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セグことセグリノールフォルカルファルはドワーフの商人だった。取引相手を種族で決めたりはしなかった。
対等に取引できるなら人間でもゴブリンでもオークでも取引した。
一時期はドワーフとは仲がよくないエルフとも取引していて仲間内から
「アイツは金の為なら同族も売るんじゃないか?」
などと言われたが本人は気にしなかった。
セグの父親は一般的なドワーフのように鉱石掘りをして生計を立てていたが、セグが興味を持ったのは鉱石買取所だった。
取ってきた鉱石がお金に変わり、それが食べ物や衣服に変わるのが不思議だった。
物心ついた時にはドワーフの旅商人に同行し色々な所で商売を学んだ。
商売をしていくうちにセグは他種族の言語を学んでいった。鉱石掘りよりよっぽど才能があったのだろう。ドワーフ語人間語エルフ語オークや獣人タイプが使うファウナリスと言われる言語体系。
ドワーフの使う言語は何故かエルフ語に近かった。
その中でエルフやゴブリンよりも人間達に騙された回数が多かった為、人間に対してあまりいい印象はなかった。
ゴブリンは言葉さえ交わせればいい商売相手だった。
言葉が通じないゴブリン集落だと殺し合いにまでなってしまったこともあったが、会話ができれば交渉でき、お金は持っていないが物々交換で取引ができた。
正直ゴブリンを騙そうと思えば簡単に騙せた。それをしたら自分も人間と同じで自分が楽しんでいる商売や取引ができなくなると思いしなかった。
フロガのいるゴブリン集落の先々代か先代の族長や長老の数人は驚くことにファウナリスだけでなくドワーフ語も少し理解していた。どこかで低能な生き物と思っていたゴブリンがなぜと思い質問しても
「なんとなくわかる」
と言った答えで明確な理由はわからなかった。
なんでも全てのゴブリンは過去にいた偉大な鬼の子孫だそうだ。
力強く頑強で聡明だったそうで、フロガのいる青い森の穴の一族は定期的に聡明なゴブリンが生まれるらしい。
ドワーフは250~300年ほど生きる中でわずか10年20年しか生きられないゴブリンが世代交代を何回もして他種族の言語を失わずに継承できるとは考えにくいからゴブリンの先祖の話しは信じることにした。
おそらくだがフロガもそうなのだろう。
「アー」とか「ギャー」しか発声できないゴブリンの集団は何度も見た。
フロガは子供に見える。こんなにしっかりと会話できるゴブリンをセグは見たことがなかった。
セグはそんなことを考えながら細く暗い洞窟を歩いていた。
いつも持っている鉄の杖が地面をついた手ごたえが岩ではない金属鉱石を感じさせた。
「おいフロガ!鉱石だ!・・・あっ」
振り返るとフロガは結構な距離を離れた所をペタペタと歩いていた。
セグの身長はドワーフでは一般的で、人間と比較すると胸ほどの身長しかなく、人間がトールマンと言われるのは身を持って理解した。人間は足が長く同じ一歩でも進む距離が違うのだ。
セグは「はぁ」と溜息をはいてフロガが追いつくのをまった。
フロガがすぐ近くまで来た時に両手を広げ
「すまないなフロガよ。自分より小さなものと歩く事はあんまりなくてな。もうちょっとゆっくり歩くわな」
フロガはすこし息を弾ませながら両手を広げたセグのわきの下を通り過ぎた。
そしてセグを追い越し振り返って笑って見せた。笑っているように見えるとセグは思った。
「まだまだ大丈夫。父さんに早く会わないと」
そして前を見てまた歩き出した。
(健気だな。グラッツィも無事だといいがあの村はもう立て直せないだろう)
ふっと息をはいてフロガの背中を少し見つめ
「お前が先に行っても道がわからんだろう。まあ元気なのはいいことだ!はっはっは」
狭い洞窟の中なのにセグはフロガに触りもせずに追い抜いた。
「え?」
フロガはいつ追い越されたのかわからなかった。突然目の前にセグの背中とセグの身長より長い鉄の杖が見えた。
「あ、そういえばあの時!」
フロガはどうやって自分が助かったのか、なんで知らない狭い洞窟に自分がいるのかわからない事をおもいだした。
「ねえセグ!どうやってボクをここに連れてきたの?」
「うーん?」
セグは天井を見上げながら
「この洞窟はドワーフの鉱山通路から枝分かれした自然洞窟とつながっててだな。ああわかるか?え、どうしたんだ?」
セグがフロガに視線を戻すと下を向いている。泣いているのか?
