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そして鳥籠の中へ
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ルドに抱きかかえられたまま、王宮内を進んでいく。
恥ずかしさのあまりルドの胸に顔を埋める。
ただ廊下で何人かの人とすれ違ったが、誰も声をかけてはこない。
そのように言いつかっているのか、身分的にも声をかけることができないのか。
どちらにしても、異様な光景であることだけは間違いないだろう。
「ルド様、どうか……どうか、お放し下さい」
「ダメだよ? こんな人のいるところで声を出したら。その口を塞ぐか、聞いた者たちの耳を削ぎ落さなくてはいけなくなってしまうよ」
「ひっ」
口調は柔らかくとも、言っている内容は常軌を逸している。
さすがヤンデレルートなどと、プレイヤーだった頃なら、ただ『すごーい』と感心していたところだろう。
しかし今、ここで実際に自分の身に起こるとなると話はまったく別だ。
私は必死に、ヤンデレルートにはなにがあるか思い出すことにした。
結ばれなかったヤンデレルートは悲惨だ。
確実に、死者が出るようになっている。
その点、これは辛うじて結ばれたと言えるだろう。
しかし、本人が言ったように監禁から出ることは叶わないだろう。
そして一番、今私が恐れているのはこれがエロゲだった場合だ。
監禁の上に、一生そこで快楽を注がれ続ける。
そんなこと、耐えられるのだろうか。
むしろその結末が分かっていて、アーシエは……?
「少し寒いが、大丈夫かい、アーシエ?」
「え、あ、はい」
ルドの言葉で顔を動かすと、風が顔をかすめていく。
どうやら王宮内から外へ移動していたようだ。
鳥籠というくらいなのだから、定番からいけば離宮か塔といったところだろう。
ルドの足取りは軽やかで、初めから決まっていたかのようにどこかへと進んでいく。
「ここが、これからの君の僕の暮らす家になるんだよ。本当は王宮の部屋をと言われたんだけど、あそこだと他の者の目に付くからね。ここなら王宮からも離れているし、どんなに声を出しても大丈夫だからね」
「どんなに、声……を?」
その言葉に背筋が凍る。
ルドの脇から背後を覗き見ると、確かに王宮からはかなり離れていて、大声を出したとことで誰も助けになど来てはくれないだろう。
そして目の前には、かなり立派な離宮が見えてくる。
しかし、そういう意味の声というわけではない気がするのが問題なのだ。
「今日のために、中はすべて君の好きな色やモノで揃えておたし」
器用に私を抱えたまま、ルドは離宮へのドアを足で開けた。
そしてそのまま二階の一番奥の部屋へ。
「さぁ、着いたよ」
言うなり、ルドは私の体をベッドへと降ろした。
周りを見渡せば、どこかで見たことがあるような既視感に襲われる。
薄いピンクで統一された室内。
カーテンやシーツには細やかな金の刺繍。
そして女の子が好きそうなふわふわしたクッションや人形たち。
どこかで。
でも、前世でというわけではない。
私が住んでいたのは、ただの六畳のワンルームだったから。
「これは……」
「気に入ってくれたかな? 君の部屋と全く同じものを用意したんだよ? 少しでも君の心が落ち着くようにと」
ルドを見上げて、彼の言葉の意味を考えた。
同じモノを用意した。
それはつまり、アーシエが住んでいた部屋を再現しているということだろう。
随分な念の入れようというか、ここまで来ると本当に恐怖でしかない。
「嬉しくて、声も出ないんだね」
違うと否定したくても、声にならない。
しかい否定すれば、もっとひどい結末が待っているのを私は知っていた。
ゆっくりと、ルドが近づいてくる。
ベッドが軋む音は、これから始まることを伝えているように思えた。
恥ずかしさのあまりルドの胸に顔を埋める。
ただ廊下で何人かの人とすれ違ったが、誰も声をかけてはこない。
そのように言いつかっているのか、身分的にも声をかけることができないのか。
どちらにしても、異様な光景であることだけは間違いないだろう。
「ルド様、どうか……どうか、お放し下さい」
「ダメだよ? こんな人のいるところで声を出したら。その口を塞ぐか、聞いた者たちの耳を削ぎ落さなくてはいけなくなってしまうよ」
「ひっ」
口調は柔らかくとも、言っている内容は常軌を逸している。
さすがヤンデレルートなどと、プレイヤーだった頃なら、ただ『すごーい』と感心していたところだろう。
しかし今、ここで実際に自分の身に起こるとなると話はまったく別だ。
私は必死に、ヤンデレルートにはなにがあるか思い出すことにした。
結ばれなかったヤンデレルートは悲惨だ。
確実に、死者が出るようになっている。
その点、これは辛うじて結ばれたと言えるだろう。
しかし、本人が言ったように監禁から出ることは叶わないだろう。
そして一番、今私が恐れているのはこれがエロゲだった場合だ。
監禁の上に、一生そこで快楽を注がれ続ける。
そんなこと、耐えられるのだろうか。
むしろその結末が分かっていて、アーシエは……?
「少し寒いが、大丈夫かい、アーシエ?」
「え、あ、はい」
ルドの言葉で顔を動かすと、風が顔をかすめていく。
どうやら王宮内から外へ移動していたようだ。
鳥籠というくらいなのだから、定番からいけば離宮か塔といったところだろう。
ルドの足取りは軽やかで、初めから決まっていたかのようにどこかへと進んでいく。
「ここが、これからの君の僕の暮らす家になるんだよ。本当は王宮の部屋をと言われたんだけど、あそこだと他の者の目に付くからね。ここなら王宮からも離れているし、どんなに声を出しても大丈夫だからね」
「どんなに、声……を?」
その言葉に背筋が凍る。
ルドの脇から背後を覗き見ると、確かに王宮からはかなり離れていて、大声を出したとことで誰も助けになど来てはくれないだろう。
そして目の前には、かなり立派な離宮が見えてくる。
しかし、そういう意味の声というわけではない気がするのが問題なのだ。
「今日のために、中はすべて君の好きな色やモノで揃えておたし」
器用に私を抱えたまま、ルドは離宮へのドアを足で開けた。
そしてそのまま二階の一番奥の部屋へ。
「さぁ、着いたよ」
言うなり、ルドは私の体をベッドへと降ろした。
周りを見渡せば、どこかで見たことがあるような既視感に襲われる。
薄いピンクで統一された室内。
カーテンやシーツには細やかな金の刺繍。
そして女の子が好きそうなふわふわしたクッションや人形たち。
どこかで。
でも、前世でというわけではない。
私が住んでいたのは、ただの六畳のワンルームだったから。
「これは……」
「気に入ってくれたかな? 君の部屋と全く同じものを用意したんだよ? 少しでも君の心が落ち着くようにと」
ルドを見上げて、彼の言葉の意味を考えた。
同じモノを用意した。
それはつまり、アーシエが住んでいた部屋を再現しているということだろう。
随分な念の入れようというか、ここまで来ると本当に恐怖でしかない。
「嬉しくて、声も出ないんだね」
違うと否定したくても、声にならない。
しかい否定すれば、もっとひどい結末が待っているのを私は知っていた。
ゆっくりと、ルドが近づいてくる。
ベッドが軋む音は、これから始まることを伝えているように思えた。
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