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アトラ統一編

天使とエンジェル

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 なんか戦争ばかりだな。
 そう思いながら、俺は空を飛んでいた。
 目指すは北東の端にある国、聖都と呼ばれるフランシス教国だ。

 フランシス教国には、俺、エンジェルさん、シャドウさんの三人で向かっていた。
 雨宮さんの話だとフランシス教国は中立を守っていたそうだが、今回どうして参戦しているのかわからないそうだ。
 フランシス教国は土地に恵まれていて、狭い土地にも関わらず産出される農作物、金属はアトラ大陸一で各国に輸出をしているほどだった。
 おまけに四方を高い山に囲まれており攻め入るのも難しい土地となっており、他の大陸から見たらアトラ大陸の最奥にある国となる。
 このような条件から、この地に女神がいるとされており、それを裏付けるかのように過去にフランシス教国に戦争を仕掛けた国が天変地異で一晩でほろんだという話もある。
 中立を守っていることや教皇自体も戦争反対派であることもあり、フランシス教国に戦争を仕掛けるという事はアトラ大陸を全土を敵に回すという事になる。
 それ故になぜフランシス教国が戦争に参加しているのか、その理由を探る役割を俺たちは担っていた。





「燃えてるねぇ……」
「うむ、燃えているな」
「でっかいキャンプファイヤーかな」

 山を越えフランシス教国に入ると首都と思われる街は見事に燃えていた。

「なんて言うか、熱い国だな」
「うむ、皆情熱的なのだろう」
「みんなすごい騒いでるな」

 突っ込み役がいない。
 どう見ても内乱である。
 あちこちで人が戦っている。

「よし! まずは聞き込みだ!」

 エンジェルさんはそう言って、戦火のど真ん中へ降りて行った。
 俺たちはそれに続いた。





「な、なんだお前たちは!?」

 法衣を着た人たちが剣を持ち戦っている中へ俺たちが下りると、全員が注目し剣を向けた。

「我々は旅人である! これはいったいどういう事なのだ! 誰か状況説明を頼む!」

 エンジェルさんが周りに聞こえるよう大声で聞いた。

「お前たち、今空から飛んでこなかったか?」

 修道士で良いのかな?
 法衣を着た一人が剣を向けながら言った。
 質問してるのはこっちなんだから答えろよな。

「人が空を飛ぶのは普通であろう!」

 エンジェルさんは腕を組んで仁王立ちで答える。

「人が飛べるわけないだろう!」
「もしかして、魔物か!?」
「変態の魔物か!」

「誰が魔物だぁ!」

 エンジェルさんの声に修道士たちがひるむ。

「私は、人間の重戦士で紳士である!」
「同じく、ヒーラーの紳士だ!」
「俺は鍛冶師で紳士だ!」

「ちゃんと人を見て判断せんかぁ!」

 ・・・・・・・・・。

「「「「「わかるかぁ!」」」」」

 おぉ、エンジェルさんの言葉に一斉に突っ込まれた。

「ならば、改めて名乗ろう! 我が名はエンジェル、重戦士の紳士である!」

「重戦士なら鎧をつけろよ!」
「なんだその恰好は!」
「どう見ても変態じゃないか!」

「信じぬと言うのか。ならば証拠を見せよう!」

 エンジェルさんの言葉に修道士たちが剣を向ける。

「見よ! 我が魔法!」

「重戦士なのに魔法かよ!」
「まて! 詠唱をしていないぞ!」
「重戦士は偽装か!」

「ストーンバレット!」

 そう言って、足元の石を投げた。
 まだそのネタ引っ張るんだ。

 以前と違い、すごい勢いで石が飛んでいく。
 しかし当たらなかった。
 まぁ、あの勢いで当たったら死ぬよな……。

 ・・・・・・・・・。

「石を投げただけじゃねーか!」
「どこが魔法だ!」
「時間の無駄だ、こいつらから倒してしまえ!」

 そう言って、一斉にエンジェルさんに切りかかった。
 エンジェルさんは仁王立ちのまま動かない。

「な、なんだこの硬さは」
「魔法か!?」
「どうなっているんだ!?」

 修道士たちの攻撃はエンジェルさんに傷一つ付けられない。

「肉体を鍛えれば鎧など不要!」

「んな、訳あるか!」
「やっぱりこいつら魔物だ!」
「いや、魔族かもしれんぞ!」

 魔族扱いかよ……。
 大体、ステータス見ても君たち低すぎだよね。
 力が5とか無いでしょう……。
 エンジェルさんにダメージが通るわけないじゃん。
 俺にも通らないけどさ。

「ならば魔法だ! 全員詠唱に入れ!」

 修道士たちはいったん下がり詠唱を始めた。
 ちょっと待って……それは無いだろう。
 前衛がいないのに詠唱を始めるとか馬鹿なの?
 しかも、さっきまで君たち争っていたよね?
 なんで一緒に戦ってるの?

「食らえ魔物ども!」

 修道士たちから無数の魔法が飛んでくる。
 だが、どれも第一サークルの弱い魔法だ。
 避けるほうが面倒なくらいだぞ。

「これでも無傷だと……」
「こうなったら仕方ない! 天使召喚だ!」
「まさか切り札を使うのですか!?」
「仕方あるまい、魔物相手では我々では歯が立たん!」

「むぅ、天使召喚だと」

 うーん、さすがにそれは面倒だな。

「天使が相手なら、私も召喚を使おう」

 エンジェルさんが動く。
 まさか、あれを呼ぶのか……。

「ユニークスキル! 召喚、マッスルエレメンタル!」

 空に魔法陣が現れ、そこからはだしの足が現れる。
 その足はワックスを塗ったかのようにてかてか光っている。
 そして、一気に全身が現れる。
 筋肉質な体に黒いボディ、スキンヘッドの頭。
 そして全長、五メートル。
 巨大なボディビルダーだ。
 そしてこのマッスルエレメンタルはとてもえぐい攻撃を行う。
 絶対に相手にはしたくない相手だ。

 ずしぃんと重い音と共に地に立った巨大なボディビルダーに修道士たちの視線がくぎ付けになる。
 もちろん、筋肉を強調するポーズをとっている。

「な、なんだあれは……」
「巨大な……変態だ……」

「ええい! うろたえるな! 詠唱に集中しろ天使を呼ぶんだ!」

 リーダーらしき男の声に再び詠唱に入る。
 詠唱が終わると次々と召喚天使が現れていったが……。

「え、マジで……」
「ふむ、第一サークルの魔法を使った時点で予想するべきだった」
「別の意味でどうしよう……」

 現れたのはゲームでは守護天使と呼ばれている雑魚中の雑魚だった。

「まぁよい。蹂躙するぞマッスルエレメンタル! チクビームだ!」
「ま゛!」

 エンジェルさんの命令にマッスルエレメンタルが答えた。
 マッスルエレメンタルの乳首が光り輝く。

 うわぁ、相変わらずひどい絵図らだ。

「ま゛~~~~~」

 なんとも言えない緊張感のないマッスルエレメンタルの咆哮と共に、二つのビームが発射される。
 それだけで守護天使が葬り去られていく。

「続けていくぞ! マッスルエレメンタルよ! 輝きの雫だ!」
「ま゛!」

 マッスルエレメンタルが素早く体を振った!
 そこから輝く水滴がすごい勢いで飛んでいく。
 まぁ、ただの汗なんだけどね……。
 汗に当たった修道士たちが次々と吹き飛んでいく。

 全員気絶したのか修道士たちは誰一人動かない。

「しまった、これでは話が聞けないではないか」

 そう言うエンジェルさんの顔はなぜか満足そうだった。


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