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地底人を探して
砂漠の街と奴隷の子供
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俺たちは山間部を抜け、赤茶けた崖を抜け、しばらく草原を移動していたが、景色は段々と黄色い岩が転がる荒野にたどり着いていた。
赤い夕日に染まる大地だったが、黄色い砂が風に舞っているのが見て取れた。
「西方地域に入ったようですね。もうすぐ街につきます」
先頭を走っていたゴーは速度を落として沈む太陽を見ながらそう言った。
太陽が沈み切る前に、丘の上から見下ろせる形で輝く水辺の周りに建物が立ち並ぶ街が見えた。
街にはぐるっと柵があり、門の部分から街に入った。
ゴーは「貴人の護衛である」と告げたら問題なく通れた。
思っているよりもゴーは顔が広いのかもしれない。あれだけ強いし。
馬や馬車を預けられるテントのような場所があり、そこの隣の宿に入った。
砂漠地帯を通ったのは夕方からの短時間だったのに、体には砂がまとわりつき気持ち悪かった。
エータを残して俺たちはオアシスに水浴びに来て、食事をしてから宿に戻ることにした。
街の中は思っている以上に栄えているようで、酒場や何かのショーをやっているテントなどもあり、水辺の周囲にはたくさんの人がいた。
「おにいさん達、遊んでいかな~い?」
顔を布で隠しているが、きわどい衣装のお姉さんが立つ店の前で俺は声をかけられ固まっていた。
「さすが砂漠の宝石と言われる街だ。訪れるのは始めてだが噂以上だ」
ゴーは何かに関心して頷きながらお姉さんを見ている。
俺はお姉さんから目を逸らすと首輪をした子供が見えた。
ロープで繋がれ手かせもつけられている。
近くを通った人が落としたパンくずのようなものを目ざとくひろい、口に入れていた。
少年はロープを引っ張られ、おなかを蹴り上げられた。
「ぐっ」と、くぐもった声を上げてくの字のなって倒れた。
「お前は!目を放すとすぐこれだ!この役立たずが!」
ロープを握った太ったターバンのオヤジはさらに少年を蹴った。
俺は助けたかったが、自分では何もできずにアレックスの方を無意識に見た。
「奴隷か・・・」
反対側に立つゴーのつぶやきが聞こえた。
「ど、奴隷っているのか?初めて見たけど」
「ああ、ここ西方じゃ合法ですけど、他の地域は廃止されてはいますが、西方から買ったと嘘をついて奴隷を囲っている家はあるにはありますよ」
俺は嫌な気分になったけど、蹴られている子供から目を放せなかった。
「お前達は何を見ている?」
視線に気付いたターバンオヤジは文句を言ってきた。
「俺の奴隷に何しようが勝手だろ。コイツは調教が足りんのだ」
何故かご機嫌になったターバンは子供を踏みつけた。
「や、やめてくれ」
俺は我慢できずにそう言ってしまった。
「ほう?お前さん。コイツを買うか?」
下舐めずりをしながらターバンは俺を見ている。
「そ、それは・・・」
俺は何て答えたらいいのかわからなかった。
「心配するな。俺はれっきとした奴隷商だ。見ろ!」
ターバンは倒れている子供を足で転がして背中を見せた。焼き印がある。漢字の『八』と『十』のような模様だった。
懐から出した巻いた茶色い紙には同じように『八』と『十』のような模様と何かが書かれていたが、俺は読めない。
「ケン。やめておいたほうがいい」
ゴーは隣で俺を止めたが、小さく「ううぅ・・・」とうなる少年を見ていられなかった。
「い、いくらだ・・・」
「今は商売時間外だから少し高いぜ。金貨一枚でどうだ?」
「ば、ばかな!」
ゴーは俺の手を引きながらそう言った。
俺には金銭価値がまったくわからないので、それが高いのかどうなのかわからなかった。
「・・・ケン」
アレックスは俺の手に金貨を握らせた。
「ごめんアレックス。ありがとう」
こうして俺は少年奴隷を引き取った。
「君は知能がないのかね?我々は奴隷を買いにここまで来たのではないのだよ?足手まといを増やしてどうするのかね?」
