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プロローグ

とりあえず決着

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 『緋色の国』においてトッププレイヤーは人前では本気を出さない。
 キャラ性能が段違いで違うため、どうしても妬みなど批判を買ってしまうからだ。
 ユニークスキルを手に入れるにはどうしても長い時間プレイしていないと取れないものが多い。

 何故システムは古参プレイヤーと新規プレイヤーの差をつけているのか?
 結論から言えば、活動範囲が異なるからつけていても問題ないとなっている。

 『緋色の国』はオーストラリア大陸並みにマップが広く今でも半分も攻略が進んでいない。
 トッププレイヤーでも攻略できないほどの難易度が高く設定されているところもあり、もっと強くなる必要があった。
 初心者レベルでも遊びきれないほどのマップ、ダンジョンがあるため飽きることもない。

 プレイ時間のみ時間プレイヤーにとって、こういったレイドボス戦でもない限りトッププレイヤーを目にする機会はほとんどなかった。

「『断空斬』『無限の一撃』」

 ユニークスキルは知られていないものは使いたくないが状況が状況だけに使わざるを得ない。
 だが、実際、ここにいる連中は持っているユニークスキル全部出すことは無いだろう。
 十個とは行かないだろうが、五個前後は持っているはずだ。
 バフ係に至っては出す必要ないし。

 猫鍋さんがやったようにスキルのコンボを繰り出す。
 空間ごと断ち切る『断空斬』高火力で、何でも切ることが出来るユニークスキル。
 それを『無限の一撃』を使い連続で繰り出す。

 今まで以上にレイドボスの体力の減りが早くなる。
 だが、またもやレイドボスは今までにない行動をとる。

「くそ! 回復が厄介だな」

 削ったそばからノータイムで回復される。
 レイドボスの攻撃はバフのおかげでほとんどノーダメージに近いが、たまに見ていることに我慢しきれず突っ込んできたプレイヤーが即死している。
 『命の帰還』で復活できるはずだが復活しない。
 効果が無いんじゃなく、復活した瞬間に再びやられている。
 自分の力量もわからずに馬鹿な行為だと思うが、そんなのにかまっている余裕は無かった。

 時間をかけやっと残り五パーセントまで来た。
 すると突然レイドボスが楽しそうに語りかけてきた。

『やるな、人の子よ。最後のあがきをさせてもらうぞ!』

 突然、空に巨大な魔法陣が展開された。

 ここまでの巨大な魔法はプレイヤーが使用する魔法では存在しない。
 魔法陣は魔法を使用する際に必ず現れるエフェクトだ。
 いや、それ以前にレイドボス、と言うかモンスターが魔法だと?
 そんな仕様は無いはずだ。
 基本的にこのゲームではモンスターはスキルと言う形で特殊能力を使う仕様になっている。
 魔法陣は現れないし即効果が発生するが、決まった能力しか使えない。
 それ故に、対応が出来ていた。

 一体何の魔法だ……。

『流星雨』

 レイドボスは魔法名を名乗った。

 魔法陣から無数のこぶし大の燃える石がすごいスピードで降ってくる。
 それもかなりの広範囲だ。
 その結果、離れて避難していたプレイヤーやサポートに徹してくれていたプレイヤーが全滅する。
 『命の帰還』も連続して襲ってくる流星雨の前には無意味だった。
 残ったのは俺たちのギルドは全員無事だが防御魔法は全て破壊されている。
 『黄昏の翼』と『自由世界のアリス』はトッププレイヤーの数人。
 こちらもすべて防御魔法を破壊されている。
 ソロプレイヤーも数人残っている。
 『命の帰還』の効果が発生していないのは、さすがトッププレイヤーと言うところだろう。

 大体三十人くらいか。
 なんだよ、ユニークスキルすら破壊する威力って、有り得ないだろう。
 もう一回来たらやばいぞ。

 大魔法ほどクールタイムが長い仕様だがレイドボスには関係ないようだ。
 また、空に同じ魔法陣が展開された。

「『完全なる城壁』!」

 ボンドさんが違うユニークスキルを発動させた。
 巨大な壁がボンドさんと雪兎さんの頭上に斜めの形で展開された。
 確か、物理にのみ絶対的な防御を誇るスキルだ。

「すまん、ここを守るだけで精いっぱいだ!」

 ボンドさんが叫ぶ。
 それに、猫鍋さんが答える。

「かまわない! 雪兎さんのバフは俺たちの生命線だ!」

「『死神の盾』『生命の変換』」

 ヨルさんが防御スキルをかけ直し、さらに追加でスキルをかける。
 俺も知らないスキルだ。

「『生命の変換』はライフが0になっても魔力が肩代わりをしてくれるでござる。だが、魔力もゼロになったら死んでしまうでござる!」

 なるほど、この状況ではないよりましか。
 戦士系は元々魔力が少ないし、魔法系は攻撃に魔力を消費している。

「『加速』のスキルを持っている人は使うんだ!」

 猫鍋さんが叫ぶ。
 つまりよけろって事だ。

 無茶苦茶だな、でもやらなければ死ぬだけだ。

 面白いじゃん!

 再び魔法陣から流星が降り注ぐ。
 今度は誰も死ななかった。

 あぁ、避けてやったさ!
 トッププレイヤーと言われているのは伊達じゃない!

「雪兎さん! 例の曲を! 皆、残り五パーセント一気に削るぞ!」

 猫鍋さんが叫ぶ。
 賭けに出た。
 つまり防御を捨てての一斉攻撃だ。

 雪兎さんが、イントロを飛ばして歌う。
 有名ビジュアルバンドの歌。
 防御がゼロになる代わりに攻撃力が表示される限界を超えてプラスされる、仕様を無視したチートクラスの効果。

 雪兎さんを除き、全員攻撃態勢に入る。
 そして三度目の魔法陣が空に展開された。

 まさにデッド・オア・アライブ。
 正直、この状況を楽しいと感じている。

 だからと言って手を抜けない。
 こんな状況でしか使えないスキルを都合よく持ってるもんだと、自分自身に呆れてしまう。

 ライフと魔力を1残して全てを消費し十連続の極大ダメージを与えるスキル。
 『最後の一撃』。
 その名のままのユニークスキルだ。

「いくぞぉぉぉ!」

 猫鍋さんの掛け声とともに全員が一斉に攻撃を仕掛けた。

 どいつもこいつも見たことのないスキルを使っている。
 この状況でも温存かよ、これだからトッププレイヤーは。

 まぁ、俺も人の事言えないけど。

 衝撃だけが激しかった。
 爆発すら吹き飛ばしてしまうほどの衝撃。

 もう、色々と有り得ないだろう。
 ゲームの仕様無視しまくりの状況で……。

 レイドボスは跡形もなく吹き飛んでいた。
 本気の火力とんでもないな……。

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