異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス

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村での生活

新しい生活 新たな決意

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俺はエータが出ていった後も少しの間、閉じたドアを見つめていた。
「仕事の前に、少しお話しでもしましょうか」
ガイウスはそう言って大きな手で紅茶を机の上に置いて
「まあケン殿。かけてください」
と椅子を引いてくれた。
俺は緊張していていたが、ガイウスは穏やかに話し出した・・・

ガイウスが子供の頃に、住んでいた場所に人間が来て仲間を襲いさらったと。
逃げて生き延びた100人程度の仲間達と洞窟に隠れ住んでいたが、またも人間に襲撃され、野生動物や豚人にも襲われながらも散り散りになり生き延びていた時に、突如現れたアレクシウスは、ガイウス達を襲う人間や豚人を一人残らず殺してしまったらしい。
その後に疲弊した村人に、この地を提供してくれた。この地も元々人間の集落だったようだが、数年前にアレクシウスが人間を排除して、アレクシウス自らがこの近くの領主に話し合い(?)安全に暮らせるようになったというのである。
領主の依頼でジンナと先代(ジンナの母)の治療を受ける為に、街の人間がたまに訪れてはいるが、特に問題なく生活できているという。
それだけではなく、アレクシウスは定期的に金銭までも提供してくれているとの事だった。

俺は長老ガイウスの穏やかながら誇らしげに語る話しに聞き入っていた。
そしてアレクシウスの行動。
「そうですか。アレックスが・・・」
ケンを助けてくれたアレックスの姿を思い浮かべ、なんとなく納得がいった。
「アレクシウス様の恩義に応える為にも、私は村人を支え守ると誓いました」
「ガイウスさんはアレックスが・・・その、戦っている姿は見たのですか?」
ガイウスはケンから目をそらし遠くを見つめ
「私は、私の父が私と母を守る為に人間と戦おうとしました。大きく手を広げる父の姿には感動しましたが、私は死を覚悟しました」
ケンはゴクリと無意識に唾を飲み込んだ。
「しかし、どこからかアレクシウス様が現れ、人間達を瞬く間に倒してしまったのです。その速さと圧倒的な力。私はただ見ていることしかできませんでした」
「アレックス・・・」
俺は豚人に囲まれた時の事を思い出した。アレックスが冷静に豚人達を屠る姿を。
やはり彼は特別なのだ。俺はアレックスが守ってくれたことに感謝をしたが、同時に恐怖を感じていた。
ガイウスはケンをじっと見つめ
「アレクシウス様に救われたこの命だからこそ、私はこの村を守ることを決して諦めません。そしてケン殿、あなたにもその恩義の一端をお伝えできればと思っています」 
そういって胸をはってケンに微笑んだ。

その後、長老ガイウスは村を案内して、数人の村人を紹介してくれた。
必要な物があるならこの人に言えば準備してくれる。
彼に頼めば街まで買い物に行ってくれる。
彼女は畑を持っている。明日は彼女と一緒に畑をやってみるかね?
そんな紹介と挨拶をしていたが、ほとんどの人がフードを深く被っていたり、布を巻いて顔を隠している為、俺にはあまり区別がつかなかった。
そして知っていると思うが、と前置きをしてジンナの家を紹介してくれた。
「ジンナ・・・ジンナはやっぱりすごい治療師なんですね?」
俺は何気なく聞いた。
「ああ、彼女はこの村でも特別ですね。アレクシウス様も彼女の母を守れと以前から言っていました」
俺はなんとなくだが、わかった気がした。
アレックスは助けたかったのだ。この村の人も自分の大切な人も。
自分だけが、ずっと一人で生きながらえて・・・ずっと一人で・・・ずっと・・・だから少しでも長く居れるようにと。寿命なら仕方ないのかもしれないけど、この世界じゃちょっとした怪我や病気でも・・・。
そう考えたら俺も、この村を大事にしようと思った。
俺の命を助けてくれたジンナも・・・ジンナの為にもできることをしようと思った。
けど、俺に、俺なんかに何かできるのか?
村の人々の役に立つような事があるのか?
俺はちょっと自信がなかったけど、ジンナの笑顔と元気になったアレックスを思い浮かべた。
俺の命を助けてくれたジンナ、なんども助けてくれたアレックス。
ジンナのあの優しい微笑みと、アレックスの強さが胸に迫る。ほんの僅かでもいい、少しでも力になりたい。俺は心の奥底から誓った。どんな小さなことでも、彼らのためにできることをしたいと。
「見ていてくれ!」と叫んだ。声が少し震える。決意の裏には不安もあったけど、今はその不安を力に変えたい。
「ちょ、長老!俺!がんばります!!」
と自分を奮い立たせた。
「はは、やる気があるのは結構。無理はせずに。出来るのなら村人達と交流を深めてください。皆少し街の人と違うのを気に留めているものが多いのです」
俺は初めて会った時のジンナを思い出した。
「わ、わかりました」
俺は「村人達との交流」に若干の苦手意識が芽生えたが、長老は
「なるべく多くの者に声をかけてあげてください。挨拶程度で大丈夫です」
優しく微笑みながらそう言ってくれた。

村をちゃんと見て回るのははじめてだったか、思っていたよりも人がいるように感じた。
土の路地で子供たちが楽しそうに遊んでいる風景も見た。
大体100人程度の人がいるとの事だった。
その日は村の案内と話しで終わり、長老宅で夕食をご一緒してから、ケンは正式にジンナの家の隣の家を借りることになった。
アレックスの様子もジンナの様子も気になってはいたが、エータから「ジンナは夜行性」と聞いていたのでいつ訪れたらいいのか、悩んでいた。
日も沈んだし、悩んでいても仕方がないと思いジンナの家に行きドアをノックした。
改めてみるジンナの家には窓もなく、こぼれ出る灯りも僅かだった。
急にドアが開き、フードを被った人物が慌てるように出てきて、ドアの前に立つケンに驚いたしぐさを見せた。
「あ、あんたは昼間長老といた・・・」
「あ、こ、こんにちは。こ、こんばんはかな?しばらく村でお世話になるケンです」
俺も驚いてドキドキしていたが、しっかりと挨拶できた・・・はずだ!
「そう。私はヒロミス。明日は頼むわね」
俺は「明日って何だ?畑とか言ってたけど、この人だったかな?」とちょっと考えたが
「わ、あ、明日からよろしくお願いします」
と頭を下げた。
「ひ、ヒロミスさん?こ、ここで何を?ジンナは?」
聞いてみると順番にジンナの元に食事を運んだり井戸水を運んだりしているらしかった。
ジンナのあの体では日常生活にも支障があるらしく、長老から指名された人物が輪番制で行っているらしかった。
「あ・・・それだったら俺も手伝います!ま、毎日でも!」
俺は条件反射のようにそう言うとヒロミスは
「え、そうかい?無理にやらなくてもいいからね。まああたしゃー助かるからあたしの時は頼むかね。まあまた明日話しをしよう。ここはちょっと・・・」
そういって立ち去っていってしまった。
ケンはヒロミスの後ろ姿に軽く会釈をしてジンナの家に入った。
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