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「それで、何をしに来たのだ?」
ラッグスは立ち話もなんだと言い、5人は近くの人間の家に入った。
家の中は荒れていたが、椅子や地面に車座に座った。
その際もクラはフロガに合図するまで口を開かないように言った。
クラは簡単に自己紹介をしてフロガが族長だといい、話しを続けた
「実は族長の父がオーガの元にいるかも知れぬのだ。オーガの居場所をおぬしらが知っているのではないかと思ってな。ところでラッグス、おぬしサイガの娘か?」
ラッグスは一瞬目を見開きクラを見た。
フロガは心の中で「え?女の子?」とつぶやいた。
「ほう、クラ。お前は我が父サイガを知っているのか?お前がオヤジの言っていた消えるヤツだな?」
「やはりな、戦い方とその喋り方はそっくりじゃな。サイガほどの戦士が人間にやられたのか?」
ラッグスは何故かフロガの顔を一度見てからクラの顔を見て
「オヤジはガケから落ちて死んだ。オレと仲間達と一緒に狩りをしていた。熊と一緒に落ちてしんじまったよ」
「そうか。ワシより若いのにのぅ。惜しいヤツをなくしたもんじゃ。族長はどうした?」
ラッグスは今度はスニグとゴロの顔を見てから
「オレたち3人が狩りから帰ったら、みんな殺されて燃やされていた。足跡から見て大勢の人間が来ていた。人間が4人だけいたが、殺して食った」
「そうか。それでじゃ。ラッグスよ。オーガは見たことはあるのか?」
「ああ、あるぞ」
フロガは声を出すのを我慢して両手で口を押さえてしまった。
それを見たラッグスが
「言いたい事があるなら言ったらどうだ?フロガ族長さんよぉ。」
と、低い声でフロガを睨みながら言った。そしてさらに低い声で
「さっきの声はなんだったんだ?」
地面から立ち上がり、椅子に座っていたフロガの前に仁王立ちになった。
フロガはなんでこの人はこんなに怒っているのかわからず、クラに視線で助けを求めた。
「そうワシらの族長をいじめないでくれ。フロガよ。もう普段通り喋ってもいいぞ」
クラから許可が出たが、フロガは頭が真っ白になり、オーガの事を聞こうとして
「なんでそんなヒラヒラを着ているの?」
と聞いてしまった。
「あ?これは人間の女が着るワンピースって言う服らしいぞ。オヤジがくれたんだ」
フロガは自分がしたよくわからない質問で、また怒られると身構えていた。
予想外にちゃんと答えてくれて、嬉しくなって笑ってしまった。そして
「はは。良く似合っているよ。素敵だね」
と笑顔で言った。
「・・・」
ラッグスは表情がなくなり、沈黙が訪れた。
立っていてもラッグスの方が背が高いが、フロガは今椅子に座りラッグスは立っている。
フロガは恐る恐るラッグスの顔を見上げた。
ラッグスは相変わらず無表情でフロガを見下ろし
「フロガよ。オレはお前の子を生む」
そう言い切った。
「・・・はぁ?」
フロガは間が抜けた返事をしたが、ラッグスは真顔でフロガを見つめ
「お前の声には力がある。オレとお前の子が次の族長だ」
「え?クラ、ちょっと助け・・・」
フロガはクラに助けを求め、クラの方を見たが笑ってフロガの肩をバンバンと叩き
「はっはっは、それはいいな!これで我々は安泰じゃ」
そう言いながら笑っている。普段は表情をほとんど変えないクラが声を出して笑っているのを初めて見た。
「で、でもラッグス達はボク達と違う部族なんじゃないの?ラッグスは強いし、スニグとゴロは・・・」
無口がゴロは立ち上がり、フロガの前に来て片膝をつき
「オレ、フロガに従ウ。フロガ、族長」
「オデもダ!」
スニグも拳を突き上げ大声で言った。
「だ、そうだ族長。オレ達をお前の部族に入れてくれ族長」
フロガは返事をしなかったが、あの時、クラとラッグスが戦っている時の事をふと思い出した。
「あ、あの時!なんでラッグスとクラは戦ったの?」
「んん?相手を知るには戦うのが一番わかりやすいだろう?」
当たり前のようにラッグスは言っている。クラは無言で無表情だ。
「ま、お前の声を聞いて動けなくなってしまったんだがな」
そう言いながらフロガの頭をガシガシと荒っぽく撫でた。