「か、母さん達は助けられなかったの?」
「それはさっきもちょっと言ったがな、お前さんもギリギリだったんじゃ。もう死んでるかもしれんと思って引っ張ったんじゃが生きとった。一応確認じゃが母と一緒に死にたかったか?」
セグは返答次第で、フロガが死を望むならそうしてあげるほうが良いと思った。
「ごめんなさい。助けてもらってありがとう。そんな事言うつもりじゃなかったんだ」
セグは少しだけ力んでいた肩の力を抜いて「ふーっ」と息を吐いた。
「そうか。そんでな、ドワーフの鉱山とか坑道は落盤とか生き埋めとかにすぐなるんじゃ。たまに魔物も出て襲われたりとかもあるから、まじないしを呼んでおまじないをしてもらうんじゃ。そうするとちょっとだけ岩盤に潜れるんじゃ」
「それで真っ暗だったのか。僕たちの村の近くなのココは?」
「いやぁそんなに近くはない。大体村の真下に走ってる通路から岩盤に潜って登るのは苦労したわい。下るのは楽なんじゃがな」
「そうだったんだね。セグ。ほんとにありがとう」
「ああ」
セグは一度だけフロガの頭に触れた。
コイツは素直すぎる。人間の町の近くに住むゴブリンは人間を襲って殺して食ったり家畜を盗んだりして生きている。それは人間にとっては悪いことかも知れないがゴブリンの生きる知恵だ。
だがコイツは多分だがそんなことができない、しないんじゃないか。
厳しい自然環境で生きてはいるが村の中で部族で力を合わせているからだ。
一人になって放っておけばすぐに死んでしまうだろう。
だがワシもそろそろ拠点に戻らないと食料も尽きそうだし連れて行ったら他のドワーフにあっさり殺されるだろう。人間ほどではないが、ゴブリンに協力するドワーフはほぼいない。
真っ暗な洞窟を灯りを持たずに黙々と歩いていた。
ドワーフもゴブリンも夜目がかなり効く。ゴブリンの子供たちは月も星も出ていない真っ暗闇の夜の森でかくれんぼをして遊んだりもする。太陽の出ている日中よりもあっさり見つかったりすることが闇夜の方が多いくらいの目を持っている。
ドワーフは生活基盤が地底にある事がほとんどで、光のない世界が日常であり、暗い闇の中でも道を見失うことはない。生涯太陽も月も星も見たことがない者もいる世界の住人である。
対等に取引できるなら人間でもゴブリンでもオークでも取引した。
一時期はドワーフとは仲がよくないエルフとも取引していて仲間内から
「アイツは金の為なら同族も売るんじゃないか?」
などと言われたが本人は気にしなかった。
セグの父親は一般的なドワーフのように鉱石掘りをして生計を立てていたが、セグが興味を持ったのは鉱石買取所だった。
取ってきた鉱石がお金に変わり、それが食べ物や衣服に変わるのが不思議だった。
物心ついた時にはドワーフの旅商人に同行し色々な所で商売を学んだ。
商売をしていくうちにセグは他種族の言語を学んでいった。鉱石掘りよりよっぽど才能があったのだろう。ドワーフ語人間語エルフ語オークや獣人タイプが使うファウナリスと言われる言語体系。
ドワーフの使う言語は何故かエルフ語に近かった。
その中でエルフやゴブリンよりも人間達に騙された回数が多かった為、人間に対してあまりいい印象はなかった。
ゴブリンは言葉さえ交わせればいい商売相手だった。
言葉が通じないゴブリン集落だと殺し合いにまでなってしまったこともあったが、会話ができれば交渉でき、お金は持っていないが物々交換で取引ができた。
正直ゴブリンを騙そうと思えば簡単に騙せた。それをしたら自分も人間と同じで自分が楽しんでいる商売や取引ができなくなると思いしなかった。
フロガのいるゴブリン集落の先々代か先代の族長や長老の数人は驚くことにファウナリスだけでなくドワーフ語も少し理解していた。どこかで低能な生き物と思っていたゴブリンがなぜと思い質問しても
「なんとなくわかる」
と言った答えで明確な理由はわからなかった。
なんでも全てのゴブリンは過去にいた偉大な鬼の子孫だそうだ。
力強く頑強で聡明だったそうで、フロガのいる青い森の穴の一族は定期的に聡明なゴブリンが生まれるらしい。
ドワーフは250~300年ほど生きる中でわずか10年20年しか生きられないゴブリンが世代交代を何回もして他種族の言語を失わずに継承できるとは考えにくいからゴブリンの先祖の話しは信じることにした。
おそらくだがフロガもそうなのだろう。
「アー」とか「ギャー」しか発声できないゴブリンの集団は何度も見た。
