異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

村での生活

嫌な予感がする・・・

家に戻ってからエータは
「アレクシウスが覚醒するまではまだ数日時間がある。自衛能力を持つのは実用性が高い。君は身体能力的には豚人程度には引けをとらないであろう」
そんな簡単な説明でエータと実践訓練をすることになった。

「吾輩にその武器で損傷を与える事は今の君には無理だ。で、あるから本気で攻撃したまえ」
村の外れに向かいながらエータはそんな事を言っていた。
俺は「エータに損害を与えられる存在なんかアレックスくらいだろう」とぼんやりと考えていた。
「ここらでいいだろう。かかってきたまえ」
構えもせずにエータが言ったので俺はどうやって槍を扱うのかもわからなかったが、野球のバットのようにエータに向かって振ってみた。
「君はそんな大振りな攻撃が当たると思うのかね？」
エータは俺の後ろに立っていた。まったく見えなかった。
「ちょ、ちょっとエータ。実力差がありすぎるから・・・」
「ふむ」
ドスッ
エータの膝が俺の腹に刺さった。
「君は君を殺しに来た者にもそういうのかね？」
俺は倒れるのを堪えて踏ん張った。
「な、何をする！？」
「君は考えられるはずだ。どうしたら吾輩に攻撃できるのか、どうしたら攻撃されないのか」
「で、でも・・・」
エータは俺の額を指でつつきながら
「続きをしよう」
そういって「訓練」がはじまった。

俺は槍を振ったり付いたり払ったりしてみたが、エータにはかすりもしなかった。
当然だと思っていた。相手は一人で軍隊を倒すロボットだ。
「はあはあ・・・え、エータ、休憩しよう」
「少し休むかね？水をもってこよう」
エータは後ろを向いた。
俺は咄嗟に「今だ」と思いエータの背中に突きを放った。
エータは振り向きもせずに槍をつかんだ。
「そうだ。相手の虚をつくのはいい作戦だ。まだ他にも色々とあるであろう？」
そう言って槍を放し立ち去った。
俺はその場に座り込んだ。全身に汗をかいていたが心地よかった。
「はあはあ・・・今のうちに罠をはるとか・・・か？でもなあ・・・」
俺は少しだけ面白くなってきたが
「だいたい槍の使い方なんて知らないしなぁ」
地面に大の字になって空を見上げた。多少雲があったが青空が広がっていた。
ケンは段々と頭の中がスッキリとしていくような感覚になっていた。

その後にエータに水をもらい訓練を続けたが、まったく当てることができずに終わった。
俺はヘトヘトだった。
帰り道でエータが
「井戸で水浴びをするかね？吾輩はその間に食事の準備をしておこう」
そう言って別れようとした時に
「ジンナの食事は君が運ぶかね？吾輩が行ったほうが早いがどうかね？」
と首をかしげていう姿が面白かった。
「はは。ジンナの所には俺が行くよ。朝は寝坊したら頼む・・・かも・・・」
それから水浴びをしてヒロミスの家にジンナの食事を取りにいくと
「おや、ケン。元気そうだね。服は洗っておいたよ」
そう言ってだいぶ前に脱いだような記憶の服を渡してくれたが
「また汗臭いね！脱ぎな！」
と言われて着替えた。俺って汗臭かったのか・・・
「また洗っておくから。それとたまにはごはんも食べていきな。ツレもつれてきたらいい」
そう言ってくれて俺は泣きそうになりジンナの食事だけ持って「ああ」と言って飛び出してしまった。