宿に戻るとエータにどやされた。エータ、「増やして」って元々俺が足手まといと言ってるのか?ああ、エータはそういうヤツだった。
「仕方ないだろ!見ていられなかったんだ」
「私は止めたのですよケン。もう知りませんよ」
何故かゴーも怒っている。アレックスは無反応だ。奴隷の子供は無言で俺たちの顔色を伺っている。
「と、とりあえず首輪と手かせをはずしてあげるよ。君、名前は?」
少年は外した首輪と手かせの部分をさすりながら上目使いに
「え、エルロット」
小さな声でそう言った。俺は笑顔で
「俺はケン。こっちがアレックスでお金を出してくれた人。不審者がエータでもう一人怒ってるのがゴー」
ちらちらと上目使いで俺たちの様子を伺っている。
「ケン。私は怒ってはいません。呆れているのです。そんな奴隷に金貨一枚っておかしい」
「金貨一枚がどれくらいの価値なのか俺にはよくわからなくて・・・」
「は?さっきのお店にいた女。あの女は銀貨二枚で買えますよ。金貨一枚あれば50日は食うに困らない」
俺は女の値段はスルーしたが、50日の食費と考えたら高く感じた。だが人命に値段はつけられない。
「で、でも子供だし、将来が・・・」
「ケン。奴隷商に渡された紙をよく見て!」
俺は奴隷と一緒におそらく奴隷の「権利書」と思われる紙を渡されていた。
「ゴー。俺・・・文字が読めないんだけど、何て書いてあるんだ?」
「・・・ぐっ・・・・が・・・」
俺は背後の音に振り返って目を疑った。
アレックスが少年の首を片手で掴み宙に浮かせている。
「あ、アレックス!何をしているんだ?」
「・・・」
「アレクシウスから盗みを働こうとはな。相手を量る能力には問題があるな」
エータは何か面白そうに言っている。
「え?エルロット?と、とにかく放してあげてよ!」
俺はアレックスの腕を掴みゆすったがピクリとも動かない。
エルロットの顔は赤から紫になり、白くなってきている。
「た、たのむよアレックス!放してくれ!」
俺がそう言うとちらりと俺の顔を見てからアレックスは地面に子供を叩きつけて
「・・・次は殺す」
そう吐き捨てた。
赤い夕日に染まる大地だったが、黄色い砂が風に舞っているのが見て取れた。
「西方地域に入ったようですね。もうすぐ街につきます」
先頭を走っていたゴーは速度を落として沈む太陽を見ながらそう言った。
太陽が沈み切る前に、丘の上から見下ろせる形で輝く水辺の周りに建物が立ち並ぶ街が見えた。
街にはぐるっと柵があり、門の部分から街に入った。
ゴーは「貴人の護衛である」と告げたら問題なく通れた。
思っているよりもゴーは顔が広いのかもしれない。あれだけ強いし。
馬や馬車を預けられるテントのような場所があり、そこの隣の宿に入った。
砂漠地帯を通ったのは夕方からの短時間だったのに、体には砂がまとわりつき気持ち悪かった。
エータを残して俺たちはオアシスに水浴びに来て、食事をしてから宿に戻ることにした。
街の中は思っている以上に栄えているようで、酒場や何かのショーをやっているテントなどもあり、水辺の周囲にはたくさんの人がいた。
「おにいさん達、遊んでいかな~い?」
顔を布で隠しているが、きわどい衣装のお姉さんが立つ店の前で俺は声をかけられ固まっていた。
「さすが砂漠の宝石と言われる街だ。訪れるのは始めてだが噂以上だ」
ゴーは何かに関心して頷きながらお姉さんを見ている。
俺はお姉さんから目を逸らすと首輪をした子供が見えた。
ロープで繋がれ手かせもつけられている。
近くを通った人が落としたパンくずのようなものを目ざとくひろい、口に入れていた。
少年はロープを引っ張られ、おなかを蹴り上げられた。
「ぐっ」と、くぐもった声を上げてくの字のなって倒れた。
「お前は!目を放すとすぐこれだ!この役立たずが!」
ロープを握った太ったターバンのオヤジはさらに少年を蹴った。
俺は助けたかったが、自分では何もできずにアレックスの方を無意識に見た。
「奴隷か・・・」
