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木下健二
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私は朝から走り回っていた
会社内で忙しくしていたという意味じゃない
実際にあちこちの寺や神社を駆け巡っていた
「はぁ、はぁ…少し…はぁ…休憩…だ…」
自販機でコーヒーを買う
いくら寺や神社を回ったところで無駄なんじゃないか?
殆どがお祓いなんてやってないじゃないか…
一体全体本当にそんな事が起きているのか?
主任に言われた事を思い出す…
─回想─
「木下さん、ちょっと」
小さく手招きされる
「はい、何でしょう?主任」
「実はね…頼みたいことがあるんだけど」
主任は少し考えながら
「木下さんはまだ入って日が浅いから知らないと思うけど、ここって"出る"んだよね…」
そう言って床を指差している
だいたい察しはついたが、あえて聞いてみる
「出るって、なにがですか?」
主任は苦笑いしながら答える
「ほら、ね?、幽霊?っていうやつ?」
私は中途で入ってまだ3日目だ
当然研修中の身である
こんな研修なんて聞いたことがない
「はぁ、それで私にどうしろと…?」
本当にどうしろというのだ、生まれてこの方幽霊なんてものは見たことが無い
それに幽霊関係はドラマや映画で見る知識ぐらいだ
「そこで、木下さんにはお寺か神社でお祓いができないか聞いてきてもらいたいんだ」
「それは…電話では駄目なんですか?」
「そうだなぁ、見てもらったほうが早いかな」
そう言うと、主任は手招きをする
付いていくと事務所の神棚に手を伸ばし、何かを探している
安全祈願や商売繁盛等に使われるごく一般な神棚だ
こういうのは前の会社にもあった
「あったあった」
主任が手にとったものを見せてくる
「これは…何ですか?」
手のひらに収まるサイズの丸い玉だった
凄く磨かれていて、まるで占い師が使う水晶玉の様に綺麗な反射をしている
「この会社はここに移転してまだ半年なんだけど…」
主任が言うには開業してすぐに"現象"が起きたという
ある日、出勤すると神棚の真下がびしょ濡れになっていたらしい
最初は週1ぐらいの頻度が段々と短く、水の量が多くなったという
業者を呼んで壁内や地下の配管、天井裏を見てもらったが水が出る原因となるものはなかったらしい
それで気が付いたのがあの"玉"というわけだ
なんでもここに元々あった民家を壊した際に出てきたもので
社長が気に入って神棚に飾っておくように言ったそうだ
それ以来、その現象が起きたというわけだ
何故、玉と水が関係するのか解らないが
私は新人でとてもじゃないが断れないし
今日は出張手当も出るのでこうして頑張って探し回っているのだ
玉をポケットに入れながら…
─回想終わり─
一息ついたところで、獣道みたいなものを見つけた
暑いし日陰になるからと一歩足を踏み入れたとき
急にポケットが冷たくなった
「うわっ!なんだ?!」
スポンを触ると少し濡れている
慌ててポケットにから玉を出すと、玉全体から水が滲み出ているのが分かる
「ほぉ~こんな事って本当にあるんだな…」
っと、感心している場合じゃない
これじゃまるで"お漏らし"をしたみたいじゃないか!
外を歩いて誰かに見られると誤解を招くと思い
そのまま獣道の奥へ行くことにした
「はぁ~何だここは…」
数メートル進むと開けた場所に出た
そこに現れたのは何とも不思議な神社だった
「だい…まじん…おおやしろ…?」
そこには"大魔神大社"と書かれた社号標が立ててある
が、名前に似つかわしくない小さくてボロい(失礼)建物があるぐらいだ
「おや?人間じゃないか。よくここに入れたねぇ」
「うわっ!」
急に声をかけられたので驚いてしまった
いま"ニンゲン"て言ったか?動物が多いのかな?
「そうか、ソレのおかげで入ってこれたんだねぇ」
男は玉を指差してそう言った
見た目は私より年下だろうか…スーツに身を包み目を細めて笑っている
「ソイツはココじゃ無理だねぇ。この場所へ行ってみるといい」
そう言って差し出した名刺には"碧衣探偵事務所"と書いてある
裏に地図まである丁寧な造りだ
って、そんな事より…
「コレが何か知ってるんですか?!急に水が出て…」
男は人差し指を口に立ててこう言った
「知ってるけど知らないよ。それとあまり大きな声を出さないでほしいんだ。精霊が驚いちゃうからねぇ」
「とにかくソコへ行ってご覧。きっと力になってくれる筈だから」
「わ…わかりました…とりあえず行ってきます。ありがとうごさいました」
一礼してもと来た道を戻る
「いったい何だったんだ?さっきの人は神社の関係者だったのか?」
そんな事を考えつつ振り向くと雑木林が広がっていた
ただ出ただけなのに、さっきの獣道が見当たらない…白昼夢だったのか?
しかし手には玉とさっきもらった名刺が握られていた
裏に書かれた地図を元にやっと探偵事務所にたどり着いたが、何やら中が騒がしい
一応呼び鈴を押しているが出てくる様子は無い
「えぇ…この状況でノックしても聞こえないだろ…」
しかし他に手段がなく、仕方なくノックをしてみた
コン、コン、コン
「やっぱり気付かないよなぁ…」
仕方ない、気づくまでノックするか…
コン、コン、コン
コン、コン、コン
中が静かになった
「お、やっと気付いたかな?」
扉を開け、中へ入る
「あの、すみません。依頼をさせていただきたいのですが…」
会社内で忙しくしていたという意味じゃない
実際にあちこちの寺や神社を駆け巡っていた
「はぁ、はぁ…少し…はぁ…休憩…だ…」
自販機でコーヒーを買う
いくら寺や神社を回ったところで無駄なんじゃないか?