「ボ、ボクの声?あの時はクラを助けたくて・・・」
フロガはクラを見た。クラもフロガを見つめている。
「フロガよ。あれが鬼様の力だ。お前は鬼様の声を持っている」
「鬼様の・・・こえ?」
「ああ、ワシやラッグスより強い力だ。本来もうすこし大きくなったら族長より話しがあったのだろうが・・・な」
「で、でもどうしたらいいのかわからないよ」
「お前が助かったのも偶然ではない。お前の声が助けを呼んだのじゃ。おそらく自然に声の力を使えるようになる。が、鬼様はいつもそばいると気にしておくのじゃ」
「鬼様が・・・」
フロガは無意識に上を向き天井を見上げた。
小さい時寝る前に母さんが言っていた
「私たちゴブリンはみんな強い鬼の子、今日生きている事をご先祖様と鬼様に感謝するのよ」
強い鬼が人間を追い払いゴブリンの住む場所を作り、今生きているといった、子供の子守歌のような話し。フロガの同年代の友達も弟妹も聞かされていたおとぎ話。
だと思っていた。
ラッグスも同じように上を見て誰にでもなく言った。
「鬼はいつも見ている。力を貸してくれる。感謝を忘れるな」
「さてラッグスよ、明日,日が昇ったらオーガの所に案内してくれるか?」
クラの静かな声に、フロガははっとした。
「ああ、任せておけ。今日は寝るか、フロガ」
ラッグスは力こぶを作りフロガに笑顔を見せた。
フロガは引きつった愛想笑いをした。
その晩はその場で皆で雑魚寝をし、翌朝日の出前にフロガは起きた。
ラッグスも起きたようで、立ち上がり軽く伸びをして
「よし、野郎ども。行くか!」
と大声でまだ寝ている二人を起こした。
クラは声が聞こえたからか、外から建物の中に入ってきた。
手にはネズミを二匹持っていた。
「コイツを食いながらいくかの」
ネズミをちぎって皆に渡し出発することになった。
先頭を歩くラッグスにフロガは並び尋ねた。
「ねえラッグス。オーガは近くにいるの?」
「東の山の方だ。そんなに遠くない。ヤツらの縄張りに入れば向こうから挨拶に来てくれるぜ」
「そ、そうなんだ」
フロガは少し嫌な予感がしたけど、おとなしくついていく事にした。
ラッグスは立ち話もなんだと言い、5人は近くの人間の家に入った。
家の中は荒れていたが、椅子や地面に車座に座った。
その際もクラはフロガに合図するまで口を開かないように言った。
クラは簡単に自己紹介をしてフロガが族長だといい、話しを続けた
「実は族長の父がオーガの元にいるかも知れぬのだ。オーガの居場所をおぬしらが知っているのではないかと思ってな。ところでラッグス、おぬしサイガの娘か?」
ラッグスは一瞬目を見開きクラを見た。
フロガは心の中で「え?女の子?」とつぶやいた。
「ほう、クラ。お前は我が父サイガを知っているのか?お前がオヤジの言っていた消えるヤツだな?」
「やはりな、戦い方とその喋り方はそっくりじゃな。サイガほどの戦士が人間にやられたのか?」
ラッグスは何故かフロガの顔を一度見てからクラの顔を見て
「オヤジはガケから落ちて死んだ。オレと仲間達と一緒に狩りをしていた。熊と一緒に落ちてしんじまったよ」
「そうか。ワシより若いのにのぅ。惜しいヤツをなくしたもんじゃ。族長はどうした?」
ラッグスは今度はスニグとゴロの顔を見てから
「オレたち3人が狩りから帰ったら、みんな殺されて燃やされていた。足跡から見て大勢の人間が来ていた。人間が4人だけいたが、殺して食った」
「そうか。それでじゃ。ラッグスよ。オーガは見たことはあるのか?」
「ああ、あるぞ」
フロガは声を出すのを我慢して両手で口を押さえてしまった。
それを見たラッグスが
「言いたい事があるなら言ったらどうだ?フロガ族長さんよぉ。」
と、低い声でフロガを睨みながら言った。そしてさらに低い声で
「さっきの声はなんだったんだ?」
地面から立ち上がり、椅子に座っていたフロガの前に仁王立ちになった。
フロガはなんでこの人はこんなに怒っているのかわからず、クラに視線で助けを求めた。
「そうワシらの族長をいじめないでくれ。フロガよ。もう普段通り喋ってもいいぞ」
クラから許可が出たが、フロガは頭が真っ白になり、オーガの事を聞こうとして
