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ヒロインと悪役令嬢のお茶会(一)
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応接間に着くと、やや機嫌の悪そうなユイナ令嬢が出された紅茶を飲んでいた。
ふわふわとしたピンクゴールドの髪に、それよりもやや濃い茜色の瞳。しかし眉間に深く刻まれたシワが、なんとも可愛らしさを半減させてしまっている。
そして彼女は私を一瞥した後、紅茶を置き、その場に立ち上がった。
「これは、アーシエ様ご機嫌麗しゅう」
「ユイナ様お待たせして申し訳ありませんわ。お手紙でもいただいていれば、あらかじめ用意をしておきましたのに」
嫌味たっぷりに笑顔を返せば、ユイナ令嬢は手にした扇子を壊れるのではないかと握りしめる。
それもそうだろう。直訳すれば、手紙出して訪問しないから用意が間に合わなくて大変だっただろうと、なるのだから。
散々騒いで、侍女たちと困らせたのだから、これぐらい言っても問題はないはずだ。
「まぁ。わたくしはお手紙を出したかったのですよ。しかし、ここに籠られて誰もお通しにならないと聞いたので、なにかご病気かと思いこうして来た次第なのですよ」
訳:お前が引き篭もって誰にも会わないようにしていたんだろう。
さすが公爵令嬢なだけあって、嫌味一つでは全く動じず、嫌味を返してくる辺りがさすがだ。
「いえいえ、籠ってというのは少し……。なにせ、殿下の寵愛が激しくて……そんな外に出れるような」
「なっ」
頬に手を当て、恥ずかしそうに俯く私に、ユイナ令嬢はかなり怒り心頭なご様子だ。
本来ならば、閨事などこのような場で話すようなモノではないのだからそれもそうだろう。
しかしそれを分かっていながら、私も話している。ある意味、自分の身分を笠に着て騒いだ彼女と変わらない。
「ああ、ユイナ様はまだ未婚でしたね」
「そんなこともお忘れになってしまったのですか?」
「ん-。基本的に、殿下か全てで回る生活をしておりますので」
訳:ルド以外のことはいちいち覚えていないんだよ。となる。さすがにこれには腹が立ったのか、ユイナ令嬢は目を吊り上げ、顔が真っ赤だ。
それにこれはあながち嘘でもない。記憶がないのだから、彼女のことなど全く覚えていない。
本来仲が良かったのか、険悪だったのか。
ただこんな失礼なやり取りになる自体、仲は良くなかったのだろう。本当の友達ならば、きっと違う掛け合いになたはずだから。
「殿下に寵愛されて、とても満足されているようでなによりですわ。あんなことをしでかしたのに、よく殿下が貴女のことを許されたものです。まったく、どんな方法を使ったのやら」
明らかに、私に対してもルドに対してもこれは嫌味でしかない。それほどまでに、ということなのだろう。
しかし気になるのは、あんなことをしでかした。もし自分に毒を飲ませたと主張するのなら、もっと違う表現になると思うのに。
「まぁ、それはそれをお許しになったルド様のコトもおっしゃりたいのですか?」
「な、わ、わたくしは別に殿下のことなど」
「ルド様はとても寛容なお方ですので、過去の些細な過ちなど気になさらないのですわ」
「貴女、些細なって」
「そうでしょ? それとも、私自らがというような確固たる証拠をユイナ様はお持ちなのですか?」
過去の過ちがなにかは全く分からないが、それを認めてはいけないことはなんとなく分かる。
なぜなら、そのコトでユイナ令嬢は私を非難しに来ているのが、ありありと分かったから。
ふわふわとしたピンクゴールドの髪に、それよりもやや濃い茜色の瞳。しかし眉間に深く刻まれたシワが、なんとも可愛らしさを半減させてしまっている。
そして彼女は私を一瞥した後、紅茶を置き、その場に立ち上がった。
「これは、アーシエ様ご機嫌麗しゅう」
「ユイナ様お待たせして申し訳ありませんわ。お手紙でもいただいていれば、あらかじめ用意をしておきましたのに」
嫌味たっぷりに笑顔を返せば、ユイナ令嬢は手にした扇子を壊れるのではないかと握りしめる。
それもそうだろう。直訳すれば、手紙出して訪問しないから用意が間に合わなくて大変だっただろうと、なるのだから。
散々騒いで、侍女たちと困らせたのだから、これぐらい言っても問題はないはずだ。
「まぁ。わたくしはお手紙を出したかったのですよ。しかし、ここに籠られて誰もお通しにならないと聞いたので、なにかご病気かと思いこうして来た次第なのですよ」
訳:お前が引き篭もって誰にも会わないようにしていたんだろう。
さすが公爵令嬢なだけあって、嫌味一つでは全く動じず、嫌味を返してくる辺りがさすがだ。
「いえいえ、籠ってというのは少し……。なにせ、殿下の寵愛が激しくて……そんな外に出れるような」
「なっ」
頬に手を当て、恥ずかしそうに俯く私に、ユイナ令嬢はかなり怒り心頭なご様子だ。
本来ならば、閨事などこのような場で話すようなモノではないのだからそれもそうだろう。
しかしそれを分かっていながら、私も話している。ある意味、自分の身分を笠に着て騒いだ彼女と変わらない。
「ああ、ユイナ様はまだ未婚でしたね」
「そんなこともお忘れになってしまったのですか?」
「ん-。基本的に、殿下か全てで回る生活をしておりますので」
訳:ルド以外のことはいちいち覚えていないんだよ。となる。さすがにこれには腹が立ったのか、ユイナ令嬢は目を吊り上げ、顔が真っ赤だ。
それにこれはあながち嘘でもない。記憶がないのだから、彼女のことなど全く覚えていない。
本来仲が良かったのか、険悪だったのか。
ただこんな失礼なやり取りになる自体、仲は良くなかったのだろう。本当の友達ならば、きっと違う掛け合いになたはずだから。
「殿下に寵愛されて、とても満足されているようでなによりですわ。あんなことをしでかしたのに、よく殿下が貴女のことを許されたものです。まったく、どんな方法を使ったのやら」
明らかに、私に対してもルドに対してもこれは嫌味でしかない。それほどまでに、ということなのだろう。
しかし気になるのは、あんなことをしでかした。もし自分に毒を飲ませたと主張するのなら、もっと違う表現になると思うのに。
「まぁ、それはそれをお許しになったルド様のコトもおっしゃりたいのですか?」
「な、わ、わたくしは別に殿下のことなど」
「ルド様はとても寛容なお方ですので、過去の些細な過ちなど気になさらないのですわ」
「貴女、些細なって」
「そうでしょ? それとも、私自らがというような確固たる証拠をユイナ様はお持ちなのですか?」
過去の過ちがなにかは全く分からないが、それを認めてはいけないことはなんとなく分かる。
なぜなら、そのコトでユイナ令嬢は私を非難しに来ているのが、ありありと分かったから。
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