10 / 17
樹乃森 隆
対峙
しおりを挟む
部屋に足を踏み入れた爽は異様な光景を目にする
悪意の塊の様な黒いものの向こう側に父の姿がある
「お父さん!」
「爽か?!来るな!逃げろ!」
「嫌!一緒に帰るの!!」
「ふふ、もう一人生贄が来たか」
上げていた手を下ろし爽の方へ振り向く
片手を前に出し手の平から雷のようなものが放たれる
バジィッ!
爽には当たらず、手前で地面に吸い込まれる
「ほう?お前も美味しそうな魂を持っておるな」
邪悪な笑みを浮かべているのが感覚で分かる
「お父さんから離れなさい!」
「こいつは世の生贄だ、お前には渡さない」
父がすきをついて逃げようとするも、逃げられないように小さな結界が貼られる
「そんな…」
結界を貼る手順が無く、瞬時に結界が貼られた
「爽!こいつは恐らく簡単な術式なら手順を飛ばせる!気を付けるんだ!」
幸いあの黒いやつとは少し距離がある
さっきの雷もあいつなら"簡単な"術なんだろう
「そんなに喚くな、先にお前の魂を頂くとしよう」
両手を上げまたブツブツと呪文を唱え始めた
「やめてー!!」
ナイフで斬りつけるも手応えが無い
「そこで大人しくしていろ、コイツの次にお前の魂も喰らってやろう」
攻撃を防ぐアーティファクトとは別でもう一つ持っていている
今ここで使えばヤツを倒せるかもしれないが…
迷っている暇は無い
「私はお前を倒す!」
「爽、まさかアレを持ってきたのか!」
アーティファクトを足元に落とすと同時にナイフで手の平を切る
溢れた血がアーティファクトに落ちる
その瞬間この空間が真っ黒になった
「爽!やめろ!」
「なんだ?これは…」
黒いものは呪文を止めて辺りを見回す
今は景色と同化してしまって見えないが感覚で分かる
「血の盟約に従え!ヤツを滅ぼせ!」
爽がそう言うと黒かった辺りが今度は白くなった
「何をするつもりだ!」
黒いものは明らかに警戒している
未だ溢れ出る血はアーティファクトが飲み込んでいく
「爽!やめろ!死ぬつもりか!」
しかし爽は聞いていない
黒いものを倒すことだけを考えている
アーティファクトが割れ中から悪魔が現れた
黒いものは雷を放つが当たっても何も起こらない
全くの無傷だ
「驚いた?私が血をあげ続ける限りこのデーモンは死ないわ!」
アーティファクトはいわば触媒である
デーモンを呼び出す代価として血を払うのだ
これが母親からもらった唯一の形見である
「お母さんごめん!」
「爽!」
デーモンが黒いものに迫る
黒いものは何度か抵抗するが全く効果がない
「爽!」
結界から開放された父が爽を抱きしめる
「もういいんだ!お前だけでも逃げろ!」
「やだ!お父さんも一緒!」
血が尽きたらデーモンも消える
爽が居なくなればまた黒いものが魂を欲しがるだろう
入り口は爽が壊してしまったためアイツが外に出たら大変な事になる
「後は俺に任せてここから出なさい!捜索隊も来ているんだろう?!」
「嫌!せっかく助けに来たのに…!」
「西川君!爽を!」
「わかりました!」
捜索隊は入り口で待機していた
黒いものが怖くて近付けないでいたのだ
「いや!パパ!!」
「おい!お前は俺がとどめを刺してやる!」
隆はそう言うと自分の手首にナイフを入れた
大量の血が落ちる
その瞬間人間ほどのサイズだったデーモンが極端に大きくなり片手で黒いものを掴む
「タダでは滅びんぞ!」
両手から雷がほとばしる!
隆に当たり肉が焦げる匂いが立ち込める
守りの結界を貫通してきたのだ
「ぐっぐうう!まただ!まだ死なんぞ!」
全身が焼け傷口が閉じてしまったが再度ナイフで手首を切る
「これで俺の勝ちだ!」
「いやー!パパーー!!!」
デーモンはそのまま口に放り込むと同時に消えた
あの黒いものも居ない
「デーモンが消えたって…事は…あの黒い…ものも…居なくなっ…たん…だな…」
「パパー!!」
爽が駆け寄るも全身に熱傷があり瞼や唇が爛れている
「パパ!どうして!」
「これ…は…私の…責…任…でも…ある…素直に…諦めて…い…たら…」
喋るのすらままならない
「先生!しっかり!今ストレッチャーが来ますから!」
「もう…いい…助から…ない事は…わか…て…る」
「そんな!パパ!いや!」
「帰っ…たら…大…魔神…大社へ…行き…なさい…。助…けに…なって…くれる…だろう…」
ポケットから名刺入れを取り出し爽へ握らせる
「西川先生!ストレッチャー来ました!」
「わかった!さ、爽お嬢さん離れて」
西川達が父親をストレッチャーに乗せ酸素ボンベを付ける
「爽…金庫に…」
「パパ!」
………
悪意の塊の様な黒いものの向こう側に父の姿がある
「お父さん!」
「爽か?!来るな!逃げろ!」
「嫌!一緒に帰るの!!」
「ふふ、もう一人生贄が来たか」
上げていた手を下ろし爽の方へ振り向く
片手を前に出し手の平から雷のようなものが放たれる
バジィッ!