「なんでそんなヒラヒラを着ているの?」
と聞いてしまった。
「あ?これは人間の女が着るワンピースって言う服らしいぞ。オヤジがくれたんだ」
フロガは自分がしたよくわからない質問で、また怒られると身構えていた。
予想外にちゃんと答えてくれて、嬉しくなって笑ってしまった。そして
「はは。良く似合っているよ。素敵だね」
と笑顔で言った。
「・・・」
ラッグスは表情がなくなり、沈黙が訪れた。
立っていてもラッグスの方が背が高いが、フロガは今椅子に座りラッグスは立っている。
フロガは恐る恐るラッグスの顔を見上げた。
ラッグスは相変わらず無表情でフロガを見下ろし
「フロガよ。オレはお前の子を生む」
そう言い切った。
「・・・はぁ?」
フロガは間が抜けた返事をしたが、ラッグスは真顔でフロガを見つめ
「お前の声には力がある。オレとお前の子が次の族長だ」
「え?クラ、ちょっと助け・・・」
フロガはクラに助けを求め、クラの方を見たが笑ってフロガの肩をバンバンと叩き
「はっはっは、それはいいな!これで我々は安泰じゃ」
そう言いながら笑っている。普段は表情をほとんど変えないクラが声を出して笑っているのを初めて見た。
「で、でもラッグス達はボク達と違う部族なんじゃないの?ラッグスは強いし、スニグとゴロは・・・」
無口がゴロは立ち上がり、フロガの前に来て片膝をつき
「オレ、フロガに従ウ。フロガ、族長」
「オデもダ!」
スニグも拳を突き上げ大声で言った。
「だ、そうだ族長。オレ達をお前の部族に入れてくれ族長」
フロガは返事をしなかったが、あの時、クラとラッグスが戦っている時の事をふと思い出した。
「あ、あの時!なんでラッグスとクラは戦ったの?」
「んん?相手を知るには戦うのが一番わかりやすいだろう?」
当たり前のようにラッグスは言っている。クラは無言で無表情だ。
「ま、お前の声を聞いて動けなくなってしまったんだがな」
そう言いながらフロガの頭をガシガシと荒っぽく撫でた。
「ボ、ボクの声?あの時はクラを助けたくて・・・」
フロガはクラを見た。クラもフロガを見つめている。
「フロガよ。あれが鬼様の力だ。お前は鬼様の声を持っている」
「鬼様の・・・こえ?」
「ああ、ワシやラッグスより強い力だ。本来もうすこし大きくなったら族長より話しがあったのだろうが・・・な」
「で、でもどうしたらいいのかわからないよ」
「お前が助かったのも偶然ではない。お前の声が助けを呼んだのじゃ。おそらく自然に声の力を使えるようになる。が、鬼様はいつもそばいると気にしておくのじゃ」
「鬼様が・・・」
フロガは無意識に上を向き天井を見上げた。
小さい時寝る前に母さんが言っていた
「私たちゴブリンはみんな強い鬼の子、今日生きている事をご先祖様と鬼様に感謝するのよ」
強い鬼が人間を追い払いゴブリンの住む場所を作り、今生きているといった、子供の子守歌のような話し。フロガの同年代の友達も弟妹も聞かされていたおとぎ話。
だと思っていた。
ラッグスも同じように上を見て誰にでもなく言った。
「鬼はいつも見ている。力を貸してくれる。感謝を忘れるな」
「さてラッグスよ、明日,日が昇ったらオーガの所に案内してくれるか?」
クラの静かな声に、フロガははっとした。
「ああ、任せておけ。今日は寝るか、フロガ」
ラッグスは力こぶを作りフロガに笑顔を見せた。
フロガは引きつった愛想笑いをした。
その晩はその場で皆で雑魚寝をし、翌朝日の出前にフロガは起きた。
ラッグスも起きたようで、立ち上がり軽く伸びをして
「よし、野郎ども。行くか!」
と大声でまだ寝ている二人を起こした。
クラは声が聞こえたからか、外から建物の中に入ってきた。
手にはネズミを二匹持っていた。
「コイツを食いながらいくかの」
ネズミをちぎって皆に渡し出発することになった。
先頭を歩くラッグスにフロガは並び尋ねた。
「ねえラッグス。オーガは近くにいるの?」
「東の山の方だ。そんなに遠くない。ヤツらの縄張りに入れば向こうから挨拶に来てくれるぜ」
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