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「次の分かれ道を左に曲がって、そのすぐ先を上に登るんじゃ。もうすぐ日が出る頃かの」
「え?日がでる?」
フロガは日の出日の入りで時間の感覚を得る生活をしている為、今は真夜中だと思っていた。
ずっと洞窟にいたから時間の感覚がなくなっていた。
人間の襲撃を受けたのは前日の日の出直後だったから、もうすぐ丸1日経過したことになる。
「ああ、日が出る前に無草の峰につけそうじゃの。えーはげの岩か?」
「?無草のはげ?岩?ああ岩の原?」
「ああそうそう岩のはげよ」
「違うよ岩のはらだよ。は!ら!」
「おお原な、岩の原。ちょっと森を歩くけど近くの地上に出れるはずだ」
「父さんいるかな。いるような気がするんだ」
「そうか、まだ歩くからちょっと休憩するか」
フロガの返事を聞かずにセグは腰をおろし背中の背負い袋から水の皮袋と何か干した果物のようなものをフロガに差し出した。
「まあ食え」
と言っている途中で空いている片手で干し果物を自分の口に入れていた。
フロガは「早く父さんを探す」と返事をしようと口を開こうとした一瞬の出来事だった。
あっけにとられているフロガだったが
「いいから食え」と強引に座らされ干したイチジクのような物を手に握らされた。
「環境が変わる時はちょっとでいいからいったん止まった方がいいんじゃ。気持ちの準備とか疲れとかあるからな」
フロガは焦る気持ちが強かったが、落ち着いているセグを見て干し果物を食べてなぜかほっとした。
「この先に地上との出入口がある。あんまり使ってないからなんかの動物が巣食ってるかもしれねえ。だからちょっと離れてついてこい。いや様子を見てくるから荷物見張っといてくれ」
そう言って立ち上がって杖だけを持って行ってしまった。
フロガはさっきから返事をする間もなくセグが発言し行動していた。
ただ、フロガはさっき知り合ったばかりのようなセグが何年も付き合いのある信頼できる友人のような感覚がして悪い気はしなかった。
セグに握らされた果物を見つめて少しだけ高くなっている岩に腰をかけて果実をかじり待つことにした。
フロガが果実を食べ終わり水を少し飲んだ所であまり遠くないところから声が聞こえた。
「おーい聞こえるか?ここは安全だ。きつねの親子しかいないから来ても大丈夫だー」
セグの太く低い声が洞窟に良く響いた。その声を聞いた時に何故か「ふーっ」と息を吐いていた。
心のどこかでセグも死んでしまうのではないかと不安だったのだ。
「荷物を持っていくよー」
できる限りの大声でセグの声の方に返事をしてセグの背負い袋を持とうとして
「え?こんなに重いの?」
背負い袋の革ひもとそとの革はピンと張ったが荷物はピクリとも動かなかった。
今まで荷物の事は全然気にならなかったし自分の事で精一杯だったからか、背負い袋はフロガが2人いてもすっぽりはいってしまうくらいの大きさで中にはなんだかよくわからない金属の塊もはいっているようだった。
「おーソイツはフロガに持ち上げるのは無理だなーはっは」
いつのまにか隣まで来ていたセグは軽々と荷物を背負った。
「よし行くか」
軽く2回フロガの肩をポンポンと叩きセグは先へ行ってしまった。
重たい荷物を背負っているのに軽快に歩いていた。
「あ、う、うん」
セグの歩いていく後ろ姿に小さな声で返事をした。
セグの力強さと自身の非力さをあからさまに見せつけられたような気がして。
入口からうっすら光が差し込んでいる。
入口は狭く、セグは少ししゃがまないと頭が当たるんじゃないかくらいの高さしかない。
空気が湿り気を帯びている気がする。
セグはさっさと外に出てしまった。
入口の脇にきつねがいる。一匹しか見えないがよく見ると後ろに子きつねが二匹いる。
母きつねが子供たちをかばう形で隠しているのだろう。
(母さんも死ぬ前に・・・ボクに逃げろと言っていたっけ)
「邪魔をしちゃってごめんね」
フロガは警戒しているきつねを刺激しないように声をかけ、少し遠回りして距離を開けて入口に手をかけた。岩の洞窟のはずなのに触った入口の縁は木の感触だった。
入口から外に出たら森の中だった。
