異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス

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地底人を探して

招かれざる訪問者

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トリアン達の埋葬が終わっても山賊達の火葬はエータが続けていた。
最初はイヤな臭いだと感じていたのに、臭いに誘われてか空腹感を感じていた。
俺はそんなあさましい自分に自己嫌悪を抱いていたが、ゴーとアレックスは焚火でスープを作ってくれた。
三人で焚火を囲み、少し離れた場所でエータが燃やす大きな焚火を見ながら静かに食事をした。
「見張りは吾輩が行うから三人は馬車で休むがよい」
エータはそう申し出てくれたので、俺たちは馬車の中で横になった。
さすがに男三人横になると狭かったが、ゴーとアレックスからは静かな寝息が聞こえた。
「ゴー・・・やっぱり強いんだな。俺なんかと違って・・・」
外では馬の嘶きと虫の声、パチパチと火が燃える音が静かに響いていた。


すこしウトウトしていたのか、俺はハッとして目が覚めた。
馬車の中には俺しかいなかったのだ。
慌てて起き上がり、外に出る。まだ暗く僅かに星が瞬いているのが見えた。
アレックスは馬車に寄りかかるように立っていた。
「アレックス!?何かあったのか?」
アレックスは馬車から降りる俺を見ていたが、近づくと顔を街道の先に向けた。
消えかけの火葬していた焚火は僅かに赤くほのかな光を発している。
焚火の向こう側、その先にはゴーが立っている。
向かい合っているのは山賊の集団20ほど。先頭に立つのは子供。
子供は男の子だろう。10歳前後か?まだ声変わり前の高い声でゴーに何かを言っている。
俺がゴーの方に向かって行くと、アレックスは黙って後ろをついてきた。

火葬の焚火の前にいるエータの隣に立って、山賊たちを見て俺は息を飲んだ。
昨日見た山賊達は悪態をついて楽しそうにふるまっていた。
今いる山賊達は違う。決死の顔をしている。そう感じた。
「お前が、お前がオヤジを殺したのか!」
先頭の子供は子供とは思えない堂々とした態度でゴーに向かって短い剣の切っ先を向けている。距離にして5メートル程だが、本気で刺す気迫を感じる。
対面するゴーは・・・無だった。なんの感情もない。表情もない。答える気もないらしい。無言で剣を抜いた。
「若、やっちまおう!」
子供の隣に控えていた狼の顔の兜の男がそうささやいた。
「やれ!」
子供は躊躇無く号令をあげた。
「うおおおおお」
雄たけびを上げながらこん棒や斧など手の獲物を振りかぶった男たちがゴーに襲い掛かる。
俺はエータやアレックスに助けを求めようとしていたが、目がゴーに釘付けになっていた。
「エー・・・」
ゴーは軽く「ぴょん」という感じに後ろに跳ねるだけで全てを躱していた。
その後に短く「ハッ」と息を吐いたと思ったら、大きく振り回した剣で4人が倒れた。
「・・・タ」
エータの名前を呼ぶ間の一振りだけで4人を倒すゴーに救助など必要なのだろうか?
「やれ!殺すんだ!」
「若、出すぎだ!」
子供は自分も剣を突き出して突撃しようとしているのを狼頭に腕をつかまれて止められていた。山賊の士気は高い。
その後も続けて襲い掛かる山賊をゴーはまったく寄せ付けず、致命傷で倒れている賊の喉を突きとどめをさしていた。
残りは狼頭と子供だけになっていた。
「若、逃げるんだ!」
狼頭は二本の曲がった剣を両手で持ってゴーに襲い掛かった。
ゴーは後ろ向きに走ってから、足で砂を蹴り上げ、ひるんだ所に喉に突きを入れた。
「ゴボゴボ」という音を立てて倒れる狼頭の胸を突きとどめを刺して子供に迫った。
「オヤジのカタキだー!」
「ま、まてゴー」
ゴーは最初から最後まで無表情のまま、子供の喉をあっさり突いた。
迷いや躊躇など一瞬もなかった。
俺は「な、なんで・・・」
そう言いながらゴーに近寄っていた。
足元では首から血を流した小さな子供が目を見開いたまま倒れている。
ゴーは倒れている山賊の一人の服を引きちぎり、己の剣を拭っていた。
「復讐の連鎖を断つには根絶やししかない。民草も守れる。それに、トリアン達の誇りを・・・」
ゴーは空に光る星を見上げていた。
俺は何が正しいのか正しくないのかわからなくなっていた。
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