異界の探偵事務所

樹乃森 隆

アーティファクト

「ここは…遺跡の内部か…？」
扉が光ったと思ったら何もない場所に来ていた

いや、何もないわけじゃない、数メートル先に祭壇が見える

祭壇まで近付くと人の形に凹みがある
頭側にはモノリスの様に大きな石版が立っている
しかし、それ以外何もない空間だ
後ろを振り返るも、入ってきた扉もない

石版の解読を試みる…
「だい…ち…の…せいれい…に…このもの…の…たま…しい…を…さず…け…る…」
ここまでは読めたが、その下は見たことが無い文字が並んでいる

石版の裏へ回ると、ここにも人形の凹みがある

「どういうことだ？祭壇と生贄は分かる、しかしこっちの凹みは…？」

その時だった、いつの間にか居た"人の様なもの"が話しかけてくる
「お前は何者だ…世の生贄ではないのか…」
振り返りながら胸ポケットにしまっているアーティファクトを握る
黒いオーラと呼ぶのだろうか、そのオーラのせいでよく見えないが、かろうじて人の姿をしているのは分かる
「お前こそ何者だ、生贄とはなんだ」
「そうか、何も知らないでここへ来たのか」
人のようなものが手を伸ばしこちらへ向かってくる
後ろへ下がろうとしたが、壁があってこれ以上下がれない
しわがれた肌の骨ばった手が迫る
「くそっ！精霊よ！盾となれ！」
アーティファクトに込められた精霊の力を使い盾となる結界を張る
「ほう、なかなか良いものを持っているな、それが使えるということはお前の魂はとても美味そうだ」
今の俺にはコイツを祓う力は無い…攻撃用のアーティファクトも持っておけば良かったな…
人のようなものは両手を上げ不気味な声で何かブツブツ言っている
これは呪文だ！
「さあ、もうこれで終わりだ、世の糧となれ」

──･･･