空はまだうっすら白んでいる程度なのだろう。森の木々で空はあまり見えないがもうすぐ夜明けになのはわかった。草木の朝露でかなりモワっとした空気が身体にまとわりつく。
振り返っても洞窟の入口なんてなかった。よく見ると大木のうろのような空洞が洞窟の出入口だった。パッと見ではまったくわからないだろう。
「これもドワーフのおまじない?」
「うーむ、まあそうなんだがこれは失敗作じゃな多分。狭すぎる」
「そ、そうなんだ」
フロガは視覚的な認識阻害の効果の事を聞いたつもりだったが、おそらくセグの返答は出入口の出来具合の事を言っているのだろう。フロガはちょっと気になったが今は先に進み父を探さなければいけない。
「セグ行こう」
「うむうむ」
セグはさっきからしきりに周りの木々をキョロキョロ見て懐から紐のついた小さな鉄の輪をだして、今度は地面を指さすように揺らしながら 上を見たり下を見たりしていた。フロガは何をしているかわからなかったが、黙って見つめていた。
「うむ、こっちじゃな」
そう言いながらすでに歩き始めていた。フロガは慌てて背中を追った。セグの背に向かい
「セグは岩の原にいったことあるの?」
「ああ?ああ、もう20年くらい前だが鉱石を探しにいったぞ」
「場所はわかる?」
「わからん!」
「え!?じゃあ」
「だから調べた。こっちで間違いない」
フロガは一瞬父が遠のいた感じがして不安になったがセグの自信に満ちた返事を聞いて身体に力が入ったような感覚になった。
「そんなに遠くない。日の出前にはつくじゃろう」
そういってセグは下草を踏みしめ木々の間を迷いなく進んでいった。
もうすぐ日の出と言っても背の高い木と雑草におおわれた森は暗く、圧迫感があった。
朝露に濡れた草木はセグの衣服やフロガの粗末な腰巻を少し濡らしていた。
ほどなく草木が少なくなって視界が少し開けてきた。
セグは振り返りフロガの目をじっと見て
「見ろ!先の方は岩ばっかりだ。ここが岩の原で間違いないか?なんか霧が出てきたな」
「ここかな?岩の上に木が生えてるところでいつも遊んでたけど木が生えてる岩がないよ!」
「なぁにぃ??」
セグは小さな細い筒を懐から出して岩場の方を向いて筒を覗き込んだ。
「あーあれじゃないか?ん?煙?霧も濃くなってきたな。まあもうちょっと行ってみよう」
「え?日がでる?」
フロガは日の出日の入りで時間の感覚を得る生活をしている為、今は真夜中だと思っていた。
ずっと洞窟にいたから時間の感覚がなくなっていた。
人間の襲撃を受けたのは前日の日の出直後だったから、もうすぐ丸1日経過したことになる。
「ああ、日が出る前に無草の峰につけそうじゃの。えーはげの岩か?」
「?無草のはげ?岩?ああ岩の原?」
「ああそうそう岩のはげよ」
「違うよ岩のはらだよ。は!ら!」
「おお原な、岩の原。ちょっと森を歩くけど近くの地上に出れるはずだ」
「父さんいるかな。いるような気がするんだ」
「そうか、まだ歩くからちょっと休憩するか」
フロガの返事を聞かずにセグは腰をおろし背中の背負い袋から水の皮袋と何か干した果物のようなものをフロガに差し出した。
「まあ食え」
と言っている途中で空いている片手で干し果物を自分の口に入れていた。
フロガは「早く父さんを探す」と返事をしようと口を開こうとした一瞬の出来事だった。
あっけにとられているフロガだったが
「いいから食え」と強引に座らされ干したイチジクのような物を手に握らされた。
「環境が変わる時はちょっとでいいからいったん止まった方がいいんじゃ。気持ちの準備とか疲れとかあるからな」
フロガは焦る気持ちが強かったが、落ち着いているセグを見て干し果物を食べてなぜかほっとした。
「この先に地上との出入口がある。あんまり使ってないからなんかの動物が巣食ってるかもしれねえ。だからちょっと離れてついてこい。いや様子を見てくるから荷物見張っといてくれ」
そう言って立ち上がって杖だけを持って行ってしまった。
フロガはさっきから返事をする間もなくセグが発言し行動していた。
ただ、フロガはさっき知り合ったばかりのようなセグが何年も付き合いのある信頼できる友人のような感覚がして悪い気はしなかった。
セグに握らされた果物を見つめて少しだけ高くなっている岩に腰をかけて果実をかじり待つことにした。
フロガが果実を食べ終わり水を少し飲んだ所であまり遠くないところから声が聞こえた。
