異界の探偵事務所

森川 八雲

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アシスタント?

調査開始

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学校が終わり、爽が帰ってきた
「ただいまです」
「おかえり」

今日は筋トレをせずに何やら書類を眺めている

「何見てるんですか?」
「あぁ、君ん家の間取り図だよ」
「いつの間に…」

「どうも腑に落ちないんだよな」
「何がですか?」

「いや、まぁ先に着替えておいで、行きながら話すよ」
「わかりました」

着替えを済ませ事務所へ戻る

「準備できました」
「よし、じゃあ行こうか」

事務所と家はそれ程離れていないので徒歩で行くことになった
と、いうのは建前で、単に交通費を浮かせるためだ

「で、さっきの話ですが」
「あぁ、間取り図を見て思ったんだが、どうも違和感があるんだ」

「違和感ですか」
「具体的にいうと、部屋が狭い」

「え?どういうことなんですか?」
急にディスられた…わけではなさそうだ

「間取り図通りなら、もう少し居間は広いはずなんだ」
「はぁ」
「ま、君も知らないなら、後は現場を見てからだな」

二駅歩いて家に着いた

相変わらずボロボロだ
あれから天井が崩れたのか瓦礫が増えている

「こりゃ大変そうだな…」
しかめっ面で言う

「ご苦労さまです!」
門番をしている警官が敬礼をする
「どうも」

軽く挨拶を済ませ居間へ向かう

「ここか…」
北側の壁があった場所へ向かうと次郎は瓦礫をどかす

50センチ程だろうか、空間があったのが分かる

「これ…全然知りませんでした…」
「どうやら家族にも秘密にしてた宝物庫らしいな」
「宝物庫?」
「これ」
そういって手渡されたのはアーティファクトだった
「これは…破壊のアーティファクト…」
「多分、そういった物騒なものを隠してたんだろう」
「でも、回収したものは国に預けてたはずじゃ」
「信用出来なかったんだろう?」
「確かに以前何回か電話で揉めているのを聞いたことがあります」
「国も人に回収させて、その後何に使うかわかったもんじゃないからな」
「国が信用できないんですか?」
「大きすぎる力だからな、恐れていたんだろう、まぁ、国がそんなことしたら、それこそ信用を失うけどな」

瓦礫をどかしながら言う
「他には見当たらないな、多分ここにあるものが欲しくて破壊したんだろな」

「一応聞くけど心当たりは?」
「いえ、全然」
「そうだろうな、じゃあ本格的に調査しますか」

今分かっていることは、隠し部屋にあった物が欲しくて破壊した事
そして、爆発物を使わずに爆破した事だ

爆発したにも関わらず爆発直後に持っていった事から、目撃者も期待できないだろう

恐らく部屋に居ながら爆発させ自分は盾で防いだものと思われる

その証拠に一人分の幅だけ床がまっさらだ

「これは…君と同じ様な力を持った奴の仕業かな」
「私と同じ様な力…」
「アーティファクトを使う能力だ、シバルバの剣程の力を使う奴はそうそうないだろう」
「アーティファクトをこんな事に…」
「そうだな、包丁と同じでう使う人次第って事だ」

「さて、調査だけど、まずは君からやってごらん」
「どうやってですか?」
「この空間に意識を集中して風の動きを捉えるんだ」

意識を集中する
脳裏に居間が再現される
その中の空気の流れを捉える

すると、爆風がはじまり空気が一気に押し出される
その後気圧が下がった所に空気が戻ってくる

「はぁ、はぁ…爆心地まではわかりました…けど、それ以上は…」
「上出来、上出来、少しずつ慣れていこう」

「爆心地はここだな?」
「はい、そうです」
そこは壁があったとこらから1メートル程離れた所だ
「ここが爆心地で、術者はここに立っていた」
術者の位置は南側のガラス戸の辺りだ

次郎はそこに立って辺りを見回している

まだ崩れていない部分の天井を見上げ
「あれか」
そう呟くと右手を伸ばす
すると小さな欠片が落ちてきた

それを爽に見せる
「これが破壊のアーティファクトの一部だ、何か分かるかい?」

「ん…無理やり発動させた感じがする…まだ素人か独学か…」
「他には?」
「他には…女の人かな…」

「犯人は女か…」

「それじゃ足取りを追うか」
「どうやるんですか?」
「さっきの風の力を使う」
「風?」

次郎は手を広げ目を閉じる
「風の精霊よ…」

ふわっと風が舞い込む
すると何か焦げ付いた匂いではなく少しいい香りがする…香水か?
「今残ってる犯人の匂いを集めた、これで逃げた方向を掴む」
「はい!」

「しかし、香水を付けてるなんて間抜けな犯人だな」
「でも一般人には分からないと思いますよ?」
「それもそうだな」

匂いが続く方へ向かう
南側のガラス戸から外へ出た様だ

そこから道に出て西へ…
匂いはそこから薄くなって、最終的に20メートル程で分からなくなってしまった

「ここまでか…もっとジャブジャブ香水付けろよな」
「もう追えないんですか?」
「ああ、部屋と違って遮るものが殆ど無いからな、匂いが分かるまで集めるとなると大変だ」
「そうですね、そういうアーティファクトが有れば良いんですが…」
「まあ言っても仕方ない、このまま行こう」
「はい」

そのまま怪しい建物などないか注意しながら歩き続けたがそれらしいものは無かった

「今どき怪しい建物なんか無いだろうな、ドラマじゃないんだし」
「そうですね、あ、ちょっとコンビニに寄りません?」
「お?いいぞ」

目前にコンビニの看板が見える

入り口のチャイムが鳴り店員がバックヤードから出てくる
「いらっしゃいませー」

「何を買うんだい?」
「ちょっと飲み物を」

かさね茶のボトルを手に取りレジへ向かう

すると、僅かだが追っていた香水の匂いがする
「次郎さん!」
「ん?どした?」
「香水の匂いが…」
「む、ここからまた追えるかもしれないな」
「ええ」

支払いを済ませ外へ出る
しかし犯人はどうしてコンビニに?
目撃者が居ないと言うことは黒い服など目立たない格好をしていたと思うが…
どこかで着替えた?

「爽、こっちだ」
向かう先はコンビニと民家の間にある狭い道だ
「暗いですね…灯りをつけましょうか?」
「いや、シバルバはなるべく使わない方がいい」

そう言うと手のひらを上にし
「火の精霊よ…」

ポッという音とともに空中に小さな火の玉が浮かんだ
辺りを照らすのには十分である

細道が終わると…
「あれ?出ちゃいましたね、この通りに何かあるかと思ったのに」
「戻ってみるか」

戻るとさっきのコンビニに出た
当たり前だが…

「結構歩いたのに両側全部壁だったな」
「そうですね…地図を見ると建物が何件かある筈なんですが」
「はぁ、惑わされたか」
「まさか幻視?」
「かもしれないな、もう一度行こうか」

地図を見ながら道に入るとGPSか狂わされているのか現在地は道の前で止まっている

「GPSが機能しないみたいですね」
「機械にも干渉するのか、厄介だな」

「風の精霊よ」
前から優しい風が吹く
「横道があれば風の流れで分かるはずだ」

感覚的に中心ぐらいか
風が弱くなった、横にも流れているからだ

「この壁か」
手を入れると壁をすり抜ける

「土の精霊よ」
壁が消えていき、灯りがついていない建物が見える
小さなプレハブの様な建物だ

「用心しろよ、何があるか分からないからな」
「はい、アーティファクトで防御結界を張りますか?」
「いや、相手に気付かれる恐れがある、このまま乗り込もう」
「はい」

こうもあっさり見つかるとは…
しかし、まだ犯人の居場所とは限らない

屈みながら壁伝いにプレハブへ近づき気配を探る

「…誰も居なさそうだな」

流石にドアには鍵がかかっている

「ここは香りも強いですね」
「そうだな、鍵を焼き切るか、火の精霊よ」
人差し指に炎の塊を作る
そしてそれが細長くなる
そのまま鍵穴へ刺すと焦げた匂いがする

「よし、水の精霊よ」

水でドアノブを冷ます
蒸発し水蒸気が立ち昇る

「入るぞ」
ドアを開け中を覗くが誰もいない
誰もいないどころか何も無い

「もぬけの殻か?」
その言葉がしっくりくる

「ん?足跡があるな…」
「あそこで途切れてますね」
隠し扉というのがバレバレだ

1メートル四方で区切られた床板を開けるとハシゴがある

「これは降りるしかなさそうだな…」
「そうですね、行きましょう」

ハシゴを降りると横道が続いている

奥へ進むと、上に筒状の穴があるが、ハシゴがなく行き止まりだ

「これどうします?」
「う~ん?どうしようか…」

「一旦戻って外に出るか」
「そうですね…」
「っと、その前に、風の精霊よ」
途端、空気が静かになり上から何か聞こえる
「これは…?」
「あぁ、風の精霊に頼んで上の音を下まで引っ張ってもらったんだ」
こんな使い方もあるのかと感心した

「……明日もう一度…に…行くぞ…」
「は…りま…」

「ん~これが限界か…」
「明日がどうとか言ってましたね」
「君の家の隠し倉庫にある物が目的じゃなかったのか?」
「よし、戻るか」
「はい」

来た道を戻り倉庫の外へ出る

「ここじゃ何だからコンビニで話をしよう」

コンビニの駐車場の隅で
「奴らはもう一度君の家に来るみたいだな」
「その様ですね、でも時間が分かりません」
「君ならどうする?」
「私ですか…私なら夜コッソリ来ますね」
「決まりだな、一旦事務所へ帰って明日出直そう」
「そうですね、帰りますか」

また歩いて帰った
足が凄く鍛わりそうだ…

事務所へ帰ると同時に一本の電話
プルルル、プルルル

「はい、蒼葉探偵事務所…」
まで言ったところでスピーカーに変える
「もしかしてそちらにあるのかな?明日の23時までに戻しておくように、そうすれば危害は加えない…」
プツッ、ツー、ツー

「狙いはソレか」
シバルバの剣を見る
「その様ですね」

「どうしますか?」
「奴らを捕まえるチャンスでもあるな」
「私は実戦経験は薫さんしか無いですよ?」
「薫を相手に出来ればまず負けないから安心しろ」
「そうですか…」

薫との実戦訓練は"絶対に死なない"という安心感があったが、今回はどうだ
人の家を爆破させるような人達だ
人数も分からない、最悪死ぬことさえありえる
ちゃんと戦えるだろうか…

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