反対側に立つゴーのつぶやきが聞こえた。
「ど、奴隷っているのか?初めて見たけど」
「ああ、ここ西方じゃ合法ですけど、他の地域は廃止されてはいますが、西方から買ったと嘘をついて奴隷を囲っている家はあるにはありますよ」
俺は嫌な気分になったけど、蹴られている子供から目を放せなかった。
「お前達は何を見ている?」
視線に気付いたターバンオヤジは文句を言ってきた。
「俺の奴隷に何しようが勝手だろ。コイツは調教が足りんのだ」
何故かご機嫌になったターバンは子供を踏みつけた。
「や、やめてくれ」
俺は我慢できずにそう言ってしまった。
「ほう?お前さん。コイツを買うか?」
下舐めずりをしながらターバンは俺を見ている。
「そ、それは・・・」
俺は何て答えたらいいのかわからなかった。
「心配するな。俺はれっきとした奴隷商だ。見ろ!」
ターバンは倒れている子供を足で転がして背中を見せた。焼き印がある。漢字の『八』と『十』のような模様だった。
懐から出した巻いた茶色い紙には同じように『八』と『十』のような模様と何かが書かれていたが、俺は読めない。
「ケン。やめておいたほうがいい」
ゴーは隣で俺を止めたが、小さく「ううぅ・・・」とうなる少年を見ていられなかった。
「い、いくらだ・・・」
「今は商売時間外だから少し高いぜ。金貨一枚でどうだ?」
「ば、ばかな!」
ゴーは俺の手を引きながらそう言った。
俺には金銭価値がまったくわからないので、それが高いのかどうなのかわからなかった。
「・・・ケン」
アレックスは俺の手に金貨を握らせた。
「ごめんアレックス。ありがとう」
こうして俺は少年奴隷を引き取った。
「君は知能がないのかね?我々は奴隷を買いにここまで来たのではないのだよ?足手まといを増やしてどうするのかね?」
宿に戻るとエータにどやされた。エータ、「増やして」って元々俺が足手まといと言ってるのか?ああ、エータはそういうヤツだった。
「仕方ないだろ!見ていられなかったんだ」
「私は止めたのですよケン。もう知りませんよ」
何故かゴーも怒っている。アレックスは無反応だ。奴隷の子供は無言で俺たちの顔色を伺っている。
「と、とりあえず首輪と手かせをはずしてあげるよ。君、名前は?」
少年は外した首輪と手かせの部分をさすりながら上目使いに
「え、エルロット」
小さな声でそう言った。俺は笑顔で
「俺はケン。こっちがアレックスでお金を出してくれた人。不審者がエータでもう一人怒ってるのがゴー」
ちらちらと上目使いで俺たちの様子を伺っている。
「ケン。私は怒ってはいません。呆れているのです。そんな奴隷に金貨一枚っておかしい」
「金貨一枚がどれくらいの価値なのか俺にはよくわからなくて・・・」
「は?さっきのお店にいた女。あの女は銀貨二枚で買えますよ。金貨一枚あれば50日は食うに困らない」
俺は女の値段はスルーしたが、50日の食費と考えたら高く感じた。だが人命に値段はつけられない。
「で、でも子供だし、将来が・・・」
「ケン。奴隷商に渡された紙をよく見て!」
俺は奴隷と一緒におそらく奴隷の「権利書」と思われる紙を渡されていた。
「ゴー。俺・・・文字が読めないんだけど、何て書いてあるんだ?」
「・・・ぐっ・・・・が・・・」
俺は背後の音に振り返って目を疑った。
アレックスが少年の首を片手で掴み宙に浮かせている。
「あ、アレックス!何をしているんだ?」
「・・・」
「アレクシウスから盗みを働こうとはな。相手を量る能力には問題があるな」
エータは何か面白そうに言っている。
「え?エルロット?と、とにかく放してあげてよ!」
俺はアレックスの腕を掴みゆすったがピクリとも動かない。
エルロットの顔は赤から紫になり、白くなってきている。
「た、たのむよアレックス!放してくれ!」
俺がそう言うとちらりと俺の顔を見てからアレックスは地面に子供を叩きつけて
「・・・次は殺す」
そう吐き捨てた。
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