうだが…。
自己紹介の時も「六浦 大翔」の婚約者だと自ら名乗っていた、すぐに訂正されていたけど。
入学式の会場に向かう際、凛ちゃんの元に六浦くんがやってきて何やら会話をしていた。
二人を纏う空気はとても優しかった。
僕が中学時代に聞いていた六浦くんの噂は「オメガ嫌い」で誰に対しても一線を引いていて尚且つ塩対応。笑うことは滅多いないしたまに笑う時は悪魔のようだと結構ひどいものだったけど、凛ちゃんに笑いかけた時の顔は甘く蕩けそうで僕も赤面しそうになってしまった。
凛ちゃんに話しかける声や口調はひどく優しくて、凛ちゃんを慈しんでいるのが手にとるようにわかるようだった。
横恋慕なんて考えてないけど、その時周りにいた生徒達はきっと二人のことを見守ろうって心に決めたんだと思う。
入学式も無事に終わり、みんな自分の家族達と写真を撮ったり話をしたりしていた。
僕も両親と軽く会話をし、写真撮影をしていると影森さんをみつけた。
隣にいる悪役みたいな顔した年配の男性は父親だろうか、お付きの人達もカタギに見えない眼光の鋭さだ。
父親に聞いたら影森さんの家も六浦の関連企業で社長をしているらしい。
ただ、直系ではなくかなりの末端企業らしいけど。
影森さん達は何かコソコソと話している。
僕は近くを通るフリをして盗み聞きをしてみた。
全部は聞き取れなかったけど、どうやら六浦くんの婚約者の件や凛ちゃんに関すること、あとフェロモン薬がどうのって聞こえた。
こんな人が多いところで話す内容じゃなさそうだったけど…。
ふと凛ちゃんを探すと六浦くんとその家族と思われる異常にオーラの強い一団の中にいた。
あの中に普通に入れるって凄いな。
教室に戻りオリエンテーションとなった。
二人は…終始イチャイチャ…そう僕らから見たら血の涙が流れそうなほどにイチャついていた!
くそ…パートナー欲しい…もっと言うなら番が欲しい…。
休憩時間に凛ちゃんが友達の九条くんとトイレに行ってる間、そっと六浦くんに先程見た影森さんの話をしてみた。
彼は声を掛けられたことに驚いていたようだったけど、少し思案した後「ありがとう」と返答した。
彼からはまぁ、軽く牽制と何か見たら連絡して欲しいと言われた。
初めて言葉を交わしたけど、彼には上に立つものの風格があるように思えた。
彼からは沸き立つオーラは人を惹きつけて、威厳のあるカリスマ然としたものだ。
きっと僕が将来仕えるのは彼なのかもしれない。
それはこのクラスのアルファほぼ全員が感じた総意に思えた。
トップクラスのアルファで、優秀でカッコよくて。
前までは氷のように冷たかったらしいけど、凛ちゃんと一緒にいる所を見ていると微笑ましい気持ちになる。
彼も一人の人間で、好きなオメガを守りたいと思う一人と男なのだと感じたから。
学級委員を選ぶ時も六浦くんにみんな入れたし、パートナーは勿論凛ちゃんに入れた。
凛ちゃんは図書委員になりたかったと九条くんに零していたけど…。
なんだろう…六浦くんから凛ちゃんに入れろって言う圧をちょっと感じてしまい、大多数のアルファのクラスメイトは屈した。ごめんね。
半日の行程が終わり、皆が帰り支度をする中再び影森さんが爆弾を落とした。
あのきっつい匂いを振りまきながら、六浦くんに擦り寄るが六浦くんはキッパリと断る。
断る時の目は絶対零度ってこう言うことなんだろうなって言うほどに冷たかった。
彼女には効いてるのか効いてないのか分からなかったけど。いや、あんな冷たく言われても引き下がらないってヤバイでしょ。
というか僕の目の前で事が進行するから、僕は席に座ったまま無の境地を開いていた。
ブリザードが吹いてる気がする…完全に立ち上がるタイミングを逃した。
ふと凛ちゃんを見ると六浦くんを心配そうに見上げて、その背中にしがみついて隠れていた。
なんたって相手はメデューサだからね、見つかったら石にされそうだから隠れて居るのが正解だと僕も思うよ。
六浦くんに言い負かされた影森さんが走って教室から飛び出していった。
その後…僕の前で二人のイチャイチャが始まった時は白目剥くかと思った。
二人は抱き合うし、六浦くんなんて人目も憚らず凛ちゃんの頭にキスするし…凛ちゃんが六浦くんのこと見上げた目がうるうるしててめちゃくちゃ色っぽい…。
そこまで思ったタイミングで六浦くんに睨まれたんだけど…僕の席ここなんですよ…僕悪くないよね?