フロガは子供に見える。こんなにしっかりと会話できるゴブリンをセグは見たことがなかった。
セグはそんなことを考えながら細く暗い洞窟を歩いていた。
いつも持っている鉄の杖が地面をついた手ごたえが岩ではない金属鉱石を感じさせた。
「おいフロガ!鉱石だ!・・・あっ」
振り返るとフロガは結構な距離を離れた所をペタペタと歩いていた。
セグの身長はドワーフでは一般的で、人間と比較すると胸ほどの身長しかなく、人間がトールマンと言われるのは身を持って理解した。人間は足が長く同じ一歩でも進む距離が違うのだ。
セグは「はぁ」と溜息をはいてフロガが追いつくのをまった。
フロガがすぐ近くまで来た時に両手を広げ
「すまないなフロガよ。自分より小さなものと歩く事はあんまりなくてな。もうちょっとゆっくり歩くわな」
フロガはすこし息を弾ませながら両手を広げたセグのわきの下を通り過ぎた。
そしてセグを追い越し振り返って笑って見せた。笑っているように見えるとセグは思った。
「まだまだ大丈夫。父さんに早く会わないと」
そして前を見てまた歩き出した。
(健気だな。グラッツィも無事だといいがあの村はもう立て直せないだろう)
ふっと息をはいてフロガの背中を少し見つめ
「お前が先に行っても道がわからんだろう。まあ元気なのはいいことだ!はっはっは」
狭い洞窟の中なのにセグはフロガに触りもせずに追い抜いた。
「え?」
フロガはいつ追い越されたのかわからなかった。突然目の前にセグの背中とセグの身長より長い鉄の杖が見えた。
「あ、そういえばあの時!」
フロガはどうやって自分が助かったのか、なんで知らない狭い洞窟に自分がいるのかわからない事をおもいだした。
「ねえセグ!どうやってボクをここに連れてきたの?」
「うーん?」
セグは天井を見上げながら
「この洞窟はドワーフの鉱山通路から枝分かれした自然洞窟とつながっててだな。ああわかるか?え、どうしたんだ?」
セグがフロガに視線を戻すと下を向いている。泣いているのか?
「か、母さん達は助けられなかったの?」
「それはさっきもちょっと言ったがな、お前さんもギリギリだったんじゃ。もう死んでるかもしれんと思って引っ張ったんじゃが生きとった。一応確認じゃが母と一緒に死にたかったか?」
セグは返答次第で、フロガが死を望むならそうしてあげるほうが良いと思った。
「ごめんなさい。助けてもらってありがとう。そんな事言うつもりじゃなかったんだ」
セグは少しだけ力んでいた肩の力を抜いて「ふーっ」と息を吐いた。
「そうか。そんでな、ドワーフの鉱山とか坑道は落盤とか生き埋めとかにすぐなるんじゃ。たまに魔物も出て襲われたりとかもあるから、まじないしを呼んでおまじないをしてもらうんじゃ。そうするとちょっとだけ岩盤に潜れるんじゃ」
「それで真っ暗だったのか。僕たちの村の近くなのココは?」
「いやぁそんなに近くはない。大体村の真下に走ってる通路から岩盤に潜って登るのは苦労したわい。下るのは楽なんじゃがな」
「そうだったんだね。セグ。ほんとにありがとう」
「ああ」
セグは一度だけフロガの頭に触れた。
コイツは素直すぎる。人間の町の近くに住むゴブリンは人間を襲って殺して食ったり家畜を盗んだりして生きている。それは人間にとっては悪いことかも知れないがゴブリンの生きる知恵だ。
だがコイツは多分だがそんなことができない、しないんじゃないか。
厳しい自然環境で生きてはいるが村の中で部族で力を合わせているからだ。
一人になって放っておけばすぐに死んでしまうだろう。
だがワシもそろそろ拠点に戻らないと食料も尽きそうだし連れて行ったら他のドワーフにあっさり殺されるだろう。人間ほどではないが、ゴブリンに協力するドワーフはほぼいない。
真っ暗な洞窟を灯りを持たずに黙々と歩いていた。
ドワーフもゴブリンも夜目がかなり効く。ゴブリンの子供たちは月も星も出ていない真っ暗闇の夜の森でかくれんぼをして遊んだりもする。太陽の出ている日中よりもあっさり見つかったりすることが闇夜の方が多いくらいの目を持っている。
ドワーフは生活基盤が地底にある事がほとんどで、光のない世界が日常であり、暗い闇の中でも道を見失うことはない。生涯太陽も月も星も見たことがない者もいる世界の住人である。
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