「おーい聞こえるか?ここは安全だ。きつねの親子しかいないから来ても大丈夫だー」
セグの太く低い声が洞窟に良く響いた。その声を聞いた時に何故か「ふーっ」と息を吐いていた。
心のどこかでセグも死んでしまうのではないかと不安だったのだ。
「荷物を持っていくよー」
できる限りの大声でセグの声の方に返事をしてセグの背負い袋を持とうとして
「え?こんなに重いの?」
背負い袋の革ひもとそとの革はピンと張ったが荷物はピクリとも動かなかった。
今まで荷物の事は全然気にならなかったし自分の事で精一杯だったからか、背負い袋はフロガが2人いてもすっぽりはいってしまうくらいの大きさで中にはなんだかよくわからない金属の塊もはいっているようだった。
「おーソイツはフロガに持ち上げるのは無理だなーはっは」
いつのまにか隣まで来ていたセグは軽々と荷物を背負った。
「よし行くか」
軽く2回フロガの肩をポンポンと叩きセグは先へ行ってしまった。
重たい荷物を背負っているのに軽快に歩いていた。
「あ、う、うん」
セグの歩いていく後ろ姿に小さな声で返事をした。
セグの力強さと自身の非力さをあからさまに見せつけられたような気がして。
入口からうっすら光が差し込んでいる。
入口は狭く、セグは少ししゃがまないと頭が当たるんじゃないかくらいの高さしかない。
空気が湿り気を帯びている気がする。
セグはさっさと外に出てしまった。
入口の脇にきつねがいる。一匹しか見えないがよく見ると後ろに子きつねが二匹いる。
母きつねが子供たちをかばう形で隠しているのだろう。
(母さんも死ぬ前に・・・ボクに逃げろと言っていたっけ)
「邪魔をしちゃってごめんね」
フロガは警戒しているきつねを刺激しないように声をかけ、少し遠回りして距離を開けて入口に手をかけた。岩の洞窟のはずなのに触った入口の縁は木の感触だった。
入口から外に出たら森の中だった。
空はまだうっすら白んでいる程度なのだろう。森の木々で空はあまり見えないがもうすぐ夜明けになのはわかった。草木の朝露でかなりモワっとした空気が身体にまとわりつく。
振り返っても洞窟の入口なんてなかった。よく見ると大木のうろのような空洞が洞窟の出入口だった。パッと見ではまったくわからないだろう。
「これもドワーフのおまじない?」
「うーむ、まあそうなんだがこれは失敗作じゃな多分。狭すぎる」
「そ、そうなんだ」
フロガは視覚的な認識阻害の効果の事を聞いたつもりだったが、おそらくセグの返答は出入口の出来具合の事を言っているのだろう。フロガはちょっと気になったが今は先に進み父を探さなければいけない。
「セグ行こう」
「うむうむ」
セグはさっきからしきりに周りの木々をキョロキョロ見て懐から紐のついた小さな鉄の輪をだして、今度は地面を指さすように揺らしながら 上を見たり下を見たりしていた。フロガは何をしているかわからなかったが、黙って見つめていた。
「うむ、こっちじゃな」
そう言いながらすでに歩き始めていた。フロガは慌てて背中を追った。セグの背に向かい
「セグは岩の原にいったことあるの?」
「ああ?ああ、もう20年くらい前だが鉱石を探しにいったぞ」
「場所はわかる?」
「わからん!」
「え!?じゃあ」
「だから調べた。こっちで間違いない」
フロガは一瞬父が遠のいた感じがして不安になったがセグの自信に満ちた返事を聞いて身体に力が入ったような感覚になった。
「そんなに遠くない。日の出前にはつくじゃろう」
そういってセグは下草を踏みしめ木々の間を迷いなく進んでいった。
もうすぐ日の出と言っても背の高い木と雑草におおわれた森は暗く、圧迫感があった。
朝露に濡れた草木はセグの衣服やフロガの粗末な腰巻を少し濡らしていた。
ほどなく草木が少なくなって視界が少し開けてきた。
セグは振り返りフロガの目をじっと見て
「見ろ!先の方は岩ばっかりだ。ここが岩の原で間違いないか?なんか霧が出てきたな」
「ここかな?岩の上に木が生えてるところでいつも遊んでたけど木が生えてる岩がないよ!」
「なぁにぃ??」
セグは小さな細い筒を懐から出して岩場の方を向いて筒を覗き込んだ。
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