いや、ちょっとそら可愛いなぁとか色っぽいなぁとは思ったけど…思うこともダメなの???
まぁ、ダメそうだったな。僕が心の中で凛ちゃんって呼ぶのすらダメなんだろうな…本当は…。
もうそれ以上ここの雰囲気ピンクにしないで!!!と思ったタイミングで九条くんが咳払いをして二人を止めてくれた…よかった。
多分周りで見てたクラスメイト全員が安堵した。
このままだと多分砂糖吐いてたと思う。
僕らに見られてることに気づいた凛ちゃんが真っ赤になって俯いてしまって、抱えられるように教室を出た頃にはみんな何故か生暖かい目になってた。
なんだろう、凛ちゃんがんばれって気持ちになった。
その場に残っていたクラスメイト達は互いの顔を見合わせて二人を見守ることを心に決めたんだと思う。
僕らは無言のまま深く頷いたのだった。
僕はアルファとして生まれたけど、そこまでランクが高くない所謂普通のアルファだ。
勿論、ベータやオメガに比べると秀でているとは思うが、一旦アルファの中に入れば中の上と言った所。
中学受験で死ぬ程勉強したおかげかクラスは特進のAに入る事ができた。
教室に入ると9割以上がアルファで、数人のオメガが在籍している事を知った。
その中でもダントツに可愛いオメガを見つけた。
サラサラの黒髪に細く頼りなさそうな首筋には高そうなプロテクターを着けている。
家が裕福なんだろうか、肌の色は透明感の溢れる白さなのに頬や口元は桜色に色付き幼い表情ながらも香り立つ色気を放っている。
他のアルファ達も同様の感想なのか、みな横目でチラチラと伺っているが…。
近くに立つアルファがその視線の元を射殺すような目で見てくる。
あれは「六浦ホールディングス」の子息である「六浦 大翔」だ。
中学の頃から弁論大会などで存在は知っていたし、この学校に来ることも分かっていたが…実際の為人は知らなかった。
かく言う僕の父親も六浦ホールディングスの中の企業で働くので、全く関係がないわけではない。
ただ、向こうは社長子息で僕は課長の息子、天井人に違いはない。
あの可愛らしいオメガは「芦屋 凛」と言うらしい。名前すら可愛い。
自己紹介の時に初めて声を聞いたが、鈴が鳴るような可愛らしい声だった。
僕の席はなんと凛ちゃん(心の中ではそう呼ばせてもらう)の真後ろ、特等席だった。
席順が分かった時には周りのその他アルファ達に盛大なブーイングをもらった。
クラスの空気がざわついたのは「影森 亜里沙」が登場してすぐだった。
鼻につくような甘ったるい香りをさせて、顔はまぁまぁと言ったぐらいだったけど性格がヤバそうだし、なによりあの匂いが酷すぎてクラスメイトほぼ全員が顔を顰めた。
オメガのフェロモンはアルファを惑わす誘惑香だと言われているけど、あの匂いに釣られる人がいるとは思えなかった。
なにより抑制剤を飲んでなおあの香りを漂わせてるとしたら、そちらの方に問題がありそうだが…。
自己紹介の時も「六浦 大翔」の婚約者だと自ら名乗っていた、すぐに訂正されていたけど。
入学式の会場に向かう際、凛ちゃんの元に六浦くんがやってきて何やら会話をしていた。
二人を纏う空気はとても優しかった。
僕が中学時代に聞いていた六浦くんの噂は「オメガ嫌い」で誰に対しても一線を引いていて尚且つ塩対応。笑うことは滅多いないしたまに笑う時は悪魔のようだと結構ひどいものだったけど、凛ちゃんに笑いかけた時の顔は甘く蕩けそうで僕も赤面しそうになってしまった。
凛ちゃんに話しかける声や口調はひどく優しくて、凛ちゃんを慈しんでいるのが手にとるようにわかるようだった。
横恋慕なんて考えてないけど、その時周りにいた生徒達はきっと二人のことを見守ろうって心に決めたんだと思う。
入学式も無事に終わり、みんな自分の家族達と写真を撮ったり話をしたりしていた。
僕も両親と軽く会話をし、写真撮影をしていると影森さんをみつけた。
隣にいる悪役みたいな顔した年配の男性は父親だろうか、お付きの人達もカタギに見えない眼光の鋭さだ。
父親に聞いたら影森さんの家も六浦の関連企業で社長をしているらしい。
ただ、直系ではなくかなりの末端企業らしいけど。
影森さん達は何かコソコソと話している。
僕は近くを通るフリをして盗み聞きをしてみた。
全部は聞き取れなかったけど、どうやら六浦くんの婚約者の件や凛ちゃんに関すること、あとフェロモン薬がどうのって聞こえた。
こんな人が多いところで話す内容じゃなさそうだったけど…。
ふと凛ちゃんを探すと六浦くんとその家族と思われる異常にオーラの強い一団の中にいた。
あの中に普通に入れるって凄いな。
教室に戻りオリエンテーションとなった。
二人は…終始イチャイチャ…そう僕らから見たら血の涙が流れそうなほどにイチャついていた!