殆どがお祓いなんてやってないじゃないか…
一体全体本当にそんな事が起きているのか?
主任に言われた事を思い出す…
─回想─
「木下さん、ちょっと」
小さく手招きされる
「はい、何でしょう?主任」
「実はね…頼みたいことがあるんだけど」
主任は少し考えながら
「木下さんはまだ入って日が浅いから知らないと思うけど、ここって"出る"んだよね…」
そう言って床を指差している
だいたい察しはついたが、あえて聞いてみる
「出るって、なにがですか?」
主任は苦笑いしながら答える
「ほら、ね?、幽霊?っていうやつ?」
私は中途で入ってまだ3日目だ
当然研修中の身である
こんな研修なんて聞いたことがない
「はぁ、それで私にどうしろと…?」
本当にどうしろというのだ、生まれてこの方幽霊なんてものは見たことが無い
それに幽霊関係はドラマや映画で見る知識ぐらいだ
「そこで、木下さんにはお寺か神社でお祓いができないか聞いてきてもらいたいんだ」
「それは…電話では駄目なんですか?」
「そうだなぁ、見てもらったほうが早いかな」
そう言うと、主任は手招きをする
付いていくと事務所の神棚に手を伸ばし、何かを探している
安全祈願や商売繁盛等に使われるごく一般な神棚だ
こういうのは前の会社にもあった
「あったあった」
主任が手にとったものを見せてくる
「これは…何ですか?」
手のひらに収まるサイズの丸い玉だった
凄く磨かれていて、まるで占い師が使う水晶玉の様に綺麗な反射をしている
「この会社はここに移転してまだ半年なんだけど…」
主任が言うには開業してすぐに"現象"が起きたという
ある日、出勤すると神棚の真下がびしょ濡れになっていたらしい
最初は週1ぐらいの頻度が段々と短く、水の量が多くなったという
業者を呼んで壁内や地下の配管、天井裏を見てもらったが水が出る原因となるものはなかったらしい
それで気が付いたのがあの"玉"というわけだ
なんでもここに元々あった民家を壊した際に出てきたもので
社長が気に入って神棚に飾っておくように言ったそうだ
それ以来、その現象が起きたというわけだ
何故、玉と水が関係するのか解らないが
私は新人でとてもじゃないが断れないし
今日は出張手当も出るのでこうして頑張って探し回っているのだ
玉をポケットに入れながら…
─回想終わり─
一息ついたところで、獣道みたいなものを見つけた
暑いし日陰になるからと一歩足を踏み入れたとき
急にポケットが冷たくなった
「うわっ!なんだ?!」
スポンを触ると少し濡れている
慌ててポケットにから玉を出すと、玉全体から水が滲み出ているのが分かる
「ほぉ~こんな事って本当にあるんだな…」
っと、感心している場合じゃない
これじゃまるで"お漏らし"をしたみたいじゃないか!
外を歩いて誰かに見られると誤解を招くと思い
そのまま獣道の奥へ行くことにした
「はぁ~何だここは…」
数メートル進むと開けた場所に出た
そこに現れたのは何とも不思議な神社だった
「だい…まじん…おおやしろ…?」
そこには"大魔神大社"と書かれた社号標が立ててある
が、名前に似つかわしくない小さくてボロい(失礼)建物があるぐらいだ
「おや?人間じゃないか。よくここに入れたねぇ」
「うわっ!」
急に声をかけられたので驚いてしまった
いま"ニンゲン"て言ったか?動物が多いのかな?
「そうか、ソレのおかげで入ってこれたんだねぇ」
男は玉を指差してそう言った
見た目は私より年下だろうか…スーツに身を包み目を細めて笑っている
「ソイツはココじゃ無理だねぇ。この場所へ行ってみるといい」
そう言って差し出した名刺には"碧衣探偵事務所"と書いてある
裏に地図まである丁寧な造りだ
って、そんな事より…
「コレが何か知ってるんですか?!急に水が出て…」
男は人差し指を口に立ててこう言った
「知ってるけど知らないよ。それとあまり大きな声を出さないでほしいんだ。精霊が驚いちゃうからねぇ」
「とにかくソコへ行ってご覧。きっと力になってくれる筈だから」
「わ…わかりました…とりあえず行ってきます。ありがとうごさいました」
一礼してもと来た道を戻る
「いったい何だったんだ?さっきの人は神社の関係者だったのか?」
そんな事を考えつつ振り向くと雑木林が広がっていた
ただ出ただけなのに、さっきの獣道が見当たらない…白昼夢だったのか?
しかし手には玉とさっきもらった名刺が握られていた
裏に書かれた地図を元にやっと探偵事務所にたどり着いたが、何やら中が騒がしい
一応呼び鈴を押しているが出てくる様子は無い
「えぇ…この状況でノックしても聞こえないだろ…」
しかし他に手段がなく、仕方なくノックをしてみた
コン、コン、コン
「やっぱり気付かないよなぁ…」
仕方ない、気づくまでノックするか…
コン、コン、コン
コン、コン、コン
中が静かになった
「お、やっと気付いたかな?」
扉を開け、中へ入る
「あの、すみません。依頼をさせていただきたいのですが…」
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