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私の答えそれは……
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別荘に入り、二階の客間に連れて来られた。
別荘内のどこもかなりの埃が蓄積されており、長い月日、使用していないことが窺える。
ただ置いてある装飾品などは、細部まで装飾が施されており高そうだ。
そんな高いものを平然と放置しているあたり、公爵家の別荘とみてまず間違いないだろう。
なんともこんな足の付きそうな場所を選ぶなんて、やはり頭が悪いと思えてしまう。
今頃、王城では私がいなくなったことで大騒ぎになっているはずだ。
時間さえ稼げればなんとかなるかもしれない……。
「そうそう。なにか期待されているようなので言っておきますわ、アーシエ様。城へは空の馬車とともに、あなたからのお手紙を乗せてありますの」
「お手紙?」
「貴女が、他の殿方と駆け落ちしたというモノですわ」
「まぁ、ずいぶん想像豊かなことで。その計画はもしかして、初めからだったんですの?」
「よくお分かりになりましたね。そうですよ。あなたにあの薬を飲ませた時からのね」
悪気なく、ユイナ令嬢は毒花の様な笑顔を浮かべた。
初めからアーシエの記憶をなくし混乱する中で他の誰かと既成事実でも作らせ、駆け落ちさせようとでもしたのだろう。
殺すことのリスクを考えれば、確かに簡単なことなのかもしれない。
右も左も分からない少女に、颯爽と現れた男がそれを献身的に助け、恋に落ちる。
夢見る令嬢の考えそうな計画だ。
頭の中を開けなくても、きっとお花畑なのだろうということは想像できる。
「それで、ご自分が殿下からの寵愛を受けようと?」
「貴女さえいなければ、殿下はわたくしのモノだったのです。幼い頃から、殿下との婚約は決まっていた」
「でもそれは、あなたの御父上である侯爵様のお話ですわよね?」
「だからなんだというのです」
今にも噛みつきそうなぐらいの勢いだ。
すべてにおいて、残念としか言いようがない。
まぁもっとも、貴族の令嬢ならばユイナ令嬢の考え方は普通のことなのだろう。
私はアーシエであって、アーシエではないから。
きっと考え方が違うのだ。
「そこには、ルド様の意志はないのですよね。親同士がという結びつきだけで、ユイナ様はあの御方の心を少しでもお考えになったことは、ないのですか?」
「あははははは。殿下の御心? 公爵家の娘たるわたくしが、王妃となるのですよ。それのどこに不満があると言うのですか。身分すら卑しいくせに、貴女はなにを言っているの?」
「これは身分の話ではなかったはずですが」
「だったらなんだというの。貴女みたいな、あばずれ女など、社交界ではたくさんいるではないんですか。わたくしのように可憐で礼儀作法も完璧な人間などにいるものですか」
自分に絶対的な自信があるのだろうなというコトは理解出来る。
でもそれのどこに、ルドの気持ちが関係あるのだろうということには結びついていない。
「はぁ。自分が可愛ければ、礼儀作法が出来れば、身分があれば、無条件でルド様からも愛してもらえると本気で思っていたのですか? だとすれば、それは違う。そんな無償の愛は、家族だけです。誰かを愛し、愛されたいのならば、まず相手を理解しないと。理解した上で、お互いが尊敬できる存在にならないと無理ですよ」
「貴女、ホントに……。いつもいつもいつも、わたくしをそうやって馬鹿にして」
「馬鹿にしてではなく、真実を述べたまでです」
「うるさい。貴女になにが分かるというの。分かったような口を聞かないでちょうだい」
「……分かったようなではなく、分かったからです。私はルド様を愛しているから。たとえ記憶がなくても、アーシエではなくても」
そうこれが私の答え。
本当だったら、一番にルドに聞かせたかった私の答えだ。
別荘内のどこもかなりの埃が蓄積されており、長い月日、使用していないことが窺える。
ただ置いてある装飾品などは、細部まで装飾が施されており高そうだ。
そんな高いものを平然と放置しているあたり、公爵家の別荘とみてまず間違いないだろう。
なんともこんな足の付きそうな場所を選ぶなんて、やはり頭が悪いと思えてしまう。
今頃、王城では私がいなくなったことで大騒ぎになっているはずだ。
時間さえ稼げればなんとかなるかもしれない……。
「そうそう。なにか期待されているようなので言っておきますわ、アーシエ様。城へは空の馬車とともに、あなたからのお手紙を乗せてありますの」
「お手紙?」
「貴女が、他の殿方と駆け落ちしたというモノですわ」
「まぁ、ずいぶん想像豊かなことで。その計画はもしかして、初めからだったんですの?」
「よくお分かりになりましたね。そうですよ。あなたにあの薬を飲ませた時からのね」
悪気なく、ユイナ令嬢は毒花の様な笑顔を浮かべた。
初めからアーシエの記憶をなくし混乱する中で他の誰かと既成事実でも作らせ、駆け落ちさせようとでもしたのだろう。
殺すことのリスクを考えれば、確かに簡単なことなのかもしれない。
右も左も分からない少女に、颯爽と現れた男がそれを献身的に助け、恋に落ちる。
夢見る令嬢の考えそうな計画だ。
頭の中を開けなくても、きっとお花畑なのだろうということは想像できる。
「それで、ご自分が殿下からの寵愛を受けようと?」
「貴女さえいなければ、殿下はわたくしのモノだったのです。幼い頃から、殿下との婚約は決まっていた」
「でもそれは、あなたの御父上である侯爵様のお話ですわよね?」
「だからなんだというのです」
今にも噛みつきそうなぐらいの勢いだ。
すべてにおいて、残念としか言いようがない。
まぁもっとも、貴族の令嬢ならばユイナ令嬢の考え方は普通のことなのだろう。
私はアーシエであって、アーシエではないから。
きっと考え方が違うのだ。
「そこには、ルド様の意志はないのですよね。親同士がという結びつきだけで、ユイナ様はあの御方の心を少しでもお考えになったことは、ないのですか?」
「あははははは。殿下の御心? 公爵家の娘たるわたくしが、王妃となるのですよ。それのどこに不満があると言うのですか。身分すら卑しいくせに、貴女はなにを言っているの?」
「これは身分の話ではなかったはずですが」
「だったらなんだというの。貴女みたいな、あばずれ女など、社交界ではたくさんいるではないんですか。わたくしのように可憐で礼儀作法も完璧な人間などにいるものですか」
自分に絶対的な自信があるのだろうなというコトは理解出来る。
でもそれのどこに、ルドの気持ちが関係あるのだろうということには結びついていない。
「はぁ。自分が可愛ければ、礼儀作法が出来れば、身分があれば、無条件でルド様からも愛してもらえると本気で思っていたのですか? だとすれば、それは違う。そんな無償の愛は、家族だけです。誰かを愛し、愛されたいのならば、まず相手を理解しないと。理解した上で、お互いが尊敬できる存在にならないと無理ですよ」
「貴女、ホントに……。いつもいつもいつも、わたくしをそうやって馬鹿にして」
「馬鹿にしてではなく、真実を述べたまでです」
「うるさい。貴女になにが分かるというの。分かったような口を聞かないでちょうだい」
「……分かったようなではなく、分かったからです。私はルド様を愛しているから。たとえ記憶がなくても、アーシエではなくても」
そうこれが私の答え。
本当だったら、一番にルドに聞かせたかった私の答えだ。
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