くそ…パートナー欲しい…もっと言うなら番が欲しい…。
休憩時間に凛ちゃんが友達の九条くんとトイレに行ってる間、そっと六浦くんに先程見た影森さんの話をしてみた。
彼は声を掛けられたことに驚いていたようだったけど、少し思案した後「ありがとう」と返答した。
彼からはまぁ、軽く牽制と何か見たら連絡して欲しいと言われた。
初めて言葉を交わしたけど、彼には上に立つものの風格があるように思えた。
彼からは沸き立つオーラは人を惹きつけて、威厳のあるカリスマ然としたものだ。
きっと僕が将来仕えるのは彼なのかもしれない。
それはこのクラスのアルファほぼ全員が感じた総意に思えた。
トップクラスのアルファで、優秀でカッコよくて。
前までは氷のように冷たかったらしいけど、凛ちゃんと一緒にいる所を見ていると微笑ましい気持ちになる。
彼も一人の人間で、好きなオメガを守りたいと思う一人と男なのだと感じたから。
学級委員を選ぶ時も六浦くんにみんな入れたし、パートナーは勿論凛ちゃんに入れた。
凛ちゃんは図書委員になりたかったと九条くんに零していたけど…。
なんだろう…六浦くんから凛ちゃんに入れろって言う圧をちょっと感じてしまい、大多数のアルファのクラスメイトは屈した。ごめんね。
半日の行程が終わり、皆が帰り支度をする中再び影森さんが爆弾を落とした。
あのきっつい匂いを振りまきながら、六浦くんに擦り寄るが六浦くんはキッパリと断る。
断る時の目は絶対零度ってこう言うことなんだろうなって言うほどに冷たかった。
彼女には効いてるのか効いてないのか分からなかったけど。いや、あんな冷たく言われても引き下がらないってヤバイでしょ。
というか僕の目の前で事が進行するから、僕は席に座ったまま無の境地を開いていた。
ブリザードが吹いてる気がする…完全に立ち上がるタイミングを逃した。
ふと凛ちゃんを見ると六浦くんを心配そうに見上げて、その背中にしがみついて隠れていた。
なんたって相手はメデューサだからね、見つかったら石にされそうだから隠れて居るのが正解だと僕も思うよ。
六浦くんに言い負かされた影森さんが走って教室から飛び出していった。
その後…僕の前で二人のイチャイチャが始まった時は白目剥くかと思った。
二人は抱き合うし、六浦くんなんて人目も憚らず凛ちゃんの頭にキスするし…凛ちゃんが六浦くんのこと見上げた目がうるうるしててめちゃくちゃ色っぽい…。
そこまで思ったタイミングで六浦くんに睨まれたんだけど…僕の席ここなんですよ…僕悪くないよね?
いや、ちょっとそら可愛いなぁとか色っぽいなぁとは思ったけど…思うこともダメなの???
まぁ、ダメそうだったな。僕が心の中で凛ちゃんって呼ぶのすらダメなんだろうな…本当は…。
もうそれ以上ここの雰囲気ピンクにしないで!!!と思ったタイミングで九条くんが咳払いをして二人を止めてくれた…よかった。
多分周りで見てたクラスメイト全員が安堵した。
このままだと多分砂糖吐いてたと思う。
僕らに見られてることに気づいた凛ちゃんが真っ赤になって俯いてしまって、抱えられるように教室を出た頃にはみんな何故か生暖かい目になってた。
なんだろう、凛ちゃんがんばれって気持ちになった。
その場に残っていたクラスメイト達は互いの顔を見合わせて二人を見守ることを心に決めたんだと思う。
僕らは無言のまま深く頷いたのだった。
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