爽には当たらず、手前で地面に吸い込まれる
「ほう?お前も美味しそうな魂を持っておるな」
邪悪な笑みを浮かべているのが感覚で分かる
「お父さんから離れなさい!」
「こいつは世の生贄だ、お前には渡さない」
父がすきをついて逃げようとするも、逃げられないように小さな結界が貼られる
「そんな…」
結界を貼る手順が無く、瞬時に結界が貼られた
「爽!こいつは恐らく簡単な術式なら手順を飛ばせる!気を付けるんだ!」
幸いあの黒いやつとは少し距離がある
さっきの雷もあいつなら"簡単な"術なんだろう
「そんなに喚くな、先にお前の魂を頂くとしよう」
両手を上げまたブツブツと呪文を唱え始めた
「やめてー!!」
ナイフで斬りつけるも手応えが無い
「そこで大人しくしていろ、コイツの次にお前の魂も喰らってやろう」
攻撃を防ぐアーティファクトとは別でもう一つ持っていている
今ここで使えばヤツを倒せるかもしれないが…
迷っている暇は無い
「私はお前を倒す!」
「爽、まさかアレを持ってきたのか!」
アーティファクトを足元に落とすと同時にナイフで手の平を切る
溢れた血がアーティファクトに落ちる
その瞬間この空間が真っ黒になった
「爽!やめろ!」
「なんだ?これは…」
黒いものは呪文を止めて辺りを見回す
今は景色と同化してしまって見えないが感覚で分かる
「血の盟約に従え!ヤツを滅ぼせ!」
爽がそう言うと黒かった辺りが今度は白くなった
「何をするつもりだ!」
黒いものは明らかに警戒している
未だ溢れ出る血はアーティファクトが飲み込んでいく
「爽!やめろ!死ぬつもりか!」
しかし爽は聞いていない
黒いものを倒すことだけを考えている
アーティファクトが割れ中から悪魔が現れた
黒いものは雷を放つが当たっても何も起こらない
全くの無傷だ
「驚いた?私が血をあげ続ける限りこのデーモンは死ないわ!」
アーティファクトはいわば触媒である
デーモンを呼び出す代価として血を払うのだ
これが母親からもらった唯一の形見である
「お母さんごめん!」
「爽!」
デーモンが黒いものに迫る
黒いものは何度か抵抗するが全く効果がない
「爽!」
結界から開放された父が爽を抱きしめる
「もういいんだ!お前だけでも逃げろ!」
「やだ!お父さんも一緒!」
血が尽きたらデーモンも消える
爽が居なくなればまた黒いものが魂を欲しがるだろう
入り口は爽が壊してしまったためアイツが外に出たら大変な事になる
「後は俺に任せてここから出なさい!捜索隊も来ているんだろう?!」
「嫌!せっかく助けに来たのに…!」
「西川君!爽を!」
「わかりました!」
捜索隊は入り口で待機していた
黒いものが怖くて近付けないでいたのだ
「いや!パパ!!」
「おい!お前は俺がとどめを刺してやる!」
隆はそう言うと自分の手首にナイフを入れた
大量の血が落ちる
その瞬間人間ほどのサイズだったデーモンが極端に大きくなり片手で黒いものを掴む
「タダでは滅びんぞ!」
両手から雷がほとばしる!
隆に当たり肉が焦げる匂いが立ち込める
守りの結界を貫通してきたのだ
「ぐっぐうう!まただ!まだ死なんぞ!」
全身が焼け傷口が閉じてしまったが再度ナイフで手首を切る
「これで俺の勝ちだ!」
「いやー!パパーー!!!」
デーモンはそのまま口に放り込むと同時に消えた
あの黒いものも居ない
「デーモンが消えたって…事は…あの黒い…ものも…居なくなっ…たん…だな…」
「パパー!!」
爽が駆け寄るも全身に熱傷があり瞼や唇が爛れている
「パパ!どうして!」
「これ…は…私の…責…任…でも…ある…素直に…諦めて…い…たら…」
喋るのすらままならない
「先生!しっかり!今ストレッチャーが来ますから!」
「もう…いい…助から…ない事は…わか…て…る」
「そんな!パパ!いや!」
「帰っ…たら…大…魔神…大社へ…行き…なさい…。助…けに…なって…くれる…だろう…」
ポケットから名刺入れを取り出し爽へ握らせる
「西川先生!ストレッチャー来ました!」
「わかった!さ、爽お嬢さん離れて」
西川達が父親をストレッチャーに乗せ酸素ボンベを付ける
「爽…金庫に…」
「パパ!」
………
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
✖✖✖Sケープゴート
itti(イッチ)
ミステリー
病気を患っていた母が亡くなり、初めて出会った母の弟から手紙を見せられた祐二。
亡くなる前に弟に向けて書かれた手紙には、意味不明な言葉が。祐二の知らない母の秘密とは。
過去の出来事がひとつづつ解き明かされ、祐二は母の生まれた場所に引き寄せられる。
母の過去と、お地蔵さまにまつわる謎を祐二は解き明かせるのでしょうか。
ダブルネーム
しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する!
四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。
PetrichoR
鏡 みら
ミステリー
雨が降るたびに、きっとまた思い出す
君の好きなぺトリコール
▼あらすじ▼
しがない会社員の吉本弥一は彼女である花木奏美との幸せな生活を送っていたがプロポーズ当日
奏美は書き置きを置いて失踪してしまう
弥一は事態を受け入れられず探偵を雇い彼女を探すが……
3人の視点により繰り広げられる
恋愛サスペンス群像劇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる