77 / 167
地底人を探して
ケンの気持ちと仲間の結束
しおりを挟む
夕飯までまだ時間があったので、俺はシロンの様子を見に来ていた。
エルロットが戻るまでは特にやることもなく、自由時間のような感じだった。
俺は盗賊団が遺跡にいたらいたで、また虐殺があるのではないか、エルは本当に盗賊団と無関係なのか、気がかりで落ち着いていられなかった。
荷物を宿の部屋で片づけていたが、ゴーが不要なものを馬車に置きに行くと言ったのでついてきたのだ。俺一人で知らない人がいるうまやまで来る勇気はなかった。
「シロン・・・疲れてないか?」
馬の首を撫でながらつぶやいた。
「・・・ケン、心配ですか?」
荷物を積み終えたゴーはいつのまにか俺の隣に来ていた。
「うん・・・盗賊でも死ぬのは見たくないし・・・エルも大丈夫かな」
ゴーは少し斜め上を見上げていた。それから視線をケンに移して
「例えばですよ?エルが盗みを働いて追われてここにきます」
ゴーは俺の後ろに回って
「あ、兄貴!助けてくれって言われたらどうします?目の前には被害者の商人や役人がいたら?」
「え・・・ど、どうしよう・・・」
「アイツはそういう人種ですよ。今はやらなくても、いつかそんな日がきます。わかってますよね?」
ゴーの目は確信を疑わないように力強くケンを見つめた。
「うん・・・でも、でもチャンスを与えるのはダメなのか?」
「そのチャンスでこちらがピンチにならなければいいんですが・・・ケンに被害が及ぶようなら私は容赦しません」
ゴーは俺の為を思って言ってくれているのはわかる。わかるんだけど・・・
「しかし、それでこそ私が見込んだケンなのですね」
あんまりキラキラした目で見るのはやめてください。
部屋に戻り、紅茶を飲んでいたらエルが窓から戻ってきた。さっきも思ったけどここ二階・・・
「だいたいわかりましたぜ、ヤツらのねぐらが・・・」
エルの報告だと、クッキースカーフ団は東の森の方からくることが多いそうだ。
過去に迎撃して追撃したのだが、盗賊団の待ち伏せや迎撃にあって命からがら逃げ帰ってきた兵士がいるので、間違いないらしい。
「で、あるならば、おそらくこのターミナルの地点付近か」
エータは自分の頭の中の地図を見ながら場所を特定したようだった。
「これはあっしの経験則ですが、昼夜の見張りはもちろん、街の中にも街の様子を伺っているヤツラの仲間はいますぜ。あ、あっしじゃないですからね!」
エルは片手をパーにしてエータに突き出している。子供の歌舞伎役者に見えた。
「ふむ。一度意見を聞きたい。吾輩が今から単騎で乗り込んで制圧してしまうのが最も効率的だが、どうかねケン。一緒に行くかね?」
「え!?」
俺は突然話しを振られて頭が真っ白だった。なんで俺・・・?
「全員で行動するのもそれなりにメリットはある。吾輩とアレクシウスが二手に別れての二面襲撃を行い、別の出入口を警戒するためにケン達が見張るのだ。取りこぼさぬようにな」
取りこぼし・・・一人も逃がさないつもりなのか・・・
「その・・・盗賊は戦意をなくしたら全員殺さなくても・・・親玉だけ倒せば!」
「非効率だ」
エータは一言で終わらせた。俺は唖然としていた。
「盗賊を逃がしても他の被害者を増やすだけです。また徒党を組むかもしれないし、ケンが逆恨みで狙われることもあるでしょう」
ゴーは真剣な顔で俺を見つめている。
「・・・ケンの安全が最優先だ」
アレックスも同意を示してしまった。仕方ないのか・・・
心のどこかで、たとえ盗賊でも人がたくさん死ぬ、仲間たちがまた手を汚してしまうのかと心配だったが、結束している仲間たちを信じることにした。
結局全員で向かう事になった。
今日はしっかりと休養して明日の朝食後に出発するが、馬車は使用せずに歩いて移動することになった。馬や馬車の安全を考えたら街に保管したほうがいいと。
山間部に近い深い森の中の可能性が高いので、馬車でいったところでかなりの距離を歩いて移動しなければならないと言われ、俺は担がれる自分を想像してしまっていた。
俺は疲れていたのか、夕食後にすぐ眠ってしまった。
エータとエルは夜間に宿を抜けて街付近の偵察をしたようだ。エルは盗賊団に情報を流しているヤツに目ぼしをつけているとドヤ顔で夕食時に言っていた。
朝起きると隣のベッドでエルは寝ていたが、「うわ」っと飛び起きて俺の顔を見て
「え、エータの旦那ってあんなに強かったんすね・・・」
俺は怖くて夜間の偵察で何があったのか聞けなかった。
「後顧の憂いは断った。朝食が終わったら出発しよう」
エータは自身の体を布で拭きながら言った。
エルロットが戻るまでは特にやることもなく、自由時間のような感じだった。
俺は盗賊団が遺跡にいたらいたで、また虐殺があるのではないか、エルは本当に盗賊団と無関係なのか、気がかりで落ち着いていられなかった。
荷物を宿の部屋で片づけていたが、ゴーが不要なものを馬車に置きに行くと言ったのでついてきたのだ。俺一人で知らない人がいるうまやまで来る勇気はなかった。
「シロン・・・疲れてないか?」
馬の首を撫でながらつぶやいた。
「・・・ケン、心配ですか?」
荷物を積み終えたゴーはいつのまにか俺の隣に来ていた。
「うん・・・盗賊でも死ぬのは見たくないし・・・エルも大丈夫かな」
ゴーは少し斜め上を見上げていた。それから視線をケンに移して
「例えばですよ?エルが盗みを働いて追われてここにきます」
ゴーは俺の後ろに回って
「あ、兄貴!助けてくれって言われたらどうします?目の前には被害者の商人や役人がいたら?」
「え・・・ど、どうしよう・・・」
「アイツはそういう人種ですよ。今はやらなくても、いつかそんな日がきます。わかってますよね?」
ゴーの目は確信を疑わないように力強くケンを見つめた。
「うん・・・でも、でもチャンスを与えるのはダメなのか?」
「そのチャンスでこちらがピンチにならなければいいんですが・・・ケンに被害が及ぶようなら私は容赦しません」
ゴーは俺の為を思って言ってくれているのはわかる。わかるんだけど・・・
「しかし、それでこそ私が見込んだケンなのですね」
あんまりキラキラした目で見るのはやめてください。
部屋に戻り、紅茶を飲んでいたらエルが窓から戻ってきた。さっきも思ったけどここ二階・・・
「だいたいわかりましたぜ、ヤツらのねぐらが・・・」
エルの報告だと、クッキースカーフ団は東の森の方からくることが多いそうだ。
過去に迎撃して追撃したのだが、盗賊団の待ち伏せや迎撃にあって命からがら逃げ帰ってきた兵士がいるので、間違いないらしい。
「で、あるならば、おそらくこのターミナルの地点付近か」
エータは自分の頭の中の地図を見ながら場所を特定したようだった。
「これはあっしの経験則ですが、昼夜の見張りはもちろん、街の中にも街の様子を伺っているヤツラの仲間はいますぜ。あ、あっしじゃないですからね!」
エルは片手をパーにしてエータに突き出している。子供の歌舞伎役者に見えた。
「ふむ。一度意見を聞きたい。吾輩が今から単騎で乗り込んで制圧してしまうのが最も効率的だが、どうかねケン。一緒に行くかね?」
「え!?」
俺は突然話しを振られて頭が真っ白だった。なんで俺・・・?
「全員で行動するのもそれなりにメリットはある。吾輩とアレクシウスが二手に別れての二面襲撃を行い、別の出入口を警戒するためにケン達が見張るのだ。取りこぼさぬようにな」
取りこぼし・・・一人も逃がさないつもりなのか・・・
「その・・・盗賊は戦意をなくしたら全員殺さなくても・・・親玉だけ倒せば!」
「非効率だ」
エータは一言で終わらせた。俺は唖然としていた。
「盗賊を逃がしても他の被害者を増やすだけです。また徒党を組むかもしれないし、ケンが逆恨みで狙われることもあるでしょう」
ゴーは真剣な顔で俺を見つめている。
「・・・ケンの安全が最優先だ」
アレックスも同意を示してしまった。仕方ないのか・・・
心のどこかで、たとえ盗賊でも人がたくさん死ぬ、仲間たちがまた手を汚してしまうのかと心配だったが、結束している仲間たちを信じることにした。
結局全員で向かう事になった。
今日はしっかりと休養して明日の朝食後に出発するが、馬車は使用せずに歩いて移動することになった。馬や馬車の安全を考えたら街に保管したほうがいいと。
山間部に近い深い森の中の可能性が高いので、馬車でいったところでかなりの距離を歩いて移動しなければならないと言われ、俺は担がれる自分を想像してしまっていた。
俺は疲れていたのか、夕食後にすぐ眠ってしまった。
エータとエルは夜間に宿を抜けて街付近の偵察をしたようだ。エルは盗賊団に情報を流しているヤツに目ぼしをつけているとドヤ顔で夕食時に言っていた。
朝起きると隣のベッドでエルは寝ていたが、「うわ」っと飛び起きて俺の顔を見て
「え、エータの旦那ってあんなに強かったんすね・・・」
俺は怖くて夜間の偵察で何があったのか聞けなかった。
「後顧の憂いは断った。朝食が終わったら出発しよう」
エータは自身の体を布で拭きながら言